1-3-1【リングワンデリング】
「リングワンデリング」とは、真っ直ぐ歩いているつもりでも、いつの間にかグルッと廻って戻ってしまうことである。
「輪形彷徨」とも言うらしい。
『山の中で狐に化かされた』という話は、これではないかと思われる。
自分で実験してみれば解るが、人には利き足があり、力のバランスが微妙に違うので、目隠しして「その場足踏み」をすると、いつの間にかあらぬ処に行っているはずである。
人間は自分の行動を「視覚」で補正しながら行動しているから、視覚を妨げられるととんでもないことになってしまうのだ。
深い森の中や、大雪原などで、遠くに目標となるものが無ければ、容易にリングワンデリングに陥ってしまう。
こうなるとパニックを起こしてむやみやたらと歩き廻るから体力を消耗して死に至ることもよくあることだ。
このような状態に陥らないためには、迷ったら高い所に移動するべきなのだ。
何故なら、全ての道は頂上へ向かっているから、高い所に行くほど面積が小さくなって道を発見し易くなるし、頂上に着きさえすれば必ず登山道があるのである。
頂上で一服しながら、落ち着いて帰るべき方向を見定めれば、間違いなく生還できる。
慌てて下山しようとするから、沢に入りこんで身動きが取れなくなったり、転落したりするのである。
“迷ったら頂上へ”
これさえ覚えておけば、そうそう遭難することはない。