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先手は譲るよ。

次女のユリシズ(7才)は、本当に何も知らされていない為に、レキ達が一緒に遊んでくれて喜んでいます。

 空き時間を、詳しい事は聞かされていない領主の次女ユリシズ(7才)と遊んだり雑談をしていると、召集した冒険者達が到着して冒険者ギルドに居るから来て欲しいと言われて一緒に行く事にした。


 冒険者ギルドに入ると、まあ、ピリピリしてるわな。

 この町の存続が掛かっているからな。


 そして、冒険者パーティーのリーダーが収集され、2階の大応接室に通された。


「危険を承知の上で良く集まってくれた。オレは、この町の冒険者ギルドのギルドマスターだ。」


 此処のギルドマスターは、深く頭を下げて感謝の言葉を集まった全員に発した。


「それは構わない。コレは謂わば、冒険者が背負う唯一の義務みたいなもんだからな。」

「そうだな。高位冒険者なら尚更だ。」

「私達も馬鹿じゃないんだから、来た以上は万が一を覚悟しているわよ。」

「もう1度言う。感謝する。」


 ギルドマスターが、そう言うと、後ろに控えていた秘書風美女が前に出た。


「それでは、説明をさせて頂きます。」


 ギルドの調べでは、推定でゴブリンが400匹、オークが90匹、オーガが18匹との報告が来た事と、推測になるが、実際に動き始めるのが今日の午後2時頃で、この町に到着するのは午後2時半過ぎぐらいだと話した。

 ……ちょっと増えているな。


「唯一の救いは、ゴブリン以外のオークとオーガの数が、少ない事くらいか。」

「そうだな。それなら、ゴブリンの相手はこの町の冒険者が対応して、オークやオーガはオレ達がすれば問題無いだろうと思うが、どうだ?」

「賛成だ。」

「それで構わない。」

「私も賛成だね。」

「君達がそれで良いのなら、それでお願いしたい。」


 俺が、思っていた以上に綺麗に話が纏まったな、と思っていたら話の主導権を握っていた冒険者が、空気を変えた。


「さて。此処に居る以上は、部外者じゃないだろうが、この2人は誰なのか説明して貰おうか。」


 あ、俺達か。


「私は、この町の領主であるラーキ=スータ=アスカロカ男爵で、隣に居るのが……」

「ちょっと待て。まさか、隣に居るのが息子で、今回のスタンピードに参加させたいとか言わねえよな?」

「それは止めた方が良いな。オレ達も子守りが出来る程の余裕は無い。」

「私も子守りは遠慮させて貰うよ。」

「大丈夫だ。先ずは、この者は私の息子では無い。

 私からスタンピードの殲滅に参加する様にお願いした冒険者だ。」

「こんなガキにか!」

「実力は保証する。彼は『竜勇者(ドラグブレイヴァー)』だ。」


 集まった冒険者達は騒然とした後、話の主導権を握っていた冒険者が聞いてきた。


「お前が、竜勇者(ドラグブレイヴァー)か?」

「そうだ。」

「出鱈目を言うじゃねえ!」

「何故だ?」

竜勇者(ドラグブレイヴァー)は、単独でドラゴン討伐を成し遂げた冒険者だ。それが、こんなガキであるものか!」

「なあ、その情報はきちんと自分達で調べたのか?」


 冒険者は、俺を殺しかけない顔で睨んで言った。


「どういう事だ?」

「ドラゴン討伐を成し遂げた場所はきちんと確認を取ったのか、と思ってな。」

「当然、確認した。」

「なら、その場所は?」

「それは、王都にある学園だ。」

「正確には?」

「王立学園だ。」

「きちんと調べているのに、俺の外見で判断するのか?」

「てめぇ、何が言いたいんだ?」

「そもそも、『王立学園』とは何だ?」

「あっ!」


 冒険者のお姉さんは気付いた様だな。


「王都にある学園『王立学園』は、国が設立した貴族(・・)の令息令嬢が通う学園だ。つまりは、俺ぐらいの『子供(・・)』が通っている。当然、俺も学生として通っていた。」

「……」

「後、学園の教師が本当は討伐したんだ、とかそんな馬鹿な事を言うなよ。」

「何故だ?」

「あの学園に通う子供は殆どが貴族の子供だ。それなのに、その子供を無視してまで、ドラゴン討伐に挑む馬鹿な教師は居ない。」

「……く。」

「……と、口で言って収まる訳は無いだろうから、練武場に行こうか。」

「……ああ。」


 どうせ、「それなら、その実力を確かめさせろ!」とか、言ってくるだろうしな。


 俺達は練武場に移動した。

 俺の対戦相手は、ギルドマスターだ。

 ギルドマスターも、流石にガキとはいえ、既に1つの貴族の当主である俺がスタンピードで死ぬのは、自分の命が危ないと思ったみたいで、ギルドマスターから対戦相手を名乗り出た。


「……対戦の規則は以上だ。それで良いか?」

「ああ。」


 武器は己の肉体か、模擬戦用の武器で、魔法は身体強化系のみで、勝敗は、審判の判断か、どちらかが、戦えなくなった時に決まる、となった。


「準備は良いですね? ……始め!」

「先手は譲るよ。」

「どう、も!」


 キン! ガッ! ゴン! バキッ! ギギン!


 一進一退の見応え充分な戦いを繰り広げているが、当然と言えば当然だ。

 お互いに手加減しているのだからな。

 なんせ、後、数時間後にはスタンピードが発生するのだから。


 ……ただ、お互いに自身の力を証明しなければならない。


 ギルドマスターは、子供相手に悪い意味で手を抜いていない事を証明する為に。

 俺は、竜勇者(ドラグブレイヴァー)と呼ばれるだけの実力を持っている事を証明する為に。


 そして、そんな模擬戦が10分もすれば周りは静かになっていた所で、ギルドマスターが審判役に目線を送る。


「模擬戦、止め! 勝敗は引き分けとします。」


 周りからは称賛の言葉と拍手が送られ、先程の会議で主導権を握っていた冒険者も不機嫌そうにこう言った。


「とりあえず、足手まといにはならないみたいだな。」



暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。

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