……横に居る彼か?
勇気を振り絞った告白も……
あ~。
まさか、身バレするとはな~。
クラスには居なかったから、Bクラスかな?
「という事は、隣に居るのがヒナセーレ様?」
「はい、そうです。」
「きゃあ! 平民でありながら、王立学園の入試で10位以内に入る才媛にして、私達の憧れの『氷姫』に会えるなんて!」
「私、そんな風に言われていたの?」
「はい。普段は、冬の厳しさを体現する様な雰囲気を持ちながらも、レキウス様と居る時だけは、春の陽射しの様な表情をされていて、私達の鼓動が速くなったものですわ!」
「……もう良いですから。」
ヒナ、撃沈。
「……でも、それだと子爵位と平民では……」
答えても良いけど、ちょっと貴族的な牽制も入れておくか。
隣の領地だしな。
「その辺りは大丈夫です。ライロード公爵家令嬢のフローラ嬢とは懇意にお付き合いをしていますから。婚姻に必要な貴族籍くらいはどうとでもなります。」
「そう言えばそうでしたね。いつも、フローラ様とご一緒でしたわね。」
「リリーアナ。この機にお友達になって貰いなさい。」
「はい。」
あ!
向こうも子爵家夫人として動いた。
意訳は……
「平民とはいえ、ライロード公爵家と繋がりのある娘で、しかも侯爵級の領地を持ち、更に、レイロード辺境伯とも繋がる俺や婚約者のヒナと仲良くなって、ライロード公爵家との橋渡しになりなさい。」
って所かな。
しかも、ユリアーナさんとしても、俺とも領主としての繋がりで仲良くしようと思っているみたいだな。
冒険者の俺達にきちんとした対応をしてくれたし、領主としての俺にとっても、仲良くなるのは悪くないな。
「そういう訳で、ユリアーナさん。今後も、よろしくお願いします。」
「ええ、此方こそ。」
そして、貴族お気に入りの室内遊戯「人生ゲーム」で、俺達は盛り上がった。
因みに、ぶっち切りの優勝がヒナで、2位がリンで、3位が俺で、最下位がリリーアナだ。
……ユリアーナさんは、賢く不参加だ。
「此処でもAクラスに勝てませんの~!」
そして、夕食後のデザートの時に、何も知らない次男がヒナにナンパを仕掛けた。
「長男は留学中で不在で、次男はいずれ長男が私の後を継いだ時に長男の補佐をして欲しいと思って私の補佐をさせている。」
「初めまして。紹介されました次男の『アローズ=チリン=ザナルザンド』です。よろしくお願いします。」
「冒険者のレキウスだ。」
「同じくヒナセーレです。」
「同じくリンです。」
「ハクガだ。」
「セイルだ。」
「シュナよ。」
「クロードじゃ。」
「……あの、ヒナセーレさん。」
「はい、何でしょうか?」
「貴女は、今、冒険者をやっていますが、将来は安全で安心出来て裕福な生活をしたいと思いませんか?
良ければ、ボクにそんな生活を貴女に提供したい。ボクと共に歩んで欲しい。」
「アローズお兄様!」
「アローズ!」
「まあ、アローズったら!」
「お断りします。」
「何故だ! ボクと共に歩んでくれれば、冒険者がする危険な仕事をしなくて良いんだぞ!」
「私には既に決まった方が居ますから。」
「……横に居る彼か?」
「はい。」
「彼も同じ冒険者なんだろう? 何時、死ぬか分からない!
そんな不明瞭な未来しか無い。それでも彼を選ぶのか!」
「はい。」
「アローズ、止めなさい。」
「お母様、何故ですか!」
「ヒナセーレさんは、レキウス様の婚約者です。」
「……え!?」
「レキウス様、よろしいでしょうか?」
「ああ。」
ユリアーナさんのこの確認は、俺の素性を話しても良いかという確認だ。
「アローズ。レキウス様は、レイフィリアの領主で子爵位をお持ちです。貴族の裕福な生活なら、貴方以上をレキウス様は用意出来ます。」
「……そんな。」
「それに、レキウスと言う名前に覚えがありませんか?」
「ユリアーナ、どういう事だ?」
「夫、覚えていませんか? 王立学園を襲ったドラゴンの事を。」
「そういえば聞いた事がある。王立学園を襲ったドラゴンを学生が1人で討伐したと。名前がレキウス……まさか!」
「ええ、そうよ。彼が1人でドラゴンを討伐したレキウス=フォン=レイロード様よ。」
「……そんな。」
「そうだったのか。だから、部屋を最上位にしろ、と指示を出したのだな、リリーよ。」
「はい。元々用意していた部屋も冒険者に使って頂く部屋としては上等な部屋だと思いますが、お父様と同じ子爵位をお持ちになる貴族に使って頂く部屋としては良くないので、独断ではありますが、部屋の変更を指示しました。」
「その判断は正しい。良くやったリリーよ。」
「ありがとうございます、お父様。」
「そう言う訳よ、アローズ。」
「……分かりました。それではボクは失礼させて貰います。」
「アローズ、残念だったわね。」
「……」
そして、アローズが退室した後、静かな空気を壊す一言が出た。
「しかし、リリーよ。何故、私にまで黙っていた?」
「その方が面白いと思って。」
「そうか。それでは私に黙っていた罰を与える所だが、部屋の変更した事へのご褒美とで、差し引きで無しだ。」
「あ、お父様、ズルいわ!」
「何を言う。リリーが私にも黙っているのが悪いのだろうが!」
「だって……」
そんな感じで最後は楽しい時間となり、夕食は終わった。
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