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【完結済】堕神ノ書 〜異界支配の始原〜  作者: せつな
第二章【仮面の潜入者】
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【過剰納品】

【仮面の潜入者/過剰納品】


夕暮れ前。

セリナは街へ戻り、ギルドの扉を静かに押し開けた。


内部はやや騒がしく、仕事を終えた冒険者たちが報告や報酬の受け取りに集まっている。

カウンター前には、順番待ちの小さな列。


(……先に鑑定だけ、済ませておきましょう)


セリナは混雑を避け、受付横に設けられた“鑑定窓口”へと向かった。

そこには若い女性の鑑定士がひとり、魔導器具と記録用紙を前に座っている。


「薬草の納品ですか?」


「……はい。ヒリ草、です」


静かに袋を下ろし、革ひもを解いて口を開くと――

淡い紫色の薬草が、ふわりと机の上に広がった。


「……えっ……!? えっ、これ、全部!?」


鑑定士の声がひときわ高く跳ね上がる。

目をぱちくりさせながら、慌てて鑑定札と計測道具を手に取り、草の一束一束を確認し始めた。


「ちょ、ちょっと待ってくださいね……これ、A評価……こっちも……え、S評価も混じってる!?

数……二十二束!? 信じられない……!」


「……たくさん生えてたから……」


セリナはあくまでおとなしく控えめに言う。

けれど内心では、さすがに少し焦っていた。


(……ただ見えてる薬草を採取していただけなのに……まさかそれで目立つなんて)


実際、セリナは目に入った薬草をひとつずつ、効率よく丁寧に集めただけだった。

人より視野が広く、色彩識別も優れているだけで――特に狙ったわけではない。


「……あの、ヒリ草って……こんなに生えてないものなんですか?」


「えっ!? ……あ、ええ、そうですよ!? 普通はせいぜい10束採れたら御の字で……それに、こんな品質、わたしでも数ヶ月ぶりに見ました……!」


「……そうなんですね」


(やば……知らなかった……ほんとにちょっと焦るんだけど)


セリナは表情を変えず、静かに頷く。

だが背中には、ほんのり冷や汗が滲んでいた。


やがて鑑定が終わり、鑑定士が感心しきった顔で小袋を差し出す。


「こ、こちらが報酬です!

銅片8枚の基本報酬に加えて、品質評価加算と、鑑定担当からの“成果推薦”分……合計、銅片23枚になります!」


渡された小袋の中で、鈍い金属音がじゃらりと鳴る。

計23枚の銅片――新人が一日で稼ぐには、明らかに多すぎる額だった。


(……ゲームの頃でいう23C。ゲーム時代と価値が一緒なら、薬草採取にしてはずいぶん稼いじゃったわね)


受付の女性や、隣の職員たちが「すご……」「新人って聞いてたけど……」と小声でざわつき始める。


セリナはそれを無視するように、そっと小さく頭を下げた。


「……ありがとうございます。助かります」


「いえいえっ、本当に素晴らしかったです!

また何かあれば、ぜひご協力お願いしますね!」


周囲の好意的な視線と、少しだけ高まった注目。


(……うん、次からはもう少し加減しよ)


そんな反省を、セリナは仮面の奥でこっそり呟いた。


それでも――ほんの少しだけ、口元がほころぶ。


(せつな様に報告したら……きっと褒めてもらえるかな)


静かに、静かに。

セリナは今日一日の“成果”を抱えて、ギルドの片隅をあとにした。


やりすぎ注意!? 無自覚に高品質・高数量で“過剰納品”してしまうセリナ。

情報収集と調査のついでであっても、きっちり結果を出してしまうあたり、さすがです。


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