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馬鹿にしていますの?

道化を演じるのは、男性だけとは限らない。

 3泊して、旨い料理を充分に堪能した後、アラベスタを出発して次の目的地の都市「ガダルダ」を目指した。

 1泊夜営して、帰りにまた寄って行こうと話していると、目的地の都市「ガダルダ」に到着した。


 馬車を預けられる宿屋を見つけて、今日は宿屋でのんびりして、明日からちょっと頑張る予定だ。

 宿屋「飛竜の微睡(まどろ)み亭」の長男ジャスから聞いたのだが、この都市ガダルダには、近くにダンジョンがあるらしい。

 しかも、結構良い「槍」がダンジョンで手に入ると聞いたから行ってみようと思う。

 ヒナやリンも賛成だ。


 翌日、朝食を頂いた後、情報収集も兼ねて冒険者ギルドに行ってみた。


「次は誰があの『槍』を手に入れるんだ。」

「Aランクパーティーの『紺碧腕(こんぺきかいな)』じゃないか。」

「いやいや。Aランクパーティーの『金剛鎧(こんごがい)』だ。」

「お前らの目は節穴か。Aランク間近の女性パーティーの麗しの『蓮花(れんか)』だ。」

「お前達。Aランクの孤高の戦士の『餓狼のダグラス』を忘れてないか?」

「いや、しかな……」

「そうだとしても……」


 何か、盛り上がっているな。

 この冒険者ギルドでは、次は誰が噂の「槍」を手に入れるかで賑わっているようで。


 とりあえず、俺達は、受付嬢にこの都市の注意事項や、例のダンジョンや「槍」について聞いた。

 注意事項としては、この都市を治める領主は良い方だが、次男の「ベランザ」と長女の「レフィーラ」が争っているらしく、冒険者ギルドとしては中立を(たも)つが、心情的には次男を推しているらしい。

 どうやら、長女はかなりお転婆で周りに無理強いしているらしいな。


 次にダンジョンだが、この都市から西に徒歩で20分進むと、森が有って、更に、その森を進むと例のダンジョンが有るとの事だ。


 そして、例の「槍」だが、そのダンジョンの20階層のボスを倒すと宝箱から出るらしい。

 しかし、そのボスが強くて、未だに手に入れた冒険者は1人しかいない為に「次は誰だ?」で盛り上がっていた。


 そんな中、冒険者ギルドに2組が入って来た。

 そう、2組が!


「3日後、ボク達はダンジョンに潜る! 同行を希望する者は居るか?」

「3日後、私達はダンジョンに潜るわ! 同行を希望する者は居るかしら?」


 こそっと受付嬢が教えてくれた、

 あの2組が、「()」の次男と長女だと。

 2人の服装は、貴族の服装だから、今日は勧誘だけだと思うが、こんな時間に来ても、優良物件(まとも)な冒険者は居ないぞ、普通は。


「居ないみたいだな。」

「居ないみたいね。」

「受付嬢、募集を貼り出しておいてくれ。」

「畏まりました。」

「受付嬢、募集を貼り出しておいてくれる。」

「承知しました。」


 そして、何時もの癖なんだろうなぁ。

 次男のベランザが先に帰り、次に長女のレフィーラが帰ろうとした時、不意に俺達と目が合った様な感じがしたが、気の所為(せい)じゃなかった。

 ツカツカと育ちが分かる優雅な仕草で俺達に向かって歩いて来て、侍女の「お嬢様!」の制止の声を無視して俺達の前に立った。


「貴女、黒猫人族よね?」

「は、はい。」

「気に入ったわ! 私と共に来なさい!」

「お断りします。」

「何故ですの!」

「私には、仕える方が既に居ます。」

「……なるほど、奴隷紋ね。貴女の主は何処かしら?」


 まあ、俺が出ないとな。


「俺が主人だ。」

「……貴方が?」

「そうだ。」


 都市だから、最低でも伯爵令嬢、最高で公爵令嬢のお嬢様であるレフィーラ嬢の顔が歪んだ。


「貴方、恥ずかしくないのかしら? 幻とまで言われている黒猫人族を奴隷にしている自覚があるのかしら?」


 ……う~ん。

 言い方から、「貴重な稀少種を使い潰すつもりか?」的な意味だろうな。

 レフィーラは、王都のオークションでの事は知らないみたいだな。


「……そう。」


 返答を考えている間に、自己解釈したみたいだ。


「払うわ。幾らかしら?」


 そう来たか。

 それなら……


「最低でも、白金貨600枚。」

「……え?」


 当然だろう。

 オークションの競売代金が白金貨300枚で、諸経費に、本当にリンを手放した場合の損失に、リンと同等かそれ以上を手に入れる為の費用。


「最低でも、白金貨600枚。」

「馬鹿にしていますの?」

「全然。奴隷を売る場合は、倍であってもまだ良心的な方だと思うが。」

「……貴女は、奴隷だから従っているのでしょう!」


 矛先を変えたな。


「リン、命令だ。正直に答えろ。」

「はい、ご主人様。」

「それで、どうなの?」

「奴隷の身分であろうとも、私は、誇り高き『黒猫人族』よ。だから、自身の誇りに賭けて付き従うと誓ったわ。」

「分かったわ。貴方、名前は?」

「レキウスだ。」

「そう、レキウスと言うのね。覚えておく……わ?」

「どうした?」

「レキ……ウス、レキウス! あの単独でドラゴン討伐を成し遂げたあの『竜勇者(ドラグブレイヴァー)』!」

「あ、ああ。」

「……私にも運が……。この好機を……。これなら……。」


 上手く聞き取れないが、何かブツブツ言っている。


「レキウス様、少し時間はよろしいかしら?」

「は、はい。」


 急にレフィーラ嬢が、我が儘お嬢様から、誇り高き貴族令嬢に変わって、つい返事を返してしまった。

 そして、レフィーラ嬢は、手際よくギルドの冒険者用の応接室を借りると、俺達を連れて行った。


 部屋に入ると、レフィーラ嬢が改めて挨拶をした。


「改めて自己紹介をさせて頂きます。私はこの都市の領主ファセラ=イルナ=ガダルガ侯爵が長女レフィーラ=イルナ=ガダルガでございます。」

「レフィーラお嬢様の専属侍女のマルセでございます。」


 向こうがきちんと挨拶するのなら、此方もきちんと挨拶しないといけないな。


「レキウス=フォン=レイロード子爵だ。そして、Cランク冒険者で、冒険者パーティーの、星屑の絆のリーダーをやっている。」

「ヒナセーレ=レイディアです。星屑の絆のメンバーで、Cランク冒険者よ。」

「同じく、Cランク冒険者のリンです。」


 自己紹介が終わって席に着くと、侍女のマルセが、全員分の紅茶を出した。

 俺は、最初に一口飲んだ。


「ありがとうございます、レキウス様。」


 俺が最初に飲んだ事で、意味としては「貴女の事を信用します。」になる。


「話したい事があるのだろう?」

「はい。実は、次兄のベランザは、長兄のベラルドの地位を狙っています。」



暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。

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