八十メートル
結局のところ、あなたとはキスどころか手も繋がなかった。なぜあなたがそんなに消極的なのかはわからないが、できることなら私を救ってほしかった。
わがままかもしれない。自分勝手かもしれない。けれども先に救われたのはあなただった。とても悔しい。あなたはこの高さ八十メートルはある橋の上から何を思って何を見たの。若い日の思い出?初恋の相手?バカ騒ぎした気の合う友人?仕事の失敗?父の愛車を凹ませて殴られたこと?あなたは何を考えていたの?
重力に引き寄せられ大地に殺されたあなたを私は愛していました。