伝言花の誘惑、漢に二言はない!
「おっ!見える、見える!」
あまり大きな声は出せない中、初めての成功に俺様は大歓喜していた。
――水は記憶を司る。
――水を操る者は過去も未来も見通す道導となるだろう。
誰もが一度は聞いたことあることを、通訳のための翻訳機と勝手に命じて使っている妖精が俺に語りかけてきた。
気にしていなかったが、俺様に翻訳助言を与えてくれているのは妖精であり、普段魔法のような力を与えてくれているのは精霊による力らしい。
妖精と精霊と仲良くして、その力を使う。
その力を制御していくさまは、まるで、中二病に捕らわれた男の姿そのモノだな。
水を操り現代の母国を映し出すことは、以外に難しい行動だった。
――水は流動性であり、気まぐれな性質である。
「つまり、現時点を継続して映し出すのにはむかない性質の魔法であるんだ
よな」
気を抜けばあっという間に別の時間軸を映し出す。
休憩時間という秘密の訓練中に、ふと思い立っての訓練のつもりだったが、意外と一ヶ月ぐらいでここまで成果はでた。
これから、細かく時間指定をと考えた時、背後からのぞき込み影がかかる。
「へぇ、水を操ってたんだ?すごいね?」
「!!!……あっ!」
バシャン!
集中力がきれて、水がはじけて消える。
誰だ、俺様の邪魔をするやつは。
「アタシは、あやめ」
俺の心の声を読んだように名乗る姿は、白いジャケットとおそろいの百合の刺繍のデザインのスリット付きのスカートを身につけた少女。
「アタシね。お兄ちゃんを迎えに来たの」
「ねぇ、いつ帰れるの?ってあの子が言っていたよ?」
「お兄ちゃんも、そろそろ、逢って帰りたいんだよね?」
「なら、早くあの子をお迎えに行かないとね?」
あやめの声は、お風呂場でカラオケをする人のようにぐわんぐわん反響してきこえた。
「黄色谷に、7日後の深夜2時だよ?伝えからね?」
あやめは、まるで声に溶けるように姿を消した。
足下には、ジャーマンアイリスの花が一輪墜ちてた。
まったく、言いたいことだけ伝えてきた知恵の伝言花か。
俺は、妖精に訊ねる。
「黄色谷には、精霊がつくる水馬を走らせたら、何日でたどり着く場所だ?」
――ここからなら、推定48時間かかるので、夜通し馬を走らせても2日は考慮いれること
「2日!日数はわかった。あとは、この手錠から解放されないといけないな」
両手についた魔法の楔。
これは、俺様の水魔法では解除できない。
「それについては、提案があるんだ。聞くか?どうだ?」
あやめさんが、好きで、いつ登場させようかと思ってました。
百合とか、あやめとか、好きな花なので、名前や小道具として盛り込めてうれしいです。