ヒナセーレさんは、満足しているのですか?
イケメン、死すべし!(笑)
歓迎会を兼ねた食事会が終了した後、旅の疲れを取る為にどうぞ、という感じで領主館に泊まって頂く事になったのだが、神殿の新しい司祭ナリムの従者として来たザージルがヤラカシタ。
事もあろうに、俺のヒナを口説いたのだ。
しかも、大人の関係になろう、と。
ヒナside
「……ふう。やっぱり、形式的な食事は疲れるわね。」
コンコンコンコン
「あら。正しいノック数だけど誰かしら?」
私は上着を肩に掛けて扉の前に行き誰何する。
「誰?」
「ザージルです。夜分遅く、失礼かと思いましたが、どうしても相談したい事がありまして……」
「……どうぞ。」
「ありがとうございます。」
怪しいとは思ったけど、新しく来た司祭の従者だから無視も出来ないから部屋に入れた。
「ヒナセーレさん。入室の許可を頂きありがとうございます。」
「それで、相談とは何でしょうか? 何故、領主であるレキウスではなく、私の所へ?」
「はい。ヒナセーレさんは、満足しているのですか?」
「何を、ですか?」
「貴女は、子爵夫人程度に収まる器量ではありません。」
「……はい!?」
「まだ、内々と言う事は、貴女のご両親は迷っているのではないのですか? もしくは、何か弱味を握られているのですか?」
「……ええ、と?」
「大丈夫です。心配する必要はありません。私が付いています。神殿を通じてヒナセーレさんを守る事が出来ます。私自身も貴女に惹かれ始めている。私は貴女を守りたい。どうか、私の言葉を聞いて頂けますか?」
「……」
「ヒナセーレさん。迷わなくても大丈夫ですよ。」
「その言葉は本気……ですか?」
「はい。」
……はぁ。
聖職の服を着た「ホスト」だわ。
全く!
あの食事会で、「顔で選ばれたのですか?」と思わず言いそうになったのを我慢したけど、我慢するんじゃなかったわね。
しかし、私が居る場所にはレキが居る。
つまり、レキが居る場所にはあの「4人」が居る。
まあ、このストレスは後で全力ビンタで良いとして、私を甘い言葉と顔だけで堕とせると軽く見ているコイツの鼻をへし折るか。
しかも、もう堕とした気でいるのか、私の顔に近付いているし、さりげなく肩に手を置いているわ。
「ヒナセーレさん……」
とりあえず、ガード代わりに氷の盾を顔の前に出してと。
「……冷たい?」
「酷い顔ね。」
「ヒナセーレさん。コレはどういう事ですか?」
「お前に言われたくないわ!」
「……え!?」
「それに、私がお前程度に堕ちる訳ないでしょう。」
「なっ!」
「お前、気付かなかったの?」
「何をだ?」
「私、平民よ。」
「馬鹿な!?」
「お前に信じて貰う必要は無いわ。」
「……ふん!まあ、良いか。出来れば甘い夢を見させてやろうかと思ったが、予定変更だな。ヤった事実で話を進ませるか。」
「そう上手く行くかしら?」
「はん! 小娘が何を言っている。」
「……レキ。もう良いわよ。」
「ボクを脅かして、その隙に逃げようとしても無駄だ。」
「逃げる必要は無いけど、この館の主にして、私の将来の旦那様の顔を立てないとね。」
「ヒナ。そんな事を言っているけど、単純にこの馬鹿に触れたく無いだけだろう?」
「え!」
「……バレた?」
「何年一緒に居ると思っているんだ?」
「ん~。20年以上?」
「お前達は何を言って……ぐはっ!」
動揺している隙を突いて一気に距離を縮めてからの腹パンをザージルに入れた。
「はい、お休み。」
「お疲れ様、レキ。」
「ヒナ、大丈夫か?」
「ええ、大丈夫よ。」
「ヒナ、後は任せておけ。」
「お願いするわね。」
「ヒナ、愛している。」
「私もよ。」
そして、レキとキスをした。
レキside
何も知らずにザージルは、メイド(奴隷)にヒナの部屋の位置を聞いたみたいだ。
メイド達には、ヒナの部屋を聞く人が居たら俺に伝える様に言ってある。
しかも、ハクガ達が寝ずの番をしている。
文字通りの神の眼と鼻と耳から隠せる訳もなく、ハクガが風を通してヒナと馬鹿の会話をライブ中継している。
そして、ヒナのお許しが出たから部屋に入った後、腹に一発おみまいし、言葉の上では心を乱す事を言ってたから、きちんと意思表示をした。
「ヒナ、愛している。」
「私もよ。」
さて。
ザージルを地下の訓練所に連れて行き、「お話」をしたが、どうやら単独犯行みたいで、裏で騙した女性からのお金で豪遊する為にいつもしているそうだ。
それなら、コイツは明日の朝まで訓練所に寝てて貰うとして、後、訓練所に匂いが籠るのは嫌だから、鉄錆びの匂いがする赤い液体と、アンモニア臭がする液体を洗浄で消して、と。
おやすみなさい。
翌朝、朝食が済んだ後に、ザージルの事を話して神殿からザージルの神官の籍を消して貰って一般人として扱い、鉱山への労働者になって貰った。
いや、ラノベに限らず、漫画にアニメで、こういう奴を解放したら、必ずと言っていいくらいに、後で話をかき乱すじゃん。
こんな風に……
「折角、あの女を騙して豪遊する筈だったのに……」
「お前もあいつに恨みでもあるのか?」
「誰だ?」
「オレの事は良い。それより、オレはお前の味方だ。」
「何が狙いだ?」
「いや、あいつの恨みを晴らすのなら、オレも手を貸してやるぞ。」
「本当か?」
「ああ。それに、どうせなら、派手にしないか?」
「……分かった。どうすれば良い?」
「それはな……」
と、こんな風にな。
だから、領主権限で鉱山送りにした。
それに何よりも、ヒナに汚い手で触れたあいつを俺が楽にする訳ないだろ?
神殿との面倒臭い手続きで2週間掛かったが、無事にザージルを鉱山に送る事が出来た。
鉱山で稼ぐ金は全て被害に遭った女性に送られる様にしたし、王都の司教にも借りが出来た事で良しとした。
さあ!
今度こそ、冒険だー!
「助けてください!」
暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。
勿論、連行する時に、気絶する程のビンタをヒナはザージルにおみまいしました。
不必要な文字を一字消した序でに一言。
外国の標準的なマナーとして、ノック2回はトイレの「使用中」の確認で、ノック4回は「入室許可」の確認らしいです。




