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もう1度だけ、振る機会を!

少しキナ臭い空気が……

 俺達は、翌日の昼前に王都に到着した。

 最初は、手紙にしようかと思ったが、直接の方が早いし良いかな、と思って王都のライロード公爵家に緊急という事でアポ無しで行ったら、今、ライロード公爵は王城に行っていると、アポ無し訪問を許して貰った上に丁寧に対応して貰った。

 対応した執事に、アポ無しの無礼のお詫びと、ライロード公爵の行き先を教えて貰ったお礼に大金貨1枚を渡して、皆さんで使ってくださいと渡した。


 その後、俺達は王城に行き、アリウスに会いに行った。

 ヒナ達は、別室で待機だ。

 ヤエは、俺の服の中に隠れている。

 興奮した口調で何か言っているが、上手く聞き取れないから無視している。


 待つ事1時間後には、アリウスとライロード公爵に面会が出来た。

 こんな無茶を聞いてくれるアリウスと、ライロード公爵には感謝だな。


「どうした、レキウス。」

「ああ。ちょっと、な。」

「分かった。皆の者、全員(・・)下がれ。」


 アリウスがそう言うと、侍女だけでなく隣の部屋や天井からも人の気配が移動した。


 別に不満は無いな。

 客観的に見れば、俺は、冒険者をやっている成り上がりの新人貴族で、アリウスは、この国の上位の王位継承権を持つ王族だ。

 隠れて見る者、聞く者が居るのが当たり前だ。


「影も下げさせるなんて、何が有った?」

「推測が当たった場合は笑えない内容だからな。」


 俺はそう言って、氷漬けを全て出す。


「我が国のザナルザンドの近くの森の奥で発見した。」

「……なるほどな。確かに、推測が当たっていた場合は、笑えないな。」

「それに、コレは喰い千切れたモノだ。」

「ああ。しかも、数日間でキングになったキメラ付きで、発見した。ソレは恐らくは制御に失敗した結果だな。」

「なっ!? 分かった。今日中に、国王陛下には内密に話しておこう。」

「アリウス殿下、その時は私も同席しよう。」

「ライロード公爵、よろしく頼む。」

「アリウス、推測が当たっていた場合は、俺では対応出来ないからな。」

「分かっている。」


 アリウスは自前のマジックポーチに氷漬けを全て仕舞い、ライロード公爵は退室して、改めて侍女達を呼んで、折角来たのだからとアリウスは、俺達の冒険の話や民達の生活等を聞いて来た。

 そして、アリウスの一言。


「短剣を持たせて良かった。」


 ……ちょっと、解せぬ。

 まあ、感謝しているけどな。


 そして、何処からか聞いたのか、シャーロットが乱入した。

 しかも、ヒナ達込みで。

 しかし、この後、シャーロットが過去に類を見ない程の不幸が襲った。

 しかも、俺達の手に因って。


「……うう。そんな!」

「すまない、シャーロット。」

「ごめんなさい、シャーロット王女殿下。」

「申し訳ありません、シャーロット王女殿下。」

「シャーロット。辛い現実だが、お前は受け入れるしかないんだ。」

「私は、皆さんを信じていたのに!」

「残念だが、この件で、『(じょう)』を挟む事は無い。」

「……うう。」


 アリウスも含む、俺達全員からの冷たい返事に、シャーロットは泣き崩れた。


「……私が作った『人生ゲーム』で、まさか、私が黒金貨30枚の借金で負けるなんて!」


 そう!

 密かにシャーロットは、自前の人生ゲームを制作していて、満を持して持って来たのだ!


 ……まあ、結果は見事に玉砕だが。

 因みに、黒金貨30枚は、日本円にして約300億円だ!


「さあ! シャーロットよ、サイコロを転がすのだ!」

「……はい。うう……。」


 そして、シャーロットが用意した、シャーロットが考えた罰ゲームを、シャーロットが受ける事になった。


 1の目は、王城大広間で独りダンス。(曲と相手無し。)

 2の目は、王族教育係からの座学や礼儀作法からダンスまでのフルコース6時間耐久。

 3の目は、礼儀作法に於いて、国で1番厳しいと有名な王妃とのお茶会と言う名の(しつけ)講習。

 4の目は、国で最も健康に良いが、国で1番不味いと他国にも名を馳せた野菜ジュースの一気飲み。

 5の目は、自分の父親の前で、その父親の良い所を40以上を伝える。

 6の目は、自分の恥ずかしい秘密を暴露。


 ……と、なっているが、心理的には「5の目」だけは引きたくないな。

 俺の場合は、まだ「6の目」は、ヒナが居るから誤魔化せるからな。


「い、いき、いきますわ、よ……」


 からから~ん


 ……出た目は、「4」だ!


「……そんな! アリウスお兄様、お願いいたします。

 もう1度だけ、振る機会を!」

「シャーロット、頑張れ。」

「ぃやああああああーーーーーー!」


 そんなに嫌なら入れなければ良かったのに。

 自分が作ったから負ける事は無いと思ったのだろうか。

 認めたくないだろうなぁ。

 若さ故の過ちは。


 そして、アリウスは嬉々として、侍女に取りに行かせた。


「アリウス。」

「何だ、レキウス。」

「ちょっと過剰反応だが、何かあったのか?」

「まあ、簡単に言えば、当時お転婆だったシャーロットのお仕置き用に開発されたのが最初なんだ。」

「……そうか。」

「シャーロット。ほんの少しだけ救いになる事を教えてあげるよ。」

「それはなんですの、レキウス様。」

「飲む直前まで、可能な限り口の中、特に舌を冷すんだ。」

「……それで、冷せばどうなりますの?」

「味を感じる機能が低下する。そうすれば、ほんの少しでも苦味は薄らぐ筈だ。」

「……分かりましたわ。」


 俺はコレで、前世では青汁(栄養素優先の苦いヤツ)を胃の中に流せる様になった。

 ……飲める様になったとは言ってないからな。


「レキ。そういえば昔はそうだっね。」

「まあな。だけど、ヒナが普通に飲んだのを見た時は裏切られた気分だったぞ。」

「……そう?」

「ああ。」


 そして、侍女が帰って来た。

 シャーロット的には、今回だけは帰って来て欲しくなかっただろうなぁ。


「さあ! シャーロットよ、飲め!」

「お兄様の鬼畜。」

「ほら、氷だ。」

「……はい。」


 3分後


「いひまひゅ。」


 シャーロット、限界まで舌を冷したから呂律が回っていないみたいだな。


「……ご、ご、ご、ご、ご!」

「シャーロット! 見事に飲み干したぞ!」

「……は、はい……!? んきゅううううううううううううーーー!?」

「アリウス?」

「……あの野菜ジュースの怖い所はな、飲んだ後にもう1度来る所なんだ。」

「……そうか。」



暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。



勿論、ゲーム内での借金なので、現実に借金が出来た訳ではありません。

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