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幼馴染が好きなのはイケメンな幼馴染です

俺は三上英隆、一言で言えばどこまでも普通な高校2年生。

俺には幼馴染が2人いる。クラスの中でも男女問わずで1番人気な女子、西嶋絵里とクラスでも圧倒的にイケメンな香西孝宏だ。


俺たち3人は幼稚園の頃から仲がいい。

みんなでお泊まりだったり長期休みに3人とその家族でどこかへいくのは当たり前だった。


そして、俺は1人だけ普通だから、周りのやつらに「あいつだけ浮いてる」とか「なんであの2人もあんな奴と仲良くしてるんだろう」とか色々言われてきた。

2人は「周りの言うことなんて気にしないで」というけど、やっぱり気になるもんは気になった。


中学生ぐらいから、劣等感を感じ始め、関わりを減らそうとした時期があった。

その時と同時に、俺は絵里を好きになり、絵里は孝宏を好きになった。

だから、より一層2人のそばにいたくなくなり、最初はほんの少し関わりを減らしただけだったのが、段々と関わりを減らし、疎遠になることに成功した。


が、すぐに2人に捕まってしまって、元の仲のいい幼馴染に戻されてしまった。

そんな状態が3年も続き、その三年間で俺はさらに絵里が好きになった。

好きになると、自然と絵里を目で追う様になり、みているうちに気づいたことがたくさんあった。


まず、話しかけるときは必ず孝宏から話しかけて、次に孝宏が絵里と一緒に話しかけてきていた。もちろん、遊びに誘う時も孝宏が誘われ、誘われた孝宏が俺を誘いに来ていた。


次に、絵里は孝宏に対するボディタッチが多い。俺にはボディタッチはおろか、俺に近づくときは30〜40cmほどの距離があった。


そして、1番俺的に辛かったことは、俺には向けてくれたことのないような笑顔を孝宏に見せていたことだ。


ここまでくると、俺はやっぱり邪魔な存在なのではないかと感じることがすごく多い。

だから、中学の時ほど露骨に避けることはないにしても、確実に距離を置くために最近は努力している。


具体的には、たまにない予定を作って誘いを断ったり、たまに話しかけられる前にその場から逃走したり、たまに2人ではない他の友達と喋ったり、さける口実にするためにバイトを始めたりと、基本"たまに"というところを意識して、あくまで不自然ではない断り方を増やして行った。


好きになった女の子の幸せのために、出来るだけ2人きりの時間を増やして、早くくっつくことを願っていた。


そして、今日の昼休みに、ついに動きがあった。


「ヒロくん、今からすこしお話できる?」


「うん、できるけど?ヒデは誘う?」


「ううん、2人だけにしてほしいんだけど…」


「なるほど、いいよ」


そう言って2人は並んで弁当を持って教室を出て行った。

教室はもう大盛り上がりだ。


「やっとあの2人くっつくのかな!?」


とか、


「美男美女カップルの誕生だな」


とか、


「香西が選ばれるなら、納得だな。完膚なきまでの敗北というのは意外と気持ちがいいものだな!」


とか色々あった。

というか、最後のやつには共感しかない。

あんなハイスペックイケメンで、しかも幼馴染なら負けても悔しいなんて思えない。


思えないはずなのに、どうしても胸が痛い。涙が出てしまいそうになる。


お昼休み終わり直前に、2人はいつも通り仲良く並んで帰ってきた。

教室内はもう2人が付き合ったことをみんな察していて、「付き合ったの!?」とかそんな野暮なことを聞く奴は1人たりとも現れなかった。


結局、今は2人と話すと辛くなりそうだから、5時間目終わりの休憩時間はトイレで過ごし、放課後はさっさと帰ろうかと思った。


けれど、孝宏がそんなことを許すはずもなく。いつも通り絵里を連れて話しかけにきた。


「ヒデ〜一緒にモールにできた新しいクレープ屋行かね?確か今日バイトないだろ?」


そうだ、今日はバイトがないから断りにくいんだ。

しかも、たまに遊ぶ友達達とは今日は話していないのだ。

くっそ、断る理由が見つからない!!


何かないかと色々考えていると、ふと昨日見た今のバイトより時給がいいバイト先の広告を思い出した。

そうだ!これを使おう!!


「あー悪い、今日は新しいバイト先の面接があるんだよ」


「えっ?バイト掛け持ちするの?ダメだよそんなの!」


「流石に掛け持ちはやめとけ、俺らと遊ぶ時間も減るし、お前が無理してぶっ倒れたら話にならないだろ」


「いや、違う違う。掛け持ちなんて大変そうだからしないよ。ただ、今のバイト先より時給いいから面接だけ受けて見て、通ったら近々バイトを変えようかなって思っただけだから」


「なるほどな、それって今からなのか?」


「うん、本当は4時からなんだけど、学校あるからってことで4時半からに変えてもらってるから、なるべく早く行かないとだしね」


「そっか、なるほどな、じゃあ頑張れよ!」


「が、がんばってね!」


「うん、ありがとう」


そう言って俺は早足気味に帰路に着いた。

正直うまく騙されてくれてすごく助かった。


というか、あいつらどういう神経してるんだ?

付き合った日にいきなり2人以外のやつを連れてクレープ屋行こうとしてんの?

そこは2人きりで放課後デートを楽しむところでしょうが!!


なんて突っ込んでいると携帯がいきなり震えた。

なんだなんだ?思いつつ見てみると絵里からのLIMEだった。

内容は『面接頑張ってね!で、受かったらまたバイト先教えて!遊びに行くから!』というものだった。

2人でバイト先にデートしに来られると考えると仕事中でも泣いてしまいそうになりかねないから、いうのはやめとかないといけないな…というか、今のバイト先にも来てほしくないし、ほんとに近々バイト先変えなきゃな。


とか考えつつ適当に『ありがとう』とだけ返しておいた。

というか、LIMEですらされると辛いな…そうだ、ちょうどいいタイミングだから、スマホ水没させたってことにして、新しいスマホに買い換えるか。そのとき、LIMEだけアカウント直らなかったってことにして、2人とのLIMEを切ってしおう。


ってことで、2日後の日曜日にモールの携帯ショップにやってきて、最新のスマホを購入した。

途中、モール内で絵里と孝宏が仲良さげに花屋に入っていくのが見えた。こちらの存在には気づいてないようなので安心したが、2人がデートしているところをみてしまうとやっぱりつらくて、その場から逃げ出すようにはしって家に帰った。

家に着いて、早速機種変更をして、いろいろなデータを転送した。そして、LIMEだけは一旦垢を削除して、再び新しいアカウントを作った。


その二日間は一切連絡を取らず、前のスマホに来たLIMEも全て未読スルーを決めた。

金曜日に2人からLIMEが結構たくさんきていたけど、水没したという設定のため、全スルー。

まぁ、2人には俺のことなんて忘れて仲良く恋人として過ごしてほしいから、この未読無視をきっかけに縁が切れることを願っておこう。


そんなこんなで迎えた月曜日。

早速学校へ向かおうと玄関のドアを開けると、そこにはなんと孝宏と絵里がいた。


「うぉぅ、どした?朝早くから」


「その、これっ」


そう言って絵里は本の栞を渡してきた。


「その、LIME無視されたってことは何か怒らせちゃう様なことしたのかなって不安になって、その、お詫びの品として昨日ヒロくんとお花選んで押し花の栞作ったんだけど…」


ほう、デートのついでにそんなものを作るための材料を買ってくれてたのか…嬉しいけど、なんだか俺が変なことしたせいで気を使わせてしまったみたいですごく申し訳ない。


「ありがとう、でも別に怒ってなんかないよ。あと、この花ってなんていうお花なの?」


「あっ、これリナリアっていうの。で、その、なんでLIME見てくれなかったの?」


「あーごめん、実は金曜日に、バイト面接受からなかったショックでぼーっと歩いてたらスマホを公園とこの噴水に落としちゃったんだよ。それで、機種変したけど、LIMEのアカウントが直んなくって、新しい垢に変えちゃったんだ」


しかし、この水没作戦がここまですぐバレるのは正直想定外だった。


「そっ、そうなんだ。なら、もっかいつなご?」


「うん、いいよ。ほら、孝宏も携帯だして」


「はいはーい」


そんな感じでまたLIMEを交換してしまった。

結構真面目にいい作戦だと思っていたのにこうもあっさり終わると少し悲しかった。


で、そのまま流れで久しぶりの3人で登校をするハメになった。

中学からは部活の都合だって言って登下校時間を基本ずらしていたからこうして朝から3人で歩くのはすごく懐かしい感覚がする。


けど、好きな人が大切な幼馴染と付き合っているなか、俺がこうして一緒に登校するのは、やっぱり辛かった。

2人が楽しそうに肩を並べて歩く後ろ姿を三歩遅れて歩く俺がみると、物理的な距離は近くても、どこかすごく遠くにいる存在に見えてしまう。


それと同時にどうしようもないほど


「……お似合いだなぁ…」


そう思わず口に出してしまうほど2人は理想のカップルに近かった。

やっぱり、2人は遠いどこかへ行ってしまったのだろうか?俺にはやっぱりそばにいる資格なんてないのだろうか?


いや、ないのなんてとうの昔に理解していた。していたはずなのに、涙が溢れてしまうのはなぜだろう。


「なっ、おいどうしたヒデ!?」


「えっ、どうして泣いてるの!?」


「あっ、ははっ…ううん、なんでもない。大丈夫だから、ちょっと先に行っといてくれない?泣いてる姿なんて見られたくないから……」


心から思っている本音と、その本音のほとんどを隠した嘘の言葉。

溢れる涙が止まらない中、今まで嘘ばかり吐いていた口から、ほんの少しの本音が溢れてしまった。


「おい、本当に大丈夫じゃないだろ!いいから落ち着けっ、なっ?俺ら幼馴染だろ?だから、もっと頼れよっ!」


「そうだよ!私たちは泣いているヒデくんを置いて行くなんてことしないから!絶対!だからほらっ、落ち着いてっ?」


やめて、やめてくれ、優しくしないでくれ…

勝手に劣等感抱いて、嘘を吐いて、お前らから逃げていた俺になんて、お前らに優しくしてもらう権利なんてないんだよっ…


「悪いけど…ほんとに大丈夫…だから今日俺休むから、学校行って、先生に伝えといてくれ…」


「いっ、家まで送ってくよっ!」


「ううん、大丈夫…いいから、早く行って?」


「なぁおい!無理すんなって!」


「お願い…今は1人にさせてくれ」


そう言って少しふらつく重たい脚を動かして、家の方へ向かった。

▶︎まっすぐ家に帰る

▶︎家に帰らずブラブラする


あなたはどちらを選びますか?選んだ方の結末が投稿されるのを楽しみに待っていてくださいね

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