この世界は才能がすべて
氷上を合わせて4人ほど同時に呼ばれドアを開くと、そこはエレベーターのような内装になっており、先程の青髪の男が立っていた。
「えー戦闘試験は地下で行いマース。内容は地下に着いてからお話しますのでまぁそこんとこシクヨロです。」
相変わらず受験を担当しているとは思えないような言動をしている男だったが、みんな慣れてきたのかどよめきはなかった。
「なぁ透。これから何すんだろーな。」
「朝日、俺に聞かれても困るよ。」
そんな会話をしているうちに地下に到着したようで、氷上たちは青髪の男に案内されひとつの部屋に連れて行かれる。
部屋には家具ひとつなく、全面真っ白な白い部屋としか表現出来ないようなものだった。
「えーこれから君たちには1体1の模擬戦をやって頂きマース。もちろん才能を使ってオーケーです。まぁ模擬戦なので相手が死なない程度にはして頂きますが。」
そう青髪の男が言うのと同時に白い部屋の内装が変わり、古代の闘技場のようになった。
しっかりと観客席や空なども再現されており、少なからず氷上たちはおどろいていた。
「えーではこちらが事前に決めた組み合わせで戦って頂きマース。では最初は朝日京平さんと蛇島無奈矢さんまず前に出てくださーい。」
「よっしゃ!行ってくるぜ透!」
「あぁ、頑張れよ。」
朝日と一緒に呼ばれた蛇島無奈矢は、学生服にピアス、そして糸目という、どこか胡散臭そうな男だった。
氷上と残りの1人は青髪の男と一緒に観戦席で先頭を観戦することになった。
「よろしくな!蛇島!俺は朝日京平、実は《喧嘩》の天才なんだぜ!」
「よろしくです。朝日さん。僕は蛇島無奈矢、一応の才を持っています。」
見た目に反して蛇島は友好的で、朝日の割と空気の読めない挨拶を気にする様子もなく、自分も挨拶をした。
二人が挨拶をしてまもなく模擬戦が始まった。蛇島はサイコキネシスで闘技場の一部を壊し、それを朝日に向けて飛ばす。
朝日は《喧嘩》の天才らしく、優れた身体能力でその瓦礫をかわしつつ、隙を見て蛇島に攻撃する。蛇島は上手くサイコキネシスを使い、朝日の攻撃をいなしていくが、さすがに身体能力の差が大きく少しずつガードが崩されていく。
「オラァ!おらおらぁ!」
「くっ!|これならどうです、破砕!」
蛇島が破砕と唱えた後一瞬朝日の体が硬直し、攻撃が止まる、おそらくさっきのは相手の動きを止める技だったのだろう。
しかし、止まったのもつかの間朝日はすぐに動き始め蛇島の攻撃をかわす。
「なっ」
「チェックメイトだぜ!うぉおー超必殺怒鳴誤波動!!!」
(だせぇ……)
朝日の連撃をカウンターで決められ、蛇島はその場に倒れ込む。
そこで青髪の男が「シューリョー」と模擬戦の終了をつげた。
終わって見ればかなり早く終わってしまい、朝日は少し物足りなそうにしていた。
倒れた蛇島は青髪の男が連れて行ったため、おそらく保健室にでも連れていかれたのだろう。
「どうよ透。俺の実力は」
「さすがは天才ってとこだね。でも朝日多分だけど手抜いてたよね?」
「おお!すげぇーなよくわかったな。俺が本気でやったら骨粉砕しちまうからな。」
朝日と話してるうちに青髪の男が帰ってきて、とうとう氷上の出番がやってきた。
「次はぁー氷上透さんと纏凛さーん前に出てきてくだサーイ。」
(やっと俺の出番か、まぁとりあえずしっかり合格が確定するぐらいまでは頑張ろうかnーー)
青髪の男に連れられ、ここに来てから氷上は周りの参加者を全く見ていなかった。朝日にずっと話しかけられていたのも要因のひとつではあるが、この試験自体にあまり興味がなかったのだ。
だから、今目の前の相手を見た時に驚愕した。いや、してしまった。
大きな目に綺麗な輪郭誰が見ても美しいと言うであろう顔立ち、すらっとした長い足、くせっ毛ながらもどこか流麗さを感じさせるロングヘアー、そして何故か着ている男物の着物も逆に彼女の雰囲気に合致しているような気さえする。
氷上透は完全に油断していた。だからこそ、不意をつかれたと言っても過言ではない。しかし、それらを差し引いても彼女はとても美しかった。
「っあ……」
「ん、よろしく。」
間の抜けた声しか出せずにいた氷上に対して、彼女は至極冷静に挨拶をした。
氷上透16歳、彼がこの後にとる行動は誰も予想だにしないことであったであろう。いや、ただ1人氷上だけは自分がどんな行動に出るか分かっていた。しかし、不躾だとわかっていても彼自身には止めようがなかった。
内から溢れ出てくる思いのままに氷上は、
「俺と結婚してください。」
求婚した。