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【完結済】堕神ノ書 〜異界支配の始原〜  作者: せつな
第二章【仮面の潜入者】
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【囚われの影】

☆祝☆500PV突破!!!

皆さんありがとうございます!!

投稿始めて一か月もしない間にこんなにアクセス頂けると思いませんでした!

これからもがんばって投稿していきますので応援よろしくお願いします!!!

【囚われの影】

日が傾き始めた頃、荷馬車の一行は西の森沿いを進んでいた。

空気は穏やかで、虫の声と鳥のさえずりが静かに響く。


「……あれ? 今、音止まんなかったか?」


槍使いの青年が、急に立ち止まった。


森の音が……消えていた。


風が止み、空気が重くなる。

一行の視界に、黒い“何か”が滑るように現れる。


「――っ!」


何の前触れもなく、矢が飛ぶ。

続いて、影のようなフード姿の男たちが木々の間から出現した。


「……おい、マジかよ、盗賊!? いや、動きが――」


叫ぶ暇もない。

無音のまま、ひとり、またひとりと倒されていく護衛たち。


(動きが洗練されすぎてる……ただの山賊じゃない。組織化された暗殺型)


セリナの目が、仮面の奥で細く光る。


だが、彼女は――動かない。


「きゃっ……!」


演技は完璧だった。

スカートの裾を掴んで後ずさり、仮面の下で唇を噛む“ふり”をする。


(ふふ……見事に囲んできたわね。

でも、“新米冒険者の女の子”なら――ここで怯えるべき)


敵のひとりが、ナイフを手ににじり寄ってくる。


「いい子だ。そのまま大人しくしてな」


「……は、はい……っ」


声を震わせ、肩をすくめる。

だがその実、体は戦闘時の気配探知と視界記録を開始していた。


(魔力残留量、攻撃技術、装備の質……全部調べられる)


縄がかけられ、馬車の荷台に放り込まれる。

護衛たちもそれぞれ拘束されているが、皆意識はあるようだった。


「うぅ……セリナ、大丈夫か……」

「……だ、大丈夫です……っ」


(ありがとう、これで“演技”が自然になる)


目の端で、周囲の暗殺者たちの“間合い”と“統率”を観察する。


(……これは、ただの盗賊じゃない。“誘拐組織”。しかも……冒険者専門かも)


拘束されたままの姿勢で、セリナはゆっくり目を伏せる。


(せつな様……ちょっとだけ、遊ばせてもらうわ。仮面の下で――ね)


そして、仮面の奥でひっそりと笑った。




荷馬車は、夜の森を静かに進んでいた。

月は雲に隠れ、道の先すら曖昧な暗さが辺りを包んでいる。


縄で縛られたセリナは、荷台の隅に座らされていた。

他の護衛たちは口を布で塞がれ、声を上げることもできない。


(……じゅぴなら、私の位置も魔力状態も全部見えてる。だから、今残すべきは“外向き”の痕跡)


――この街に暮らす、他の冒険者たちへ。

次に“消える誰か”がいたとして、同じようにただ囚われて終わるだけではなく。

少しでも、“気づく”きっかけになるように。


セリナは、自分の背中側、マントの内側に指を這わせた。


(魔力痕じゃなく、視覚的で自然な“印”がいいわね)


指先には、ギルドで渡された“ブロンズランク”の仮登録証――銅片の小さなプレート。


その端を、自分の爪で――音もなく、削る。

ぎり、ぎり、と細く線を刻む。刻まれたのは、単なる“引っかき傷”に見えるが――


それは、街のギルドで共有される“救難の符号”だった。


《→=≫》

意味は――「西門通過後、強制連行の可能性あり」。


ほんのわずかに、荷台の木板の内側に、それを残す。


(誰かが馬車を見つけたとき、これに気づけばいい。

そして、次の“消える人”が、減るかもしれない)


続けて、目立たないように“薬草の香り”をつけた布切れを腰帯の内側から落とす。

朝の依頼で手に入れた、ごく普通の素材――だが、それは確かにこの馬車の“中”にある証拠になる。


一見すればただの忘れ物。

けれど、調査をする者にとっては、明確な痕跡になる。


(演技も必要。泣きそうな少女のまま、ちゃんと仕上げなきゃ)


ガタン、と馬車が揺れる。

ひとりの敵が様子を見に荷台を覗き込んできた。


「……大人しくしてるな? 泣いてても、構わねえぞ」


セリナは、怯えたように目を伏せ、かすれた声で呟いた。


「……帰りたい……お父さん……お母さん……」


その言葉に、敵は鼻で笑った。


(……ふふ。大丈夫。もう“呼び水”は撒いた)


あとは――この街が、ほんの少しでも“気づいて”くれればいい。

それだけで、今日は“十分な収穫”だ。


仮面の奥で、セリナは淡く笑った。


今回はセリナが“囚われる”側に回るという、少しスリリングな展開。

ですが、彼女はただの“被害者”ではなく

仮面の下で冷静に情報を拾い、街に向けて“呼び水”を撒いていく……

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