頭の怪しい人扱いで追放でしょうね。
この村は、「隠れ里」とかでは無いです。
普通の村ですが、代々の長が召喚士な為に自然と召喚士の村になりました。
巫女も「能力」では無くて、「象徴」です。
まあ、実力はNo.1ですが……
「ただいま~。」
「……シーナ様! お帰りなさいませ。」
「門番、お疲れ様。」
「……あの、シーナ様。」
「何?」
「そのお連れ様は?」
「この子は姉の忘れ形見の甥のレキウスで、後ろに居るのは、レキウスの仲間よ。」
「え!? キーナ様の!」
「そうよ。」
「直ぐに長に連絡を……」
「いいわよ。これから向かうんだから。」
「分かりました。」
そんなやり取りしながら、俺達は長の家に向かった。
一応、フィリアの事は秘密にしたいから、ヤエを俺の肩に出している。シーナにも口裏を合わせている。
それとハクガ達も出て貰っている。
「ただいま帰りました、お父様。」
「お帰り、シーナ。……それで後ろに居る少年達は?」
「彼は、レキウス=フォン=レイロード子爵です。」
「……レイロード。 まさか!」
「はい。キーナ姉さんの息子です。」
「おお~。そうか!」
この後、暫くの間は謝罪と感謝の言葉しか長の口からは出ず、俺は嵐が鎮まるのを待つだけみたいな気分だった。
「それで、レキウスは何故、この村に来たのだ?」
「俺にとっては、最大の問題は解消されたから、きちんと召喚士の知識を学びたいと思っていたのと。」
「他にもあるのか?」
「純粋に母さんの故郷に来たかったからだな。」
本当はもう1つ有るけど、まあ、オマケだしな。
「後ね、お父様!」
「どうした、シーナ。」
「召喚士の悲願達成よ!」
「……何を言っているのだ? 召喚士の悲願と言ったら、男性召喚士の誕じょ……」
「そうよ。」
「まさか!」
「レキ君の肩に居るのは、レキ君が召喚魔法陣で喚び出した従魔よ!」
「なんと!?」
「……と、言っても理由も原因も分からないけどね。」
「……そうだな。確かに我ら召喚士の悲願である男性召喚士の誕生は喜ばしい限りだが、シーナが分からないのであれば、恐らくは他の誰も分からないであろうな。」
そうだよな。
あの時は自分の事で一杯だったから聞いてないが、多分、創造神リアーシアなら知っているだろうな。
そして、ヒナ達の自己紹介の後は、ハクガ達は長と一緒に呑むと言って残り、俺達は村を案内して貰う事になった訳だが、馬鹿は何処にでも居る。
「お前が、偽召喚士か?」
俺達の前には15、6歳の少年2人と同じくらいの年頃の少女5人が現れて、いきなり俺を見下した言葉を言った。
「召喚士の悲願達成と聞いていたが、そんな矮小な従魔だと、大した事無いな。流石は、村から逃げた女の息子だな。」
……あ!
何て言った、この餓鬼。
「ちょっと、私の前で姉さんの事を悪く言うなんて……」
俺はシーナさんを制した。
「何が言いたいんだ?」
「ああ。後ろに居る5人と従魔同士で戦って勝てたら認めてやるよ。」
「……何をだ?」
「お前が召喚士の悲願である男性召喚士だとな。」
「……だったら俺からも条件を出そう。俺の従魔が勝ったら、お前ら2人を潰す。良いな。」
「ああ、勝てたならな。……ああ、そうだ。お前が負けたら、後ろに居る女を全て寄越せ。良いな?」
「ああ、構わない。」
「負けた後の、お前の惨めな顔が楽しみだ。」
そして、この村にある従魔同士が戦う為の闘技場に向かい到着した。
「レキ君、ごめんなさい。」
「良いよ。」
「それにしても、何も知らない事と中途半端な情報がどれ程危険か初めて正しく実感したわ。」
「それで、あの2人は何者だ?」
「あの2人は、この村を含む領地を治める『ダリル=ハルダ=ハルーリ子爵』の三男と侍従よ。」
「そんな奴が何故、この村に居るんだ?」
「……女漁りよ。」
「つまり、あの5人は、嫌々か金と権力に堕ちた訳か。」
「そう言う事よ。……はぁ~。領主のハルーリ子爵や嫡男のミゼル様や次男のハゼル様は真面目な方なのに……」
「それなら、潰しても良いな。あんなのを外に出したら、不利益しか無いからな。」
「そうね。私としては構わないわ。」
「分かった。」
「何をしている! さっさと従魔を出せ!」
……試合になりませんでした。
彼女達が召喚士で、天才と言われる程の才能が開花していたとしても、ヤエは日本神話最強の魔物だからな。
例え虎の仔といえど大人の獅子には勝てない様に、彼女達の従魔は闘技場の舞台に上がる事さえ出来なかった。
ヤエと目が合った瞬間に戦意喪失で、彼女達の必死の応援が何か哀れだった。
そして、馬鹿は地雷を踏む。
「さて。勝負は其方の試合放棄で俺の勝ちだな。」
「無効だ!」
「何故だ?」
「何か、仕掛けたのだろうが!」
「証拠は?」
「そんなもの知らん! ボクが無効と言ったら無効だ!」
「……ガキだな。」
「こうなったら、パパに言ってこの村を潰してやる!」
……良し、言った!
「はい、そこまでだ。」
「何を言っている?」
「いやな。貴族の権力を出してくれたお陰で楽になったからな。」
「どういう事だ?」
「もう馬鹿の相手をするつもりは無い。それでは勝利者の権利を使う。」
「何を……」
ええ。
潰しました。
タマを4つ程。
後、右手も、な。
「帰ったら伝えておけ。明日には其方に行く、とな。」
護衛に抱えられて2人は帰って行った。
さて。
今回の騒動での救いは、彼女達全員が嫌々に従っていた事だった訳だが、聞くと、「外見や中身が好みじゃない。」や、「あの頭の中身だと先が見えている。」や、「崖から落ちるのなら1人で落ちろ!」と思っていた、と話してくれた。
同時に、俺達の事を心配してくれたが、侯爵家に知り合いが居るから大丈夫だと伝えると安心したのか、笑顔で去って行った。
「レキ、相変わらずエグい対応ね。」
「命があるだけマシだろ?」
「……そうね。」
この後、この村の教会に行って創造神リアーシアに聞いてみたら、昔、あの「力」を悪用されて世界が危ない時が有って、それ以降は男性召喚士が生まれない様にしたらしい。
それで、俺が出来たのは、俺の魂が異世界の魂だからだと言われた。
「……召喚士が、数百年以上掛けて取り組んできた事を、ほんの数分で分かるなんて……」
「まあ、御愁傷様です。」
「……誰も信じないでしょうねぇ。」
「確かにそうだな。」
「頭の怪しい人扱いで追放でしょうね。」
「そうよねぇ。」
「それで、今、俺達は何処に向かっているんだ?」
「娘のセシルの所よ。レキ君達に、可愛い我が娘セシルを紹介したいからね。」
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