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其の六 やっぱり魔法は炎属性

 どうやら俺には、魔法の才能があるらしい。

 普通なら、体内の魔素の操って具現化させるという行動は小一時間かけて出来るようになるものらしい。だが、俺は雑に方法を教えてもらっただけで自分の手から猛火を出せてしまった。


「な、ならこれならどうだ!?」


 そう言ってフェルマという名の講師は、手から出した炎を近くの岩に当てて見せた。


 なるほど、そんな感じで飛ばすのね。

 俺は見様見真似でやってみる。


「この炎の塊を、こんな感じで丸めて…こう!」


 すると、作った炎の球は、フェルマの当てた岩を轟音と共に破壊してしまった。


 やってしまっただろうか…。ただの岩とはいえ、他人の家の物を勝手に壊すのは。それに、煙で建物が汚れてしまった。


「すばらしい!是非、キュリー魔法養成所の会員になってくれ!」

「そして、魔法省に入って魔法使いの一員に!」


 てっきり怒ってくると思っていたので、正直驚いた。フェルマも、案内人の男も手のひらを返した様に目を輝かせている。


「誘いはありがたいですが…俺は冒険者になるまで寄り道はしないつもりなので。今は魔法の習得だけを進めたいです」


 二人の顔が歪む。


「な、ならばもう魔法の講義はやめにするぞ!」

「お前はその魔法の才能を魔法省炎派閥のために行使する義務がある!」


 そんな義務いつ生まれたんだか。そこまで拒絶する話ではないのかも知れないが、この男どもにの思い通りになるのは気に食わないのだ。

 だが、魔法を教えてもらえないのは困る。また寝て、一から魔法養成所探しに後戻りになってしまう。

 

「ならば私が貴方に魔法を教えましょう」


 そう言って出てきたのはメガネをかけた柔和そうな男だった。


「ゼントル!お前は口出すな!今、炎派閥がどんな状態か分かっているのか?」

「分かっていますとも。ですが、その事を差し置いても、私は彼に魔法を教えたい」

「そんな身勝手が許されるとでも!?これ以上自分勝手に動いたらこの養成所から出て行ってもらうぞ!」


 ゼントルというらしいその男は、フェルマが喚くのを無視して私に行った。


「場所を変えましょう。着いてきてください」





 連れて来られたのは周りに何も無い、ただの河原だった。


「いいんですか?養成所を辞めさせるみたいに言ってましたけど」


 ゼントルはなんだっけ?という風に首をかしげ、


「ああ、気にしなくて大丈夫です。こう見えて私、強いので生きていく術はいくらでもあります」


 そう、笑顔で答えるゼントルを、俺は信頼を置ける男だと直感した。

 俺は、自分の才力の事をゼントルに伝えた。


「なるほど…興味深い才力ですね」

「だから、ゼントルさんに教えてもらえるのは俺が眠ってしまうまでです。目覚め薬はあるのである程度は起きていられると思うのですが」

「分かりました。貴方が眠るまでに、炎魔法の全てをお教えいたしましょう」


 川の流れる音が心地よく耳に入ってくる。


「魔法には多くの技が各属性それぞれにあります。そして、一つの属性の全てを習得する事は極めて難しい。私でも八割ほどしか扱えません。その難しさ故に、魔法の技を全て会得した者は『完全制覇者(グランドマスター)』と呼ばれ、この世界に数える程しかいない。だが、貴方ならなれる!そう、私は思っています」


 手から勢いよく炎を出しただけでそんなに分かるものなのかと疑問だったが、俺は神妙に頷いた。


「まず、炎魔法で重要な技術と技の四つを紹介します。『ファイアステップ』と『ファイアパンチ』、『ファイアボール』、『インフェルノ』。名前が安直なのは…気にしないでください」


 いや、気にする。いくらなんでもダサすぎやしないだろうか。


「一つ目は『ファイアステップ』。これは足や手から炎を出して、素早く動いたり、空を飛んだらする技術です」


 そう言うと、ゼントルは足から炎を出し、宙に浮いて見せた。

 うおお!やはり憧れの魔法。飛べるなんて本当にワクワクが止まりそうない。


「こうかな…ドワッッ!」


 ゼントルの真似をしてみたら、調整が難しく、地面に激突した。


「あはは…これは慣れが必要なんです。毎日練習を続けるが良いでしょう。大丈夫、すぐに身につきます」


 その後の三つの技は名前の通りで、すぐにゼントルの真似をすることが出来た。


「ははっ、これを一発で出来てしまうなんて…本当に貴方は才能の塊のようだ。悔しいような嬉しいような…」

「…」


 体から炎が出て、熱さを感じない事に、流石に違和感を感じていたが、だんだんと慣れてきた。


「アドバイスとしては『ファイアパンチ』は手の温度を上げて、威力を上げましょう。『ファイアボール』は大きさとスピードを上げるんです。そして、『インフェルノ』はビームをなるべく細くして、炎の密度を高めましょう」

「分かりました」


 ゼントルはまず、どんな技なのか詳細に説明し、その次にどんなイメージをすべきか教えてくれる。とても理解しやすかった。


 30分ほどが経った。


「ふう…いやはや驚きだ。炎魔法の8割をこんな短時間でマスターしてしまうなんて…本当に魔法に触れるのは初めてなんですよね?」

「疑ってるんですか?」


 意地悪く返すと、


「いや、でもこの才能は疑わざるを得ないですよ…」


 と、ゼントルは困り顔で答えた。





「私が教えられる事は全て教えました。後は日々、練習を積むことで、あなたならすぐにグランドマスターになれるでしょう」


 河原から街に戻り、俺はゼントルの家に招かれた。ゼントルは夕飯を作ってくれ、自分の部屋のベッドで寝るよう言ってくれもした。


「何から何までありがとうございます」

「あはは…今更畏まらなくても良いですよ。未来のグランドマスターのためですから」


「では講師として最後に…」

「あの…これからは師匠って呼ばせてもらえませんか」


 ゼントルは照れ臭そうに笑って続けた。


「では師匠としての最初の助言です。一つ、魔法の練習は今日みたいに人気の無い所でやるように。二つ、これからの戦いの中で、焦って魔法が出せないなんてことはよくある事です。そんな時は技名を口に出してみて下さい。」


 あの技名を口に出してか…少し憚られる


「そして最後に、目標はいくらでも変わって良いんです。でも一度決めた目標は達成するまで走り続ける事。これだけでも覚えといてくれると嬉しいです」

「ありがとうございます。また…会いましょう」

「ええ、勿論」


 エイタは、微笑むゼントルの顔を見ながら瞼を閉じた。

 

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