その2
じーっと僕は花を見る。
僕は背が180センチ近くあるから、周りからは大きな男がずっと1点にとどまって花を眺めているのは引くかもしれない。
でも、僕は見続ける。花がしゃべりかけてきて僕を和ませてくれているんだ、なんてことはない。
ただただ使い捨てのプラスチックのコップくらいの大きさの中に入っている小ぶりのブーケや、
丸いゴミ箱みたいなのに入れられている薄色の花を見て、なんていうんだろう。
その美しさに、醸し出す柔らかで凛とした花たちの雰囲気に自らを癒してもらっているんだ。
目で楽しむだけで、肩から肋骨からもう重力に引っ張られて、重いだけの縮こまった身体が
また深く息ができるようになる。
そして次に、店先右側に出ている濃い色で構成されたブーケを眺める。
今日は赤いバラだろうか。それとショッキングピンクの洋風な菊みたいなやつに、
僕でも知ってる白いガーベラがその中で色を中和するみたいに入っている。
こんな濃い色のだれが買って、どこに飾るんだろう。なに用だ?用途がわからない。
そして最後に、店先左側の季節の花を眺める。
今は青い色の花が時期のようだ。
青い花は自然界では咲かない、と聞いたことがあったが時代が進んだんだろうか。
青い色の花も咲くんだな。
僕は青が好きだ。なんでかって単純な話だ。
昔好きだった子が好きな色だったから。
それまで緑系統色が身の回りに多かったが、その子を好きだと自覚してから、
青色が占めるようになっていった。
青い靴、青いスポーツバック、青いペンケース。
持っていると、その子の琴線に触れたものがあったとき、なんとも気さくに話しかけてくれた。
青色は彼女と僕をつないだ。
その子とはなんにもないまま、会うと淡い想いを思い出すくらいにはなったけど、
青色好きは残ったままになった。
今日来ているセーターは紺、持っている鞄にも鮮やかな青の差し色が入っている。
思春期だったあの頃、嫌いな自分のあの子を好きな気持ちだけは全肯定だった。
初めて自分で自分を認めた感覚。青色は当時の僕の、お守りだった。
あの子の好きな青色を好きな僕を、僕は認められた。
その確固たる『自分を認めた』感情が残っているのかもしれない。
じーっと花を見続けていると、考えてしまう。どれを買っていこうかと。
もう花を眺めて帰るなんて選択肢はない。ドーパミンかアドレナリンか
何かが出ているのだろうか。




