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四角い修羅場を丸くする!  作者: 伊ノ部ひびき
1年生 -2学期編-
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第86話 一般庶民三銃士


西宮宅で開催されるお泊り会の準備の為に一旦解散となった4人。

夕方頃、支度が終わったメンバーから順に西宮が車で送迎をした。


最後に回る事になった北条家だけ妹がゴネて居たが4人で泊まるならギリOKという許可を貰った。

くれぐれも南雲と2人の状況にならないように、と釘を刺された。



「すまん。待たせたな」


「構わないわ」


「北条のアパートの前にしばらくリムジン停車してたから近隣住民の噂になってるかもね……」


「凄いよねー。ワタシもリムジンなんて初めて乗ったよー」



普段はセダンタイプの高級車で登下校する西宮だが、本日は3人を乗せるためにリムジンを手配していた。

車内では女性執事が接待をしている。



「私は麗奈お嬢様の執事の五味渕と申します。以後お見知りおきください。北条様のお飲み物はいかがいたしましょうか」


「あ……その、お構いなく」


経験した事のないVIP対応に改めて生活レベルの違いを感じた北条はたじろぐ。


「えー、せっかくだから茉希ちゃんも貰ったらいいのに! なんか高級そうなジュースとかいっぱいあったよー」


おかわりまで貰っている南雲は車内をすっかり満喫している。

東堂に関しては何故か西宮に飲み物を注ごうとして執事に止められていた。

北条以外は割と平常運転だった。



ほどなくして着いた西宮宅は都市近郊にあり、これぞ豪邸という佇まいをしている。

当たり前のように中庭があり、当たり前のように噴水まであった。

一般庶民3人からしたら見た目では屋敷の全容が全く把握が出来ない。


正面のゲートをくぐって屋敷の前にリムジンが停まると執事にエスコートされて順番に車を降りる事となった3人。



「はえー……すっげーわ。もはや次元が違げぇ……」


「これたぶん、ワタシたちが一生縁のない生活だよねー」


「気軽に泊りにきていいわよ」


「え、じゃあ住み込みで………」


「構わないわよ。部屋はいくらでも空いているわ」


「あーちゃん。調子乗り過ぎ。ちょっとは遠慮しよ?」



先ほどまで高級ジュースを飲み散らかしていた南雲に東堂は注意を受ける。

西宮自身は割と本気で貸すつもりでいた。



「まぁ、流石に東堂も親が居る家では色々気まずいだろ」


「ここに親はほぼ来ないわ」


「えっ……あぁそうか、わりぃ。そうだよな……親忙しいもんな………」


「それもあるけど、ここは私の()()()()()()()()()()だから」


「えぇ!? ここが実家じゃないの!?」


「実家……実家というのがどれになるのかは分からないけど、育った家ではないわね」



仕事に忙しい西宮の両親は日々国内外を転々としている為、そこら中に西宮家の別荘を建てていた。

情勢により滞在場所が変わるので、それこそ世界各地に別荘を建てまくっている。


なので西宮本人も各地の別荘のうちどれを実家と言えばいいのかはよく分かっていない。

もはや、北条が想像していた次元の更に上を行っていた。



「こわ。そのうち西宮シティが出来るんじゃねぇの……」


「海外の工場地帯とかはもう実質そうなってるよ……」


「そんな西宮家の跡取りが、これ……」


「これ呼ばわりはやめなさい。西宮家の未来は明るいわ」



そんな冗談はさておき、屋敷の中に入るとコンセプトとかではないモノホンのメイドさんが3人の荷物を預かろうとする。



「え、別に荷物くらい自分で部屋に運ぶぞ?」


一般庶民の北条は人に荷物を運ばせることに後ろめたさを感じた。


「違うよ、茉希ちゃん。きっとこれは手荷物検査だよ。あーちゃんとかが怪しいものを持ち込まないかのチェックしてるんだよ!」


「そ、そんなテロリストみたいな事はしないよ!」


「ただの善意よ。さっさと渡しなさい。いちいち屋敷に入るのにそんな関所はないわ」



手ぶらになった3人を西宮は手洗いをする為にまずパウダールームへと案内した。

その後、屋敷の施設の説明をする為に執事が先導をして案内したのだが……



・パウダールーム


「すげー洗面所だな。やっぱ水とかにもこだわってんのかな」


「普通の水道水よ」



・トイレ


「この飾ってある花もきっと希少な花なんだろうね」


「メイドがうちの温室で育てた花だと言っていたわ」



・書庫


「きっとこの本棚の本とかもうん千万とかするんでしょー」


「それは私の買った同人誌の本棚よ」



屋敷案内では偏見を持った3人がいちいちコントを繰り広げていた。

その他にもリビングやシアタールーム、大浴場など全てを回る暇はないので3人が使いそうな施設のみを紹介していった。



「以上よ。食事の時間まではまだあるから各自自由行動という事で解散」


「いや、解散言われても困るわ」


「そうだよ、普通に西宮さんの部屋とかじゃダメなの?」


「僕も麗奈の部屋を見てみたいな」


「別に構わないけど。ボケるのは難しいと思うわよ」


「いや、俺たちもボケたくてやってる訳じゃねぇんだわ」



こうして庶民ボケ芸人たちが向かった西宮の部屋は目算でも30畳くらいの広さ。

しかも置いてあるのもは姿見と机、天蓋つきベッドくらいである。



「広っっっっ! この部屋だけでうちのアパートくらいあるだろ」


「もの少っなー。THEスペースの無駄使いってかんじー」


「この部屋逆に利便性悪くないかな……?」


「人の部屋にいちゃもんつけるのをやめなさい。自室なんて寝る時以外は使わないわ」



この部屋を寝室としているなら東堂の言った通りで、庶民的な感覚では扉からベッドまでの移動がだるいだけだった。



「私達が食事と入浴をしている間にメイドたちがここにあなた達用のベッドを運び入れるそうよ」


「そんなお泊り会で布団引くみたいなノリでベッド持ってくるやつ初めて見たわ」


「自室に3つもベッド置くスペース空いてるのも凄いよねー」


「そもそも麗奈って布団で寝た事あるの?」


「あるわよ。和風建築の別荘では流石に布団で寝ていたわ」



西宮の部屋は本当にこれと言って何か物がある訳ではなく、かといって書庫やシアタールーム等に行くまでもない。

なので4人は西宮の部屋で夕食まで雑談をして時間を潰すことになった。


3人がこの時に感じたのは、庶民というのは結局普通の家で普通の生活をするのが一番落ち着くということが分かった。




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