閑話~リース&アンズ
2人目の言い方が無茶苦茶なのは、まだ本人が混乱しているからです。
作中で起こった事は創作であり、フィクションです。
リースside
私は、誇り高き黒猫人族のリースで、私の父は最強の戦士だ。
そして、母は族長の姉で、そんな2人を両親に持つ。
だから、いずれは、父の最強の戦士の後継になりたいと思って毎日を族長の娘で幼馴染みのリンや、最高の知識人を父に持つもう1人のお馴染みのケンと日々鍛錬に勤しんでいる。
父に1人前と認められた時は、保留にしていたフーガの番の申し出の答えを返そうと思う。
子供は、やっぱり息子1人に娘2人かな。
そんな幸せな未来を考えながら、リンの誕生日を迎えた。
だけど、そんな幸せな夢は無惨にも散らされた。
人族の襲撃者に、両親を、友人を殺された。
他の仲間もだ!
こういう時の対処は決めていた。
だから、私は尻尾を引っ張られる思いをしながら逃げた。
武器も持たずに逃げたから、現れるモンスターから殆ど逃げるしかなかった。
リンやリンの両親は逃げれたのだろうか?
食事や睡眠がまともに取れない中、彷徨い歩いていると、人族かオークか分からない者が周りの人族に命令をしていた。
命令の内容は、私の捕縛だ。
私は必死に抵抗したが、落ちた体力ではどうにもならず、結局は捕まってしまった。
そして、一際大きい家に連れられた私は、この人族かオークか分からない者に番を強要された。
誰がお前の様な者と番になるものか!
私の番はフーガだけだ!
私の徹底した反抗に業を煮やしたあいつは、獣人族の誇りである耳と尻尾を切った!
……例え、この後、何もされずに解放され、フーガの下に行けたとしても、耳と尻尾の無い私はフーガの番になれない。
………………もう良い。
全ての希望や未来を喪った。
私には生きる理由が無くなった……
そんな私を見て、あいつは私に何もせずに何処かに連れて行き、冷たい鉄の首輪を填めた。
そして、日が差さない地下に入れられた。
耳と尻尾を失った私にはお似合いかもしれないな。
……いつも聞いていた声が聞こえる。
耳を失ったから良く聞こえないけど、とても大切な人の声だった気がする。
そして、誰かが、私の前に来ると何かを言った瞬間に、濃霧の中に居る様な不明瞭だった感覚が戻った。
「耳も尻尾も元に戻ったわ! 帰って来てリース!」
「……リン!」
「お帰りなさい、リース。」
「……え、リン!?」
「そうよ、リンよ!」
「……リン。貴女も捕まったの?」
「リース、違うわ。あのね……」
リンの説明から、家族や仲間を喪い、奴隷である事以外は変わらない日々を送れる事は分かった。
そして、奴隷であるリンのご主人様は馬鹿げた存在で、視界に入れば「死」以外の未来が無いドラゴン相手にたった1人で戦いを挑み、無傷で勝てる強さを持つ人族の子供らしい。
そんな馬鹿げた存在がご主人様だと、リンはいつ死んでも不自然じゃない毎日を送っているかと思っていたら、戦う力を貰い、生きる知識を授かり、緊張感は有っても死ぬ事も無く、毎日、美味しい料理を食べていて、今、幸せだとリンは笑顔で話してくれた。
そして、レキウス、いや、レキウス「様」か。
一応は奴隷となった私のご主人でもあるから、「様」を付けないと、リンが凄く怖い顔で怒るから、「様」を付けて呼ぶ事にしている。
そのレキウス様が、召喚した4つの高次元の存在にはビックリして、耳と尻尾が総毛立った!
特に、ビャッコと呼ばれたハクガ様を見た時は、まるで神に出会ったかの様な畏怖を抱いた。
リンの話しでは、本当に高次元の存在で、私達と近しい存在の神らしい。
……本能で察した何かは本物だったという事か。
私はレキウス様が治める地にある森に送られる事になった。
そこには、生き残りの黒猫人族が居るからだ。
暫くはゆっくりした方が良いのかもしれないな。
……そして、耳と尻尾が戻った今、フーガの事もゆっくり考えよう。
???side
私には前世の記憶が有る。
前世での名前は「篠崎杏子」で今の名前も「アンズ」よ。
前世では、地球と言う星の日本と言う島国の民として生きていたわ。
前世の私は、前世の父の影響で山に関する全てが趣味で、ハイキングと言う山での散歩や、キャンプと言う小さい子共にやらせる様な夜営や、薬草や食べれる野草の研究を成人しても続けていた。
成人した後は、財閥と言う後ろ楯を持つ親会社と呼ばれる商会に入り、最初は事務員と言う名の文官をしていた。
私は、能力を認められ、最終的には代表取締役と言う地位に着任したわ。
この世界で言う商会長と言えるでしょうね。
そんなある日、私は趣味の1つである「猪狩り」に出ていた。
今の私の地位なら連絡1つで、幾らでも猪の肉を食べる事が出来るが、やはり、自分で狩りをした獲物は格別で、変わる事なく楽しみにしているわ。
そんな中、今回は同行者が居て、同じ会社の者3名が一緒で、最初は順調だったわ。
だけど、少し奥に入った時に、同行者3名は本性を現して来た。
事もあろうに、私に向かって猟銃を構えて発砲したのだ!
そして、不運にも私のお腹には赤い染みが広がり続けている。
「やった! これで俺達は出世街道だ!」
「ああ。これで俺達は勝ち組だな!」
「オレを馬鹿にしたあの女に思い知らせてやる!」
そんな声を聞きながら私は思った。
私を、裏切らない仲間が欲しい、と。
私が、裏切らない仲間が欲しい、と。
……信じられる誰かが居て欲しい、と。
そして、私は転生したわ。
しかも、異世界であるこの世界に!
そんな子供向けの創作物の登場人物に私がなるなんて!
学生の時に友人に薦められて幾つか読んだけど信じられないわ!
……だけど、やっぱり現実は甘く無いわね。
私は、上位貴族の令嬢じゃないし、有名な女冒険者じゃない、ただの村娘だもの。
しかも、私がある程度育ったら、奴隷にして金に変える気だと夜に話していたわ。
……冗談じゃないわ!
私のこの世界の両親は流行り病で亡くなって、今は伯父夫婦に世話になっているけど、そっちがその気なら私も覚悟を決めたわ。
私には前世の記憶が有る!
前世と同じ植物は無くても似た効果の植物は有る筈だわ!
そして、前世の技能を使えば、身寄りが無くても商会に入りさえすれば生きて行ける!
……毒殺は成功したけど、逃げるのに失敗して結局は奴隷になってしまったわ。
それに、私を途中から売りに出さずに、地下の部屋に放り込められ食事もなく、私を餓死させる気なの?
……誰かが来たわ。
私は死にたくない!
助けて!
暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。
タイトルでネタバレをしている、というお約束をしてみました。




