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№3.からの提案

 謎の女あやめが消えた後俺様に声をかけてきたのは、兵団の№3の地位に居るアルカだった。


 「お久しぶりね、No.0218314914106号君」


 兵団ではじめて言語を取得した時に言われた№なんて正直俺様には似合わない。

 そもそもに、長くて覚える気持ちにもならない。


 「俺様は、美春颯斗だ。いい加減名前覚えてくれ!」


 ここに居ると、名前を呼ばれることはない。

 俺様の妹が大好きな名前であるこの名前。

 俺様も当然大好きだ。

 なのに、ここでは日本での名前は使われていない。


 「あら、これから消える人間のことなんて覚えるつもりはないよ?もう脱走したくてたまらない顔をしているNo.0218314914106号君に、ボクはちょっと提案があるんだよ?話にノルかい?」


 「あぁ!」


 断る必要などないだろう。

 なぜなら、彼女は…。


 国の方針で女性ばかりの地位の国だ。

 兵団の中も女性ばかりだった。

 そのなかでアルカの性別は意外にも男性だった。

 “男性だった”

 その言葉通り、去勢している男性だ。

 宦官として起用された元奴隷ってところだ。

 しかし、兵団の中で№3を誇る地位だ。

 並大抵の努力では付けない地位に、なぜ男性だった彼女が声をかけてくれたのだろうか。

 哀れみか、それとも……。


 「交渉成立だね」

 「あぁ、そうだな」

 彼女からの提案は極めてシンプルだった。


 ーカナリアの洞窟があるルートでのみ移動すること

 ―追っ手に捕まらずに黄色谷へ無事たどり着くこと

 

 「簡単に言ってくれるね?」

 

 俺は脱走に失敗した過去持ちだ。

 今回も簡単にここからの脱走はできないだろう。

 だが、チャンスは何度あってもよい。

 ポテンシャルの良さこと、俺様が俺様である証拠だ。


 「いいぜ」

 「その言葉、無事黄色谷までたどり着ける自信と受け取った」


 パチンとはじける音がして、錠が外され身軽になる。

 「おい、おい!良いのか?団長に無断でこんなことして!」


  驚いたが咄嗟に声の音量は下げて俺様はアルカに視線を見る。


 「ワタシは、頼まれているだけだ」

 「誰に?」

 「今その答えを聞かなかったことをお前は後で幸福に思うだろう」

 「いえないという意味か。まっ、いいだろう」

 「準備はできている。これをもって、明日の早朝まっすぐ黄色谷へ向かえ」

 渡されたスーパーの大サイズぐらいの麻袋3個は意外にも軽かった。

 「収納魔法をかけているからな。便利だろう?」

 さて、準備ができていると言われても急だな。

 それでも、俺様は前進するしかない。

 俺はアルカを信じて仮眠を取った。




 水で構築された水馬が夜道の秋風まで纏うように走り抜けていく!

 空にツキはでている。

 心地良いほどの、良い気候の日だ。

 馬の足が蹴る地面はコスモスが咲き誇っているコスモス畑。

 コスモスを豪快になぎ倒すようにコスモス畑を走り抜けていく。

 追跡されているのにそんな目立つ痕跡を残すのはおろかかもしれないが、後ろで先ほど俺様が跨がる水馬に踏み倒されたはずのコスモスは再生され踏まれるより前より元気に生き生きとしていることだろう。


 ―黒煙の外套

 ―逆再生の調和の懐中時計


 黒煙の外套は、隠密者向けに開発された外套だ。

 当事者と触れているモノの姿を消し、生態としての気配を煙のように消す。

 匂いまでは消せないため、黒煙の外套と呼ばれているらしい。

 そして、今回の用に通過した痕跡を隠しきれない時用に、身にまとった通過したあとはあった事実を無効化するこの逆再生調和の懐中時計が役に立つ。

 所有者の通過した跡を原状復帰する為に開発された懐中時計だ。

 水馬は俺の魔力を通して、生気と精気を回りに水蒸気のようにばらまくため、逆再生の調和の懐中時計では過剰に原状復帰してしまう盲点があるらしいが。

 まぁ、どちらも隠密向きな道具だ。


 ―軽量石でてきた方位石版


 これがあるおかげで未知に迷うことが少なくて済んでいる。

 アルカの準備の手際が本当によいな。

 おかげで1日進むべき距離の中では順調に進んでいる。

 もう少しでカナリアの洞窟だ。

 洞窟とっても中で幾つもの道が枝分かれしていて、正しい道を進めば別の出口にでれるとアルカが教えてくれた。

 この国の兵士達は単体行動が法律上できず、少なくとも5人一組で動くという規則があるらしい。

 洞窟の中の道のりは正しい道を進んだところで通り抜けに半日はかかる距離で、人捜しの捜索には向いていないとのことだった。

 遠回りの経路でもその後の分岐路を間違えなければ1日余計に時間がかかるだけで正しいルートの出口には到達できるらしい。

 推定48時間の距離。

 アルカはあえて、この洞窟で遠回りのルートをするように俺様に告げていた。

 道を迷わないこと!

 追っ手から逃げること!

 その両立は今のところできているときほど、その順調さは、時に油断思考にさせる。

 なので、あえて緊張感を与える道を間に挟む方がいいだろう。

 それに、そのルートなら俺様も安心して休める。

 水馬が精霊の力を借りてつくっているため、形状維持をするためには精神統一と体力維持も大切でもあるからだ。

 

アルカの登場。

彼女(?)の旅支度のおかげで、あっさりと黄色谷に旅立つことができた俺様ですが……。

俺様はアルカの名前の由来って気づいているのでしょうかね?

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