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【完結済】堕神ノ書 〜異界支配の始原〜  作者: せつな
第二章【仮面の潜入者】
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【ネザリア城/主なき玉座と二人の影】

セリナの姿が転移の光と共に消えたあと、玉座の間には、静けさが戻っていた。

だがそれは決して、無の沈黙ではない。


「――魔導通信ノード、起動完了。街外周の浮遊監視眼ユニット、現在40基稼働中。

魔力干渉はゼロ。都市領域は依然として封鎖中、反応なしっす」


情報操作卓の前にいるじゅぴが、指先で魔導パネルを操作しながら報告する。

背後では、淡い光を帯びた魔法陣が次々と浮かび上がり、淡く脈動していた。


「セリナの魔力波長、記録完了っす。もし危険信号を検知したら、即座に回収に向かう態勢でいくね、せつな♡」


せつなは玉座から立ち上がり、ゆっくりと階段を下りながら指示を出す。


「情報部門と防衛部門に通達しろ。セリナが潜入している間、外への露出は最小限。

監視網の構築は続けろ。ただし、“気づかれるな”」


「了解っす♡ じゃ、これからじゅぴの“ステルスモード”全開で動くよ〜!」


「……ふふっ。あいかわらず、無駄にうるさいよねぇ、じゅぴ」


そのやり取りの間に、玉座の後方の柱の影から、静かにもうひとつの影が現れる。

漆黒のメイド服の裾が揺れ、紅い瞳が光を受けた。


「リィナ」


名を呼ばれると、少女はすっと膝をついた。


「せつな。あの子、ちゃんと演じてたよ。……でも、ちょっとだけ演技、無理してる」


「……そうか」


「心配なんだ……わたしじゃない、あの子のこと気にしてるの、変?」


その声は、甘く蕩けるようで――同時に微かな嫉妬の熱を含んでいた。


「気にしておけ。お前たちは“同格”だ。

互いを理解して、互いを監視していろ」


「……うん。せつなが言うなら、がんばっちゃうよ。

でも……どっちがせつなの隣にふさわしいかは、ちゃんと証明しちゃうからね」


リィナがふわりと微笑む。

その笑みには、無表情な仮面の裏にある情熱が、わずかに滲んでいた。


「はーいはーい、そろそろ張り合うのやめてくれるっすか〜?

この作戦、“静かに溶け込む”がテーマなんすよ〜?」


じゅぴが軽口を叩くが、リィナは冷たく、ひとこと。


「じゅぴは喋りすぎ。……それに、ちょっと浮いてる」


「はぁ!? う、浮いてないっすよ!? じゅぴは完全に計算された可愛さと機能美の集合体っす!」


「浮いてる。目障り。耳障り」


「くっ……この影メイドぉ……!」


「――やめろ」


せつなの一言で、二人の空気がぴたりと静止する。

リィナは沈黙を保ち、じゅぴは頬をふくらませたまま肩をすくめた。


「セリナが帰還するまで、城の統制はお前たちに任せる。

何かあれば、直接報告しろ」


「了解っす♡ じゅぴ、せつなのために、完っ璧に支えるっすから♡」


「……わたしも。せつなの影として、ずっと隣にいる。

セリナに、隙なんて見せないよ」


玉座の間には、再び静寂が戻る。

だが、その中心には――主と、ふたりの少女。


支配の城は、今も静かに蠢いていた。



ネザリア城側の動きにフォーカスした回でした。

じゅぴとリィナ、それぞれの想いが垣間見える中、せつなは着実に“掌握”へと歩を進めています。

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