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小さな薬師

まだ生きてます。

今日はカリンの付き添いで麓に山菜を採りに来た。

子供の頃は祖母と一緒によく山の中で遊んでいたので、植物に関する知識で少しは役立てると思った、のだが...

「なんじゃこりゃ」

村にいたときも思ったのだがこの世界と俺がいた世界では植生が少し異なるようだ。

ミズやシオデのような見た目の植物はあるので、これは食べられるのだろうなと推測することはできるが毒性があるかも知れないので山菜を採る度にカリンに確認している。

「カリン、これ食べれるのかな?」

「ん?それはヤワラネイラって山菜ね。まぁ食べれなくはないけど採る人はなかなかいないの、灰汁抜きをしても味が渋いし固いから人気がないんだ」

「そっか、でもこういうマズくても食べれるものっていうのを覚えとくってのも大切だよな。いつごはん食べれなくなるかわからないんだし。」

「そうよ!そうなのよっ!」

カリンがいきなり大声を出したのでビックリした。なにか琴線に触れるようなことでも言ってしまったのか俺は。

「お父さん達は女の子だったらそんなの覚えるよりも手芸とか料理を覚えなさいって、確かにそれも大切なのはわかるわ!わかるんだけどっ!」

と急にぶつぶつ独り言を始めた。

かなりがフラストレーションが貯まっているんだな...

でも親父さんの言うこともわかる気がする。

幼い頃にお母さんを亡くしたカリンを男手1つで大切に育ててきたはずだ。

その娘が1人で山中を歩き回りたいと言うのだから、心配するのは親として当然だろう。

「まぁまぁ親父さんもカリンを心配してるからこそなんだししょうがないよ。」

「それはわかってるのよ、わかっているのだけど!んむ~んむ~」

ペシペシと顔を叩いてして気を持ち直すカリン、かわいい。

「まぁいいわ、ハルタがいるから山の中にも入れたし。せっかくの機会なのにこんなこと悩んでちゃしょうがないわよね」

「その意気やよし。こっからじゃんじゃん山菜を採り尽くそうぜ」

俺がカリンより前に出ようとすると

「ちょっと、今は私が先生なんだから先導しなきゃなの。ハルタは後ろ歩いてて」

そう言いながらずんずんと山中に歩いていくカリン。

自分より歳下の女の子に教えを乞うのは少し恥ずかしいけど、植物の知識を身に付けていくのは楽しい。

他愛もない話をしながら山中を散策し、夕暮れ時になったので村を山を降りた。

家に帰るとカリンの親父さんは俺を見るに口から言葉が出かけたようだが、娘の嬉しそうな顔をみて複雑そうな表情をしていた。

「おい坊主、しっかりカリンを見守っていたのか。怪我をさせなかったのか」

「はい、お互いに怪我はありません。というか俺の方がカリンに助けられました。植物の知識や山道の把握もちゃんとしていましたし、物音にも注意深く聞き耳をたてていました。参考になる部分も多かったです」 

「フン、そうか...」

「ねえ、そんなことよりこれみてよお父さん。今日はハルタのおかげで山菜がたくさん採れたのよ。お父さんが好きなのも採ってきたから後から皆で食べましょ」 

「あぁ、そうだな...」

そう言いながら家に入っていくカリン、そして玄関前に俺と親父さんが取り残される。気まずい。

「坊主、今日はありがとう。娘が世話になった。」

「いえ、感謝するのは俺の方です。見ず知らずの人間に親父さんは寝床を貸してくれているです。俺が手伝えることがあればなんでも申し付けて下さい。」

「今日から食事は家内でとりなさい。君がいると娘が喜ぶだろうし、食卓を囲う人間は多い方がいい。」 

「はい!」

親父さんが扉を開けて俺を家に迎え入れてくれる姿を見て目頭が少し熱くなった。

この世界に来てはじめて誰かに自身の存在を本当の意味で受け入れて貰った気がして、嬉しかったんだと思う。

出された料理は質素なものだったけど、この世界に来て一番美味しいと思えた食事だった。





お得な情報その5

ハルタ→18歳

カリン→15歳

キーヴ→9歳

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