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義妹は義兄に恋をする

私は、三上由香。ふたつ上の兄の三上英隆が大好きで、ブラコンという自覚もある。


ただ、私とお兄ちゃんは血縁がある。


小説みたいに都合よく義妹だったってことはない…だから諦めなきゃ


小学生になるタイミングで、そう思った。

が、小学2年生のある時、両親の会話を聞いてしまって、私は血のつながりがない養子だったということがわかった。


理解はできていたのだろうけど、したくなかった。だから、それからしばらく理解していないふりをした。

家族としてお兄ちゃん受け入れられる自信が全くなかったからだ。


まだ小学2年の子供が、その事実を知ってすぐ飲み込めるわけがない。

そして、もし飲み込めたとしても、私がお兄ちゃんに恋心を抱いているなんて知られてしまったら、それこそ私は家族でいられなくなってしまう。


嫌われてしまうかもしれない。そんな不安が私を押し潰していき、どんどん私は逃げたくなって行った。


私が弱っていることに気づいたお母さんは


「信頼できる人に相談しなさい。私とお父さんならいつでも絶対に相談に乗ってあげるから」


と言った。

相談することを考えてすらいなかった私には、この助言がすごく嬉しかった。


ただ、家族に話したら意味がないので、次に信頼しているサナちゃんに話をしに行った。

すると、サナちゃんはすごく親身になって聞いてくれて、私の話を全て信じてくれた。


「由香ちゃん。自分がヒデくんを好きなのと、義理の兄妹であることがバレるのが怖かったんだよね?でもね、その考え方は私は間違えてると思うよ」


「どうして?」


「だって、考えて見て?義理の兄妹なら結婚できちゃうんだよ?それに、ヒデくんよく、「由香ちゃんが可愛い」って言ってるんだから、全力で落としにかかれば好きになってくれるよ。絶対」


「でもっ、でもっ。嫌われちゃうかもじゃん!」


「ヒデくんが由香ちゃんを嫌いになるわけないでしょ。だって、ヒデくんは、私が『お前が俺と付き合わなかったら三上を殺す』なんてこと真にうけてそいつと付き合ってた時に、自分が脅しの材料にされてるのを理解せずに、『好きな人としか付き合っちゃダメなんだよ!』なんて、私に説教し出したもん。で、そいつがヒデくんにキレて殴って、私が通報して、そいつがサツに連行されてって、ひと段落した後に、また私を説教して、で、『僕もサナちゃんが大好きだから結婚しよ!!』って言ってきてね。勝てるわけないのに自信満々にそう言って、悪いことした私をなんとも思わなかったようなそぶりで、言ってきちゃうんだよ?元々惹かれてたのにそんなふうに無邪気な笑顔で言ってこられちゃったら惚れちゃうに決まってるよね」


あれ?なんか話すっごいずれてない?めっちゃ惚気られてない?

てか、サナちゃんって私の恋のライバルなの!?


「サナちゃんもお兄ちゃん好きなら、お兄ちゃん私なんてみてくれないよ?」


「だーかーら!ヒデくんは由香ちゃんのことかわいいかわいいってずっと言ってるんだから、覚悟して本気を出てたら絶対惚れてくれるに決まってるよ。もうちょっと自信持って。あと、ヒデくんを信用してあげなよ」


その言葉は、私にとっても大きな自信をくれて、私が義妹であることを明かす勇気をくれた。

だから、私はサナちゃんからもらったこの勇気が無くならないうちに家に帰って伝えることにした。


家に帰ると、お母さんが慌てて家から飛び出てきた。そして、お兄ちゃんが変わってしまう引き金になる出来事を聞いた。


「お父さんが事故に遭って今病院にいるの!早く病院に行くから準備しなさい!」


いきなりのことだった。

私もショックだったけど、お父さんが大好きだったお兄ちゃんは、ずいぶん落ち込んでしまっていた。


車の中で、なんとか元気になってもらえるよう色々試したが、どれも効果はなく、そのまま病院にたどり着いた。

そして、病院の医師が最初にお母さんにだけ言ったことは


「今はかろうじて生きていますが、いつなくなるかはわかりません。もし生きていたとしても、意識が回復する可能性は低いと思われます」


だったそうだ。

結局、そのひのうちにお父さんは亡くなって、お兄ちゃんは元気が全くなくなり、部屋に篭り、ずっと暗い目をしていた。


そして、数日経ったある日、ようやく元気を取り戻したのか、朝起きると、前みたいにリビングにお兄ちゃんが来ていた。

私は嬉しくて、普段よりもずっと明るい声で声をかけた。

するとお兄ちゃんはゆっくりこちらを振り返り、明らかな作り笑いを浮かべてこう返してきた。


「あぁ、おはよう"由香"」


前みたく由香ちゃんと呼んでくれなかった。

気のせいだと信じ込み、また話しかける。

すると、やっぱり普段のお兄ちゃんではない話し方で返ってきた。


考え方も、喋り方も、私やお母さんの呼び方だって、全部違っていた。

そして、そのことに気づいた時、この話し方を何度も聞いたことがある様な気がした。


お父さんだ。

この喋り方と呼び方、考え方は全てお父さんに酷似している。

服装、行動、こっそりみたけど、部屋まで全部お父さんの部屋ににている配置になっていた。


大切な誰かが亡くなった時、寂しさを埋めるためにその人に成り切ろうとすることがある。

どこかの漫画で見たことをまんまお兄ちゃんがしている。

私は1ヶ月も経てば元に戻ると思っていた。


きっと、すぐにいつものお兄ちゃんに戻ってくれると思っていた。

けど、そうはいかなかった。


いつまで経ってもお父さんに似せたまんま。

精神病院に行こうと提案もしたが、受け流された。


私は、どうしても寂しくなった。

お父さんがいないのも、お兄ちゃんがいないのも辛い。


お兄ちゃんが戻らなくなって約2年私の寂しさや辛さは次第に積もっていき、私はそれに合わせてどんどん弱って行った。


そして、お兄ちゃんが戻らないのなら。私の恋は一生実ることがない。

その事実を知った時、私はこう思った。


こんな思い捨てちゃわなきゃ


その思いに至った後は、簡単に考えがまとまった。

私はあきらめるためにも、漫画みたいだけど、恋心を捨てるために綺麗で、大好きな自分のロングヘアーをバッサリ切り落とした。


でも、やっぱりこんなんじゃ気持ちはなかなか変わらない。

次はどうしようと考えながら切った髪を放置して辺りをうろうろした。

すると、いきなりリビングのドアが開いた。


深夜のリビングでやっているから、朝まで絶対に一階に降りてこないお父さんをまねたお兄ちゃんがくるはずがない。それに、お母さんは今日は夜勤だからいない。


じゃあ誰?そう思ってドアの方を見つめるとお兄ちゃんが立っていた。

お兄ちゃんは私の髪と、床に散らばった髪を交互に見比べたあと、ふらふらとした歩き方で私の元にやってきて、私をそっと抱きしめた。


あまりに突然のことだったから驚きが隠せない。

だってお父さんは私を抱きしめてくれたことなんてなかったから。


仕方ないことだと思う。お父さんが帰ってくる時には私は寝る支度をしていたし、私が朝起きた時にはもうお父さんは仕事に行っていたから。

休みの日もそんなことはなく、私もお父さんとは、どこか距離があったから、ずっとお兄ちゃんやお母さんと居て、お父さんとたくさん関わることはなかった。


だからか、お兄ちゃんがお父さんの真似をするようになってからは、会話も減ったし、一緒に遊んでくれなくもなった。もちろん抱きしめてくれはしなかった。


だからきっと、理由を聞く程度で終わると思ってたのに、どうして抱きしめてくれるのだろう。

抱きしめて離してくれなかったし、よく聞くとお兄ちゃんは泣いていた。


「どうして?」


ついそう聞いてしまった。


「ごめん…最近、夜になると由香の部屋から『お兄ちゃん、元に戻って』って声が聞こえてきてた。毎晩毎晩聞こえてきてた。なのに俺は無視をしてきた。最低なことをしてた。今こうして髪を切ったのも俺が原因だよな。ごめん」


お兄ちゃんからの唐突な謝罪。

私には理解ができなかった。どうして謝るのだろうか。どうして抱き締めるのだろうか。

少しの間考えて、たどり着いた答えは、この行動は、お父さんの真似ではなく、()()()()()がやっているのかもしれない、というものだった。

なら、本当にお兄ちゃんがやっているのかを確かめなきゃ…


「お兄ちゃん。お父さんなら私のことを抱きしめないよ?お父さんの真似は?」


「そんなのもうしてない…!」


「どうして?喋り方は?私の呼び方は?昔みたいな考え方もないし、行動も、服装も、部屋の中も、全部全部お父さんの真似してるじゃん」


「お父さんの真似しているのならこんなことしない。でも、もうそういうのはクセになってるんだ…やめようとしてもやめられない……」


こういう時、きっとお兄ちゃんでもお父さんでも嘘はつかなかったと思う。

だから、このことバチ嘘はないのだろう。でも、お兄ちゃんはみんなを散々心配させて、私の心からの願いを聞いていても治してくれなかった。


ほんとに信じていいのかな?嘘じゃないのかな?

信じていいのかな?だめ…なのかな?


あなたならどっちを選ぶ?私になったつもりで考えて見て。


▶︎信じない

▶︎信じる



























▶︎信じない


いやっ、私は信じない。お兄ちゃんはきっと、まだお父さんを忘れられない。

寂しさが拭いきれてないから、こんなことになってるんだ。

だから…私は!


「信じない…お兄ちゃんは私もサナちゃんもお母さんもタカちゃんも絵里ちゃんも。みんなみんな心配してるのに何も治そうとしなかったから……だから、私…今のお兄ちゃんなんて信じないっ!!!!」


私の叫び声にビックっと体を震わせて驚くお兄ちゃん。そして、それから動揺して、あわあわし始めた。


「お兄ちゃん。信じて欲しかったら元に戻って」


「だっ、だからっ、もう無理でっ…」


「私のこと呼んでみて」


「由香?」


「ちがうっ!!昔みたいに!!!」


「由香…由香…ちゃん…」


2年ぶりに、お兄ちゃんがそう呼んでくれた。私の心は懐かしさと喜びでいっぱいだった。

呼び方ひとつでこんなにも不安が消えてくれる。


「お兄ちゃんこの部屋、すっごく散らかってるね。わかる?」


「由香…ちゃん。片付け…片付け一緒しよっか?」


「うんっ!!!」


昔みたいな喋り方と昔みたいな呼び方。強制しちゃってるけど、心のどこかにお兄ちゃんがいるなら、お父さんみたいじゃない方がいい。お兄ちゃんはお父さんじゃない。本当のお兄ちゃんに戻ってもらわなきゃ。私の理想を押し付けてるだけって言われるかもしれないけど、周りになんて言われようとも、私は昔のお兄ちゃんに戻ってほしい。


だから、こうして昔みたいな感じは、私の心を落ち着けてくれた。


「お兄ちゃん。大好き」


「俺…いや、僕も大好きだよ。由香…ちゃん」


自然と出てしまった言葉にお兄ちゃんは昔みたいに優しい笑みを浮かべてこたえてくれた。

その笑顔をみると、不思議と今なら私が義妹であることを言える気がした。


だから、私はリビングの棚にある、お母さんに頼んでもらった私とお兄ちゃんが義兄妹あることを証明する書類を引っ張り出してお兄ちゃんに見せた。


「お兄ちゃん、私はお兄ちゃんに恋してる。でも、2年前に私たちは兄妹じゃないことを知って、もっとお兄ちゃんが好きになった。でも、お兄ちゃんがお父さんの真似をやめてくれないから、お兄ちゃんじゃなくなったみたいで辛くなって、諦めるためにも髪を切ったの」


この時点でお兄ちゃんは何がなんだかわからなさそうだった。

まあ無理もないと思う。妹が血の繋がってない義兄妹で、しかも恋心を抱いていて、自分のせいで辛いめに合わせて長かった髪を切らせた。


きっと優しい昔のお兄ちゃんの心があるのなら、罪悪感が、唐突に明かされた事実を凌駕すると思う。ここを、最終的な判断基準にしよう。


そう決めて、お兄ちゃんを静かに見つめていると、お兄ちゃんの目からたくさんの涙が溢れてきた。

泣き虫だったお兄ちゃんだ。やっぱりお兄ちゃんはお父さんじゃない。お兄ちゃんはお兄ちゃんらしく昔みたいに戻ってくれたらいい。


泣いているお兄ちゃんに寄り添い、私はこう囁いた。


「お兄ちゃん。これから私は自分の恋を実らせるために全力でお兄ちゃんに好きになってもらう。覚悟しててね」


そう言ってお兄ちゃんの頬にキスをして、私は片付けをしに戻った。

まだ完全に不安が拭い切れたわけではないけど、私の心は喜びでいっぱいだった。


5年の月日が経ち、その間ずっと私はアプローチをし続けた。


「由香ちゃん…いいや、由香。僕は由香を大好きになった。辛い時もずっとそばに居てくれた由香が大好きです。僕と付き合ってください」


そして、中学卒業した今日。私はお兄ちゃんと結ばれることができました。









▶︎信じる



を選んだ人は、前の2つのエンドの方向に行きます!!由香とお兄ちゃんは結ばれないルートです!

そう、この時、信じてしまったら、2人は結ばれなくなってしまうのです。そして、信じてしまうと、前みたいに戻してもらおうとはせず、お父さんの真似が抜けていない状態のままになります!

あなたの本当の気持ちを本当に知ってもらいたい相手にしっかり伝えると、何かが変わったのかもしれませんね。

英隆の過去と、ゆかと結ばれる話でした!どうでしたか?感想をいただけると嬉しいです。

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