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面白い、買おう!

小物は潜り込むのが上手い者も居ます。

 俺と店主バルバスは地下に入り、多分だけど商品として売れない奴隷を置く場所があり、それは酷い有り様だった。

 そこを通り過ぎて1番奥の部屋に来た。

 すると、そこには黒髪黒目のリンより少し身長が高そうで耳が無い少女が居た。

 ……いや、良く見ると、頭に耳が有った痕跡が僅かにだが残っている。


「それで、あの奴隷は人族か?」

「いえ、獣人族です。」

「それなら何故、耳と尻尾が無い?」

「此処に来た時には既にありませんでした。」

「それで、お客様がお探しの黒猫の獣人族ですが……」

「やっぱり気付いていたか。」

「はい。お連れ様の奴隷を見れば。」

「寡黙は、上からは好かれる礼儀だ。」

「承知しております。」

「分かっているのなら良い。幾らだ?」

「はい。金貨1枚です。」

「買う以上は正規の値段で買おう。幾らだ?」

「ありがとうございます。お連れ様は王都のオークションで、黒金貨30枚で落札されました。しかし、この獣人族は象徴の耳と尻尾がありません。ですから、白金貨1枚です。」

「分かった。」


 そう言って、俺は白金貨2枚を渡す。


「あまりで、奴隷環から奴隷紋に。身嗜みを調えて、服と靴は奴隷に見えない物をあまりから引いて用意してくれ。お釣りは出さなくて良い。」

「畏まりました。」


 バルバスが答えると、少し離れていたスタッフが近寄りバルバスが耳打ちすると、スタッフが部屋に入り、おそらくリースだろう獣人族の少女を連れて、部屋の奥にある扉を開けて部屋を出ていった。


「準備に少しお時間を頂く事になります。お客様はこの後はどうされますか?」

「そうだな。改めて、ゆっくり奴隷達を見るとしよう。」

「畏まりました。」


 俺は改めて隣の部屋に居る、多分売れない奴隷達を見る。

 こういう時に、名前や称号だけでなく種族やスキルとかが、視れる万能な鑑定スキルがあればなぁ。

 この世界にもスキルに鑑定は有るけど、名前と称号しか視れないんだよなぁ。

 因みに、転生者は、称号にソレが出ない。

 理由は不明で、神様しか知らないと言われている。

 今度会ったら聞いてみよう。


 そんな事を考えていると……


『……助けて……』


 え!?

 日本語!


『お願い……助けて……』


 マジか!?


「店主、あの奴隷は?」

「家族を含めて複数の村人に対して、食事に毒を混入し食べた者達を毒殺した事で本来なら死刑ですが、まだ若い為に奴隷になった者です。しかも、たまに意味不明の何かを言う為に商品にならず。この部屋に置いております。」

「面白い、買おう!」

「よろしいのですか?」

「ああ。」

「畏まりました。」

「後、先程買った奴隷と同じ様にしてくれ。」

「承知しました。それと代金は無料でさせて頂きます。」 

「分かった。」


 この後は、来た時の逆順で奴隷を見たが、何かに引っ掛かる奴隷は居らず、ヒナ達と準備が調うまで待った。

 勿論、ヒナ達には簡単に説明して、2人目の奴隷を買った事を話した。


 暫く待っていると……


「お待たせしました。」


 店主のバルバスが部屋に入ってくると、綺麗な身なりをしているが、生気が無い様な状態で2人の奴隷が入って来た。


 そして、俺達は馬車に2人を乗せて領主館を目指した。


 領主館に到着した俺達に対して、衛兵達が迎撃体制を整えていた。

 ……少しは頭が回るみたいだな。

 それと、リンは馬車に乗ってから、リースに話し掛け続けたが、反応はするが、それ以上は無かった。

 もう1人の方は身体がガリガリだったから、とりあえず食べて貰おうと思ってセイユの芳ばしいオーク肉のステーキを出すと、10分くらいは何か葛藤し涎を垂らしながら我慢していたが、結局は食べた。

 まあ、食事が出来るならとりあえずは安心だ。


 ……さて、俺は警戒している衛兵を見て、また1週間の事務処理かなぁ、と思ったが、あの領主を赦す気は無いから頑張る事にした。


「何か有ったのか?」


 俺は、出来るだけ穏やかに聞いたが、返事は酷かった。


「ノコノコとやって来たな! あの者共を捕まえろ!」

「それなら、俺の身分を明かそう。」

「たかが、卑しい冒険者の、何が身分だ!」

「俺は、レキウス=フォン=レイロードで、レイフィリアの領主で子爵位だ。」

「何ぃ!」

「つまり、俺に対して害するなら、それは子爵位の俺に害するという事だ。」

「ええ~い! そんなの嘘に決まっている! 貴族を(かた)る犯罪者を捕らえろ!」

「誰が?」

「え!?」


 既に、以前と同じ方法で、セイルに因って衛兵は落としてある。


「同じ爵位の、同じく当主たる俺を害そうとした以上は、覚悟は出来ているのだろうな?」

「ふん! 貴様こそ、覚悟は出来ているのだろうな?」

「どういう意味だ?」

「儂の後ろには公爵家が付いている。その方にお願いすれば、貴様ら等、明日にでも全てを失うだろうよ。」

「その公爵家は何処の家だ?」

「良いだろう。最後の慈悲で教えてやろう。その公爵家は、ライロード公爵家だ!」

「……そんな!?」

「ふん! 流石に貴様の様なガキでも、ライロード公爵家は知っている様だな。今や、最も王都で権力を誇る方だからな。」

「……信じられない!」

「今更、後悔しても遅いわ!」


「……こんなクズを派閥に入れていたなんて!」


「なんだと!」

「レキ。あまりの小物で、ネコを被っていたから放っておいたんじゃない?」

「そうか!」

「貴様! どういう事だ?」

「気が付いていないのか、レイロードという家名に。俺の祖父とライロード前公爵様は近しい友人で、その繋がりは今も続いていて、俺自身もライロード公爵家とは良く交流をしている。」

「なっ!」

「さて。何度もお世話になったからライロード公爵の服に付いた(ホコリ)を落とすか。」



 その日の内に、内容を書いた手紙をライロード公爵家に送り、8日後には、俺への謝罪とゴミ掃除をした感謝の手紙と共に、新しい領主とその家族が来た。

 クズ領主をシメた後、内情を調べたら、裏帳簿は有るわ、国からの援助金は横領しているわ、人身売買もしていて黒かった。

 ……そして、流石に早すぎて伯爵位への昇爵は流れた。




 例の奴隷少女はやっぱり、リンの幼馴染みのリースだった。

 その日の内に耳と尻尾を再生したら、リースは「この人、誰?」というくらい喜んでいたが、念の為に静養している。

 もう1人は食事はするがそれ以外は大人しい。

 やっぱり、日本語で切っ掛けを作るか。


 俺達は、面倒臭い手続きも終わって、王都の屋敷に手紙を送った後、他の黒猫人族が居る我が領地のレイフィリアに向かっている。



暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。

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