2-10-1【オムレツ】
「オムレツ」と「玉子焼き」は明らかに違うものだ。
玉子焼きは「固体」だが、オムレツは「半固体」でなければならない。
いわばゲル状だが、これが難しい。
外は軽く焦げ目が付いているが、中は半熟でなければオムレツではないからだ。
そのためには、まずフライパンからこだわらないと上手くできないのである。
厚さが薄いと、均等に熱くならないから、それだけで不合格である。
厚手の鉄のフライパンが良いのだが、この鉄のフライパンの手入れが面倒だ。
買ってきたら、一度空焼きして皮膜を焼き切って、油を何度も薄く引いて馴染ませる必要がある。
が、一度「空焼き」して馴染ませれば、あ~ら不思議、テフロンフライパンのように目玉焼きがくっつかないのである。
ただ、使う度、熱いうちに薄く油を馴染ませなければならない。
私は、友人の娘が彼のアパートに遊びに行った時、皿を洗うついでにフライパンを洗剤で洗ってしまい、即刻別れを言い渡されたのを知っている。
それほど、使い慣れた鉄のフライパンは大切なのである。
友人の家では、安物のテフロンフライパンしか使っていなかったから、そのことが全く解らなかったようだ。
テフロンフライパンは、一年もすればコーテングが剥がれる。
それは、間違いなく炒めたものに混じって、食事の時に食べているのだ。
長い間には、健康に影響があると思って私は使っていないし、手入れをした鉄のフライパンの方が、テフロン加工よりもツルツルである。
閑話休題、フライパンさえ良ければ、オムレツは簡単だ。
卵に生クリームを少々入れてザッと掻き混ぜる。
この時、親の敵のように掻き混ぜてしまうと、水のように腰が無くなってフワっと仕上がらない。
次に十分に温めたフライパンに、バターを一欠片入れて溶かし、溶けきった所にザッと混ぜた卵液を入れる。
入れたらすぐに空気を含ませるように、フライパンの中で激しくかき混ぜるのだ。
するとすぐに卵液にツブツブの固まりができる。
そのまま続ければ「スクランブルエッグ」だが、まだ卵液が残っているうちに、フライパンを傾けてフライパンの縁でオムレツ形に整える。
余熱で片面の表面を焼いたら、煽ってひっくり返し、反対側も焼く。
これをお皿に載せれば出来上がりである。