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其の五 出発と魔法

 起きて最初にした事は、薬屋を探すことだった。 これは、スペイドのアドバイスで、眠気を覚ます薬を買ってはどうだろうかということだった。たしかにまだその場所にいたい時に、寝てしまっては最悪だ。眠気に抗う手段は待っておいた方が良い。

 

 薬屋を見つけて入ると、鼻がツンとするような薬草の匂いが漂っていた。奥に行くと、店の主人らしき老人が小さな椅子に座っている。


「眠気覚ましはありますか」


 そう声をかけると、老人は肩をビクッとさせて目を開けた。どうやら俺に気づいていなかったらしい。


「ああ、お客さんか。眠気覚ましね…飲み薬でいいかい?」

「大丈夫です」


 そう答えると、老人は立ち上がり、一つの木箱を持って来た。中には十数本の小瓶が入っている。


「これ全部、眠気を覚ます薬さ。味は保証しないが、効果は保証する」


 老人はニヤつきながら言った。信頼できる人だなと、直感でそう感じることが出来た。なんとなく不安は感じるが…


「一本いくらですか」

「77ゼニルさ」


 思ったよりも安い!


「じゃあ…全部下さい!」

「全部かい!?」


 老人は目を見開いた。そんなに驚く事なのだろうか?


「ダメですか」

「いや、そんなことはない。ありがたいさ。だが、飲み過ぎには十分注意しなくてはいけないな。一日最大一本。連日なんでも最長3日!これ以上は健康に害が出てもワシは責任とらんからな」

「分かりました」


 逆に3日まで許されるなんて相当すごいのでは?

 十数本買った小瓶をどう持ち歩くか悩んでいると、肩掛けの鞄をサービスすると老人が言ってくれた。


「いっぱい買ってくれたんだ。古臭い鞄だから気にすんな」


 そう言いながら老人は、店の裏でガサゴソと鞄を探してくれる。


「そういや、お前さんはしばらくここら辺にいるのか?」

「え?うーん、多分すぐに別の場所に行くけど…どうしてですか」

「ここら辺の領主のキュリーが、国王候補のハート様を迎え入れる事を決めたらしいんだ。だから、近々荒れるぜ。ここら辺は」

「どういうことですか?」

「え?お前さんハート様の事知らないんか。じゃあ気にするな。すぐに此処をたつお前さんには関係のない話だ」


 強制的に世界を旅するのだから、世界情勢も少しは勉強しないといけないのだろうと、思わされた。


「お!あったあったー。ほいこれ。じゃあお買い上げありがとうな。また来てくれや」


 老人は鞄を手渡しながら言った。老人は笑顔でご機嫌なことが一目で分かる。

 貰った鞄は少しカビ臭かったが、大事にしようと思った。





「魔法使い養成所…」


 その建物の門には達筆な文字でそう書かれていた。心が踊る。魔法使いだなんて、全地球人類の憧れではないか!

 コンコン。と、玄関らしい場所の扉を叩いて俺は魔法使い養成所を訊ねた。


「何の用かね?」


 中から出てきたのは、がたいの良い男だった。


「魔法を使えるようになりたくて…」


 男はまじまじとエイタを見て、言った。


「ついてきて下さい」


 中に入るとそこは正に、西洋のお屋敷と呼ぶべき豪邸だった。


「ここの養成所は、好事家であり、商会の会長をしていらっしゃるマスル氏が自費で建てられたもので、全国の養成所のなかでも指折りの広さを誇っております」


 映画で見るような豪邸をエイタが珍しそうに見るので、男が説明をしてくれた。


「魔法を使えるようになりたい…という事は魔法の事は何も知らないという事でよろしいですか?」


 長い廊下を歩いてる途中、男が聞いてきた。


「その通りです」

「…では、この部屋でしばらくお待ち下さい。講師の手配を致します」


 そう言って通されたのは、応接室のような小部屋だった。

 もう講師を呼んでくれるのか。話が早くてありがたい。なるべく早く魔法を習得したいのだ。


 しかし、魔法を使うというのはどんな感じなんだろう。MPのような物があって、使用制限があるのだろうか?炎属性の魔法は、使うと自分でも熱いのだろうか?

 今までアニメや漫画の世界だけの物だった魔法に触れることが出来るのだ。信じ難いが、想像が止まらない。


 「お待たせしました」と、男が戻ってくるまでに5分とかからなかった。


 連れてこられたのは、中庭のような空間だった。室内で魔法は危ないから屋外で、ということなのだろうか。

 中庭の中央に立っていたのは、白い髭を生やした、「老師」と呼びたくなるような男だった。


「ええーっと、ここの養成所の講師やってるフェルマという者です」


 フェルマは明らかにやる気のない雰囲気を出し、耳を指で弄りながら自己紹介をした。


「エイタです!よろしくお願いします!」


 フェルマの態度に違和感を覚えながらも、エイタは元気よく挨拶をした。


「ええーーっと、エイタさんは魔法の使い方をゼロからってことらしいねー。金はあとで払ってもらうから、早く習得してね。めんどいし」


 金!?そんなの聞いていない。金を取ることに不満はないが、そういうことは予め言っておく必要があるのではないだろうか?

 それにこの態度はやはり気に食わない。金を取るなら尚更だ。

 目を瞑ってと、指示されたので渋々従う。


「まず、自分の中に流れている『魔素』をイメージしてー。体内を流れる血液のように…そして、それらを手の方に集める事をイメージするとぉ、ほらこんな風に…え?」


 急に驚いたような声を出すので何だろうと目を開けてみると、エイタの両手からは、凄まじい勢いで炎が噴き出ていた。


「え?」

 いきなりエイタが五属性の内、炎属性が使えたのは、途中通された小部屋に炎属性が使えるようになる魔素が充満していたからです。

 つまり、講師の態度が気に食わなかったりしても、炎属性からはもう、逃げられません

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