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早かったわね?

ハクガは風の支配者たる白虎。

だから、急ぎの時は、風の抵抗を調整出来る。


 俺は、ゾフィーネさんに手紙の事を伝えて、直ぐに王国に向かった。

 セイルやシュナに乗って空から行く為に、一旦、森に入り、ハクガに頼み上空へ上昇してからセイルには俺とヒナ、シュナにはリンが乗って王都に向かった。


 王都が見えて来ると地上に降り、そこからは馬車で行くのだが、クロードが御者だとこういう急ぎは不向きな為、ハクガが御者をした。

 逆にこういう急ぎはハクガが向いている。


 そして、俺達は王都の貴族用の門を通り、リシュアの居る屋敷に向かい到着すると直ぐに、リシュアの部屋に通されたのは俺とヒナだけで、リン達は別室で控えている。

 多分、直ぐに俺達が通されたのは、あの時、俺の腕を切断されたのに、数分後には腕を生やしていたのをフローラとアリウスが見ていたから。

 そして、俺が復元再生の魔法を使える事を教えていたから、それで俺に手紙を送ったのだろう。


 部屋の中は、怪我が痛むのか、本人が嫌がっているのか、窓は閉めていて薄暗くなっている。

 そして、リシュアの頭や顔は包帯で巻かれていて、隙間から見える怪我の跡は痛ましかった。

 恐らくは、身体の方も酷い事になっているのだろう。


 俺達の存在に気付いたリシュアは、寝ている状態で俺の方に顔だけ向けて話した。


「早かったわね?」

「大切な従姉妹の大事(だいじ)に急がない理由は無いだろ?」

「そうよね。大事な従姉妹(・・・)だもんね。」

「あっ!」

「気付かれたみたいね。」

「……ごめんなさい。」

「謝れたくないわ。」

「どういう事だ、ヒナ。」

「私からは言えないの。」

「用が無いのなら、帰ってくれないかしら?」

「用なら有る。リシュアの怪我を治しに来た。」

「レキウス。貴方は私を馬鹿にしに来たの? 魔法に因る治療とポーションに因る治療でも、この程度しか治ってないのよ!」


 この世界の回復魔法は難しい部類に入る。

 だから、仮に神殿から神官とかが、派遣されても限度があるし、ポーションも同様だ。


「ああ、治せる。」

「ふざけないで!」


 俺のハッキリした言い方にリシュアが声を荒げると、部屋の隅に控えていたリシュアのお父さんであるタナスさんが俺の前に出て、質問した。


「レキウス君。本当に治せるのかい?」

「はい。」

「それならお願いだ! リシュアの怪我を少しでも治して欲しい! この通りだ!」

「私からもお願い! リシュアの怪我を治して!」


 そして、同じ様に俺の前に出たリシュアのお母さんのサナリスさんも、俺に懇願した。


「俺がリシュアを治すけど、条件が2つ。」

「治るのなら、構わない! 何でも良い! 条件を飲むから、リシュアを治して欲しい!」

「私も出来る事ならなんでもするわ。だから、お願い!」

「分かりました。俺から出す条件は、怪我の治療方法と誰が治したかを秘匿する事が1つ。」

「そんな事で良いのかい? 情報の秘匿は当たり前だけど、本当にそれで良いのかい?」

「はい。」

「それでレキウス君。もう1つは何?」

「また、手作りのアップルパイをご馳走してください。」

「レキウス君ったら……。 分かったわ。今度、心を込めてご馳走するわね。」

「それじゃあ。リシュアの怪我を治すか。」

「本当に治るの?」

「ああ、治る。」

「……レキウス。お願い! 治して!」

「ああ、任せろ。」


 俺は、リシュアの右手を両手で包み、魔法を発動する。


復元再生(フルリバース)。」


 俺は、リシュアの顔を見て伝える。


「治ったよ、リシュア。」

「え!? 嘘! あれだけあった痛みが無いわ!」

「顔の包帯の隙間から見えていた傷もないわ!」

「……リシュア!」

「お父さん! お母さん!」

「「リシュア!」」


 俺とヒナは静かに部屋から出た。


 少し経つと、真っ赤な目をした3人が、俺達を部屋に招き入れた。


「ありがとう、レキウス君。それで、本当に良いのかい?」

「はい。従姉妹を助けるのに金銭を請求しませんよ。」

「あら。私には手作りのアップルパイを請求したのに?」 

「それはそれ。これはこれって事で。」

「ふふ。分かっているわ。最高のアップルパイをご馳走するわ。」

「レキウスと2人にさせて。」

「分かったよ。」

「レキウス君。リシュアの話を真摯に聞いてあげてね。」

「分かった。」


 そして、部屋には俺とリシュアだけになった。


「レキウス、怪我を治してくれてありがとう。」

「大した事じゃないから気にするな。」

「ううん。そういう訳にはいかないわ。」

「そうか?」

「私だって貴族の娘よ。今回の怪我で、どれだけ家に迷惑を掛ける事になるか考えたら怖かったわ。」

「あの2人がそんな事を思ってもいないと思うよ。」

「私だって分かっているわ! でも……」

「リシュア……」

「でも、この怪我で私の夢が叶わないと思うと苦しくって悲しくって絶望したわ。」

「でも、怪我が治ったから大丈夫だろ? リシュアの夢だって諦める必要は無いしな。」

「レキウス。」

「何、リシュア。改まって?」

「レキウス。私の夢はレキウスのお嫁さんになる事よ。」

「……え!?」




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