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其の十四 冒険者選抜試験②

 「三組目はサーシャ…」


 二次試験で組むことになる3人組の発表が始まってから、地獄の様な雰囲気だった部屋が活気付いた。そして、エイタ達一組目も同様に。


「いやー!よろしく二人!」


 1番扉の前に集まった冒険者選抜二次試験、一組目のメンバーは、まず自己紹介を始めた。

 なんだか新学年の新クラスを思い出すなぁ


「俺はボルタっていいます。使うのは雷魔法。才力はひ・み・つ、でお願いします!」


 ボルタは黒と金髪が入り混じった髪で、いかにも根の明るい好青年って感じだった。年は16らしく、かなり近い。


「私はヘアクルーという者です。才力の【髪操作】で戦います。よろしく」


 ヘアクルーは、髪で戦う為か伸ばしており、年は20代後半らしいのも相まって、ロングヘアのイケオジ感が凄い。ヒゲが良い。

 エイタも軽く自己紹介を済ませた。


「試験官さんは魔物討伐とだけ言ってましたが、詳細はどうなっているんでしょうかね?」

「あの試験官のことですから、質問しても答えてはくれないでしょう」


 ヘアクルーは、セダンを見ながら言った。


「やはり魔窟攻略みたいな感じなんですかね?」


 試験の詳細は、エイタも気になっていたことだった。


「俺的には、やっぱボスラッシュの線が濃厚だと思うなー」

「ボスラッシュ?」


 初めて聞く単語だ。


「エイタ、知らないのか?名前の通りで、魔窟のボスが連続で出てくる事だよ。確率はめっちゃ低いけど、ごくたまにボスラッシュの魔窟が発生するんだって」

「ほえー」

「ボスラッシュは色々なタイプのボスを揃えさえすれば、いい試験方法にはなるだろう。十二分にあり得る」


 三人で試験内容の予想をしていると、何やら背後で部屋がざわついた。


「なんだ?」


 気になって見ると、六組目の発表が為された所であった。


「よりによってあの二人が…」

「てかアイツも柄悪いで有名な奴だよな!?」


 どうやら、六組目のメンバーがナチ、シチルク、オオイの三人らしかった。


「おい!試験官!これは嫌がらせか?」


 ナチがセダンに怒鳴っている。相当頭に来ていそうだ。「まあまあ…」と、バリカンが宥めようとしているが気にもしていない。


「このメンバーの振り分けは二週間前に決められたものだ。もちろん、私の一存で直前にメンバーを変更する事は出来ない」

「それを示せる証拠はあるのかよ…?」

「ないな。だが事実だ。先程も言った気がするが、文句があるなら早急に立ち去りたまえ。君がこの試験を受けようが受けまいが私には関係ない事だ」


 セダンは表情一切変えず、冷たい視線を向けて言った。


「シチルク〜、だから文句言ってもしょうがないんだって〜。一緒に、がんばろっね?」


 ナチがシチルクの肩に手を回して言った。口には不敵な笑みを浮かべている。


「ちっ」


 ナチはシチルクを振り払い、6番扉へ向かって行った。


「すごいメンバーだな」


 ボルタが6番扉の方を向いて行った。


「挟まれたオオイ氏が可哀想ですね」

「それは俺も思います…大丈夫かなオオイ」

「お知り合いですか?」

「そうなんです!何事も無いといいけど…」





「組み分けを発表し終わった。それでは皆、準備はよろしいかな?目の前の扉が開いて中に入ったら試験スタートだ。検討を祈る」


 軽い、普段通りの様子でセダンは、二次試験開始を宣言した。


「よっしゃ!頑張ろ、エイタとヘアクルー!」

「おう!」


 俺達は互いに声をかけ合ってドアに入っていった。

 ドアの光を抜けると、目の前には20メートルほどの大きなドア。


「このデカドア、既視感あるな…」

「ボス部屋に入るドアだからかな」

「ですね」

「じゃあ俺達は今、魔窟の中って事ですか!?」


 後ろを振り向くと、いつの間にか白いドアは消えてしまっていた。


「あの白い空間を作っている才力が世界のどこかにある魔窟に私達を飛ばしたのか、才力が魔窟自体を作ったのかは分かりませんが、此処が魔窟であることは明白でしょう」

「そしてこの魔窟を攻略し切れば試験合格ってのも明白だ!」


 ボルタは屈伸で準備体操をしながら、元気良く言った。


「そうですね!じゃあ行きますか、ボス部屋!」

「言われなくとも!」





 ギィーっと大きな音を立てて、ドアが開いた。三人が部屋に入りきったところでドアが勝手に閉まる。


「始まるぞ…!」


 そう言うボルタの視線の先で、何やら巨体が動き出した。

 ゆっくりと出てきたその巨体には、8本の腕が生え、その一本一本に鋭い鉤爪がついている。


「でっけぇクモだ…」

「やるぞ!」


 巨大クモは前の足でエイタらを襲う。

 エイタとヘアクルーがすばやくその攻撃を左右に避ける。


「あぶねっ」


 取り敢えずファイアボールを飛ばそうと巨大クモの方を見た時、エイタは思わず目を見開いた。ボルタがすでに巨大クモの頭の近くまで行き、雷魔法の帯びた拳を構えていたのだ。


《ボルトバンプ》


 バリバリッと大きな音と共に巨大クモの頭が眩しく光った。

 巨大クモが悶えるような大きい声を出す。


「チッ、やっぱり火力不足かっ…!」

「ギィーリュギャー!!」


 怒り狂った巨大クモはまだ着地しきってないボルタに口から毒を吐き出した。


「危ないっ!」


 そう叫んだ瞬間、エイタの視線から突如ボルタの姿が消えた。


「ふう、ギリセーフ」


 雷魔法の光を感じた方を見ると、ボルタは既に巨大クモの横まで移動していた。

 いつの間に!?目が追いつかなかった…


「まだ、油断しないでください!」


 休む暇も無く、巨大クモの足が襲ってくる。


結髪旋弾ヘアーバレッズ


 ヘアクルーは髪を結い合わせ、ドリルの様な物を何個も作った。ヘアクルーの髪の弾丸は素早く突き進み、次々と巨大クモの足を貫通していった。


「ギュオー!」


 巨大クモの叫び声がボス部屋中に鳴り響く。


「今です!二人とも!」


 巨大クモは体の片側の足を全て失い、バランスを取れずその場に倒れ込んでいた。

 ボルタとヘアクルーの戦いっぷりに見惚れていたエイタは、その声を聞いてすかさずファイアパンチを構えた。


 エイタ、ボルタ、ヘアクルーの一撃が、巨大クモに降り注ぐ。

 ボス部屋の中が一瞬静かになったのも束の間、ギギギギと重い音を立てながら次のボス部屋に向かう扉が開いた。


「休む暇は無しか…」


 ボルタはすぐそこに倒れている巨大クモの死骸を見ながら言った。


「そう見たいですね…ですが先程の戦いを見て確信しました、二次試験の突破を」

「ああ、多分こっからボス強くなってくだろうけど行ける気しかしないな。エイタのファイアパンチも威力やばそうだったぜ?」

「あれは二人がボスを動けなくしてくれたから、全力を出せただけだよ」


 エイタは余裕そうな二人を見て、頼もしく思いながらそう答えた。


「謙遜するなよっ!お互い様だろ」

「うん、そうだね」


 三人は余力を大幅に残して、次のボス部屋に向かった。





 ボルタとヘアクルーの余裕さは、見かけ上だけのものではもちろんなかった。2体目、3体目のボスも三人は呆気なく倒してしまった。


「ハハ…こんなあっという間に…」


 ボスはもっと時間をかけて倒すものだと思ってたけどこんなサクサク進めるとは…


「俺だってこんなスムーズに進むボス戦は初めてだぜ!」

「私もです」

「いつも魔窟攻略のメンバーが強いとは限らないからな。言っちゃいけないかも知れんけど」


 次のボス部屋に進む間に談笑する程に、エイタ達には余裕があった。


「これで4体目か…」


 新たなボス部屋の前に立ちながら、エイタは呟いた。


「なんだ?限界か?」


 ボルタはニヤつきながらエイタの方を見る。


「そういう訳じゃないんだけど…いつまで続くのかなーって」

「そうですね…ボス三体倒せばクリアと踏んでいましたが」


 ヘアクルーが顎に手を当てて、考える素振りを見せた。


「そんなこと考えたって、意味ねーだろっ!何体であろうとボス倒して行きゃクリアできんだから」

「それもそうだな。ごめん。行こう」

「うむ」


 三人で目配せし、共にドアを開ける。もう、三人は仲間以外の何者でも無かったのだ。





「…ちょっとデカいゴリラってところかな、」


 エイタがボス部屋に入って早々、そう呟いた。

 ボス4体目は、今まで戦ったボスとは違い、小柄だった。身体中に毛がフサフサと生えており、まさしくゴリラそのものである。


「こんな抑えめなデカさのボス初めてだぞ?」


 相手もエイタ達に気付いた様で、三人を睨みつけている。


「いえ、油断は禁物です。私の父親は冒険者なのですが、小型のボスに苦戦したという話を昔聞いたことがあります。あまり舐めない方がいい」


 ヘアクルーは気を緩めていた二人に、語気を強くして言った。


「そうですね。油断せず、いつも通り倒しましょう」


 エイタはそう言い終わると同時に、ファイアボールを構えた。


「ハハッ、やっぱエイタのファイアボールの大きさレベルちげえ」


 ボス3体目との戦いの時、エイタはできる限りの全力ファイアボールでボスを燃やし尽くしていたのだった。


《ファイアボール》


 溜めに溜めたファイアボールはエイタの身体より大きくなり、加速を続けながら直進した。そして、ボスに真正面からぶつかろうとしたその時…、


「消えた……!?」


 ファイアボールがボスに当たろうとしたまさにその瞬間、音もなく消滅してしまったのだ。 

 すかさず、ボルタが雷魔法をボスに放つ。その攻撃もまた、ボスの前に敢え無く消えてしまった。

 二度目の攻撃で注意して見てみると、攻撃が当たる直前にバリアの様なものによって魔法が無効化されているように見えた。


「なんだこれ!?全く効かねぇ」


 その時、ヘアクルーが声を上げた。


「聞いた事がある!魔法を無効化する能力を持つ魔物『逆魔』!」

「「逆魔…」」


 魔法が効かないって…じゃあどうすれば!?


「俺が髪でなんとか拘束するから二人の拳でなんとか倒してくれ!俺の才力はそこまで威力がないから、魔法の推進力で加速した二人の拳の方が力が出るはずだ!」

「分かった!やろう!」


結髪操網ヘアーネット


 ヘアクルーの髪が網目状になりボスに覆い被さろうとする。

 網目状の髪の範囲から出ようと、ボスが走り始めた。


「そっち行ったぞボルタ!」

「まかせろ!」


 雷魔法で加速させたボルタの拳とボスの拳がぶつかる。


「んお!?」


 ボルタが押し切られ、後ろの壁に激突した。しかしボスもまた、耐えきれず後退りする。


「よし!ナイスだボルタ!」


 後退りにより、ヘアクルーのヘアーネットの範囲内にボスが入ったことにより、ボスの動きが封じられた。


「おお!ナイス拘束!」

「この拘束も長くは保たない!このボス、力が強い。早く技を打ち込むんだ!」

「まかせろ」


 エイタは素早くファイアステップでボスの真上を取った。

 炎で進む推進力と、重力が合わされば素のパンチの威力は理論値なはずっ!


「脳天くらえ!《ファイアパンチ》」


 いつもは拳先に火力を集めるところを、今回はあしに集め、なるべくスピードを上げるようにした。

 ボスはなす術なくこれをくらう。





「いやーやっぱりエイタの火力は凄まじいなぁ」

「あまりの強力さに悲鳴ひとつなく意識が飛んでいましたからね。ボスは。」


 無事、ボスを倒した後、二人は感心するようにして言った。


「いやぁ、あれは二人のサポートで動きが封じられてたから、隙がデカい技を振っても許されただけだよ」

「それでも与えられた隙に対して、きっちり一発で仕留めるってのはすごい事だぜ」


 ボルタの隣ではヘアクルーがしみじみとした表情で頷いている。


「これが最後の扉ですかね…?」

「そうだといいな」


 ゴリラのボスを倒したことで現れた次へ続く扉を前に二人が言った。


「じゃあ、開けよう」


 三人で頷き合い、扉に手を掛けた。大きな音を立てて扉が開かれていく。エイタには、その音がこれまで開けたボス部屋の扉の中で1番大きく聞こえたのだった。

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