【仮面のその先/影の街を守る者たち】
ついに100話目です!!! ついでにここで4章も終わりとなります!
アールフェン・冒険者ギルド第七支部――昼下がり
「……グレンさん! 例の通信です!」
ギルドの端末を見ていた兵のひとりが声を上げる。 それはネザリア本城からの、最上級指令だった。
「せつな殿から……直接、だと?」
グレンは即座に立ち上がる。 魔導通信端末に表示されたのは、淡く揺れる漆黒の紋章と、重く、そして静かな命令。
『グレン。お前たち部隊は、セリナと協力し、この街――アールフェンを守れ。 ネザリアの庇護下として、完全に包み込む』
『本日中に残っていた部隊も合流させる。新たな影として、ここを支えろ』
「……了解した」
端末が沈黙したあと、グレンはすぐにセリナを呼び出す。
アールフェン・ギルド裏手――
陽光の落ちる裏庭で、グレンとセリナが対面する。
「セリナ。俺たち、今この街を正式に守る立場になった。……全員で、だ」
「……!」
「……王国はもう、無い。俺たちは命を拾われて、そしてようやく“戦う理由”を得たんだ」
「この街の人たちに本当のことを話してくれませんか?」
「……ああ。すべて、話そう」
その日、ギルドで―― セリナとグレンは、ギルドの仲間たちに全てを打ち明けた。
「俺たちは王国の元兵だ。ネザリアに拾われ、再び立ち上がる力を得た」
「でも、だからこそ……この街を、戦争から守りたいと願っている。セリナのために。そして、君たちのために」
騒然とするギルド内―― だが、一人がゆっくりと手を挙げた。
「セリナが言うなら……信じるさ。騙されたって思わねぇよ」
「むしろ、グレンたちが来てなきゃ……この街、終わってたかもしれないしな」
「そうだな……ありがとな、セリナ。ほんと、ありがとう」
その声に、セリナは小さく――だが確かな、微笑を返した。
(……よかった。この街は、まだ“壊さなくて”いい)
ギルドに、安堵の空気が広がっていく。
その隅で、グレンはふっと目を細め、誰にも気づかれぬように、心の中で呟いた。
(本当によくやった、セリナ)
――この街は、守られる。 仮面の先にあった心が、今、確かにひとつの場所に結びついていた。
大陸西部――商業都市国家
その日、中央広場に響いた鐘の音は、いつもより重たく鳴っていた。
「……神聖連合が、“滅んだ”? まさか……連絡網全体が機能してない?」
「本部ごと……存在が消えたと?」
中央議会庁舎の作戦室。高官たちは信じられない表情を浮かべ、報告書の束に目を通していた。
「しかも、“侵攻が数日で完了”。加えて、残党による反撃もなし……」
「いったい、誰が――いや、“何”がやったというんだ……?」
魔導通信の最奥――それは、ひとつの名前を記していた。
《ネザリア》
「……漆黒の王国。あの“城”か」
「信じられるか? 連合を、たった三人で蹂躙したっていうんだぞ」
「三人……?」
「“漆黒の王”、そして“紅の執行者”に、“影を喰らう魔女”」
「ふざけた異名だが……実際にやってのけたというのか……」
空気が凍る中、一人の女性議員が震える声で呟いた。
「このままいけば……次は、私たちの国かもしれません」
沈黙。
全員の顔に浮かんでいたのは、“否定できない”という共通の恐怖だった。
大陸南部――砂漠国家《アザレア連邦》
炎のような陽光が照りつける首都の議場に、報告書が投げ込まれた。
「ネザリア、また動いたらしいぞ。今度は神聖連合だ」
「……我らが脅威にすらなりえぬ相手を……」
「いや、それが問題だ。“我らと同格”と見なしていなかった国家を、ためらいもなく消し去ったという事実」
「“外交”が通じない相手か……」
「違う。“交渉の余地がない相手”だ」
眼を細める将軍たち。
「だが、逆に言えば……不用意に触れなければ、“狙われることはない”とも言える」
「今はまだ――な」
北の大国、東の魔法都市、西の商業国家。
それぞれが、かつてない緊張の中で静かに息を潜めていた。
だが――
彼ら全員の視線の先には、同じ“黒”があった。
そうして、大陸全土に、漆黒の名が轟き始めた。
その影は、もはや“伝説”でも“脅威”でもなく――
“現実そのもの”として刻まれていく。
第四章、お付き合いいただきありがとうございました!毎日更新してると意外と進むの早い・・w
次章以降、他国の視点や新キャラの登場も増える予定です。
「影の秩序」がどんなかたちで広がっていくのか。
読者のみなさんにも、この“漆黒の王国”の歩みをぜひ最後まで見届けていただけたら嬉しいです!
感想・ブクマ・レビューも本当に励みになります
次回もどうぞよろしくお願いします!




