あの者は化け物か!
良い人なのに、話を聞かない人って、居ますよね。
2人の黒猫人族が目を覚ますまでの間に、リンから聞いた。
どうやら、リンは族長の娘で、この2人は同じ集落の者だという事らしい。
そして、集落を襲撃され、皆、散り散りに逃げたが、ある程度の人数が集まって新しい隠れ場所として、この森に逃げ込んだんじゃないかと、リンは思った様だ。
まあ、その予想は当たりだろうな。
「はっ!」
「くっ、縛られたか……」
「ランガ、スーガ。聞いて。」
「リン様、すみません。」
「オレ達が弱かったばかりに……」
ブチッ!
あ、リンが切れた。
「……とりあえず、私の話を聞きなさい!」
「「はい!」」
「戻らない過去を悔いても仕方ありません。確かに私は奴隷になりましたが、善きご主人様に出会えました。そして、私に戦う力を、生きる為の知恵を頂きました。」
「本当ですか?」
「ええ。そして、ご主人様は、私が従者として命を預けるのに相応しい強者です。だから、今、私には不満はありません。」
「……分かりました。」
「リン様の意思を尊重します。」
「「だが!」」
「牙が折れようとも!」
「爪が折れようとも!」
「「リン様を泣かせたら殺す!」」
愛されお嬢だな。
「……ランガ、スーガ。」
「リンは、愛されていたんだな。」
「今では、暑苦しく感じますが……」
「成長した証だよ。」
「……はい!」
「それじゃあ、皆の所に案内してくれないか?」
「ランガ、スーガ、お願い。」
「リン様が言うのなら。」
「リン様が望むのなら案内します。」
ランガとスーガの案内で隠れ場所に向かっているが、ちょっと嫌な考えが浮かんだ。
……当たらなければ良いけどな。
予想よりもオークの数が多かったんだよな。
「何か、匂うな。」
「……鉄錆びの匂い?」
「まさか!」
俺達が急いで向かうと、隠れ場所には沢山のオークが暴れていた。
人命救助が優先だ!
「ハクガ! オーク共を皆殺しにしろ!」
「分かった。」
その瞬間、全てのオークが苦しみだし、頭を上げた所を次々と首を刈っていった。
そして、重症の者はその場で治療して、軽症の者は1ヶ所に集めて、纏めて治療した。
「皆の纏め役は誰?」
「私です、リン様。」
「フーガも生きていたのね。」
「はい。」
「この場に全員が揃っている?」
「はい。その筈です。」
「フーガ! マリが居ない!」
「リラもだ!」
「ラナも居ないぞ!」
「クロード!」
クロードが、手を地面に触れて1分程で手を地面から離した。
「分かったのじゃ。……此処から南方に10分程行った所に居るのじゃ。」
「レキウス様!」
「助けに行くぞ!」
「はい! ランガとスーガも一緒に。」
「「はい!」」
「クロード、此処の守りを頼む。」
「分かったのじゃ。」
そして、俺達はオーク共の血抜きを頼み、森の奥に進むと、オークの集落が有った。
「ハクガ、オーク以外の者が居る場所を読んでくれ。」
「分かった。」
ハクガは右人差し指を伸ばし天を刺す。
「分かったぞ。あの1番奥の小屋に居る。」
「良し。それなら、シュナは建物だけを灰にしてくれ。
オーク共が姿を現したら殲滅するぞ。後、1番強いオークは俺が倒す!」
そう言うと皆が頷いた。
「シュナ、やってくれ。」
「任せな。」
シュナがそう言って、自身の前方に優雅に右腕を伸ばし指を鳴らす。
その瞬間、此処から見える全ての建物がいきなり白い炎で燃え出し、数秒で燃え尽き灰にした。
「プギッ!」
「フゴッ!」
いきなり小屋が燃え尽きて灰になった事でオーク共は混乱しているな。
「オーク共が混乱している内に畳み掛けるぞ! そして、ヒナとリンは俺と一緒に。ハクガ、セイル、シュナは、雑魚のオーク共を頼む。ただ、出来るだけ綺麗に残してくれ。後で利用する。」
「レキの背中は私が守るわ!」
「はい!」
「分かった。」
「了解した。」
「任せな!」
俺達は一斉に駆け出す。
そして、オーク共も俺達を認識して、襲い掛かって来たが、俺は雷撃弾をオークの頭に撃ち込んでいく。
因みに、何も言っていないランガとスーガは俺達の後を付いて来ている。
「凄まじい精度を誇る魔法だ。」
「しかも、無詠唱で……」
そして、俺達は1番奥に到着した。
小屋に居たオークは3匹で、その内2匹は雑魚のオークよりも頭1つデカくて、もう1匹は更にデカい。
多分、2匹の方がハイオークで、残り1匹がオークジェネラルだろう。
それに、オークジェネラルの後ろにまだ小さい3人の黒猫人族が居た。
「ヒナとリンが協力して2匹を、俺があのデカブツを倒す。」
「分かったよ。」
「はい、レキウス様。」
「リン様、我々も!」
「いえ。ランガとスーガは、隙を見て、マリ、リラ、ラナを助けてください。」
「分かりました。」
「我々にお任せください。」
「皆、行くぞ!」
皆、俺の掛け声で一斉に向かった。
「ブギィ!」
ヒナとリンは、先ず、ヒナが早々にハイオーク1匹をあっさり倒して、残り1匹をヒナは補助に廻って、リンに相手をさせるみたいだな。
さて、ランガとスーガに俺の強さを証明するか。
先ずは、武器が強いから勝てたと言われない様に、最初は拳で行くか。
「言葉は通じないだろうが、拳で語ろうか。」
「ガァ!」
俺はオークジェネラルに大斧を躱しながら、魔力を拳に足に込めて叩き込んだ。
「……あの者は化け物か!」
暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。
ハクガのした事は、風と言うよりも空気を支配し、声等の音の振動を読んでいました。
指を天に指したのは、単なる見栄であり演出です。
シュナも同じ理由で、指を鳴らした訳です。




