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2人共待って……

政略結婚は、当人の意思を無視するのが普通。

 王都から1泊2日で到着した領主館なのだが……

 あのオーク侯爵の実家とは思えない程に地味な外見だな。

 多分、数代前はまともだったのだろう。

 さて、入るか。


「止まれ! 此処は都市レイフィリアの領主館だ!」

「用の無い者は立ち去れ!」


 うん。

 上から目線的な空気は無いから、この門番2人は現状維持で良いな。


「はい。」


 俺は、必要書類を門番に見せた。


「新しい領主様でしたか。失礼しました。」

「ご案内します。」

「俺の後ろに居る全員を覚えておいてくれ。俺と同等の扱いで頼む。」

「「はっ! 畏まりました!」」


 門番2人は1度きちんと皆を(しばら)く見た後、門番の1人が先導した。


「付いて来てください。」


 すれ違うメイドはきちんと挨拶をしてくる。

 幾ら、王都の屋敷ではなく領地の屋敷とはいえ、あのオーク侯爵の下で働いていたとは思えないな。

 正面玄関口を入って中央のホールでちょっと若めの執事が居た。


「セドリックさん。新しい領主様をお連れしました。」

「分かりました。案内ご苦労様です。後は私がやりますから、持ち場に戻ってください。」

「はい。それでは領主様にお連れの皆様、失礼します。」


 き、教育が行き届いている!


「初めまして。この領主館の執事を任せられたセドリックと申します。」

「新しくこの領地の領主を任命された子爵位のレキウス=フォン=レイロードだ。」

「レイロード! レイロード辺境伯様に連なる方ですか。」

「ああ、レイロード辺境伯は祖父だ。」

「畏まりました。それと後ろの方々は?」

「説明するから、館内に居る者を全員集めてくれ。」

「畏まりました。」


 そして、ホールに全員が集まった後、自己紹介をお互いにしてハクガ達は護衛ではあるが、扱いは義理の兄弟の様な扱いで頼むと言って、メイド達は解散したが、執事のセドリックと、文官風の男性が3人と、美魔女が残っている。


 文官風の男性3人は、俺の代わりの代官で、残ったこの美魔女は、信じられない事に、あのオーク侯爵の第1夫人、つまり正妻だ!


 代官3人には挨拶を済ませて既に業務に戻り、俺達と美魔女ことゾフィーネ=ブルグ=リスタシアと応接室に居る。

 因みに、ゾフィーネさんの家名が領地名のレイフィリアではなく、リスタシアなのは、既に戸籍の変更が済んでいたからで、リスタシアはゾフィーネさんの実家の家名だ。

 後、俺みたいなパターンは、領地名はそのままで、俺の家名も変わらない。

 だから、他の領地に行って、領主の家名が違っていたら、俺みたいな入れ替えがあった事になる訳だ。


「その……」


 流石に言い辛い。


「ええ、分かっております。何時かはこんな日が来ると思っていました。親同士が決めた政治的な婚姻で、オークに犯される屈辱に耐え、一子を生んで直ぐに領地経営を押し付けられましたから。」

「そうでしたか……」

「ただ、領主館の皆さんが良い方々で、私は癒されていましたが、オークの無茶苦茶な搾取を皆さんや領地の民達は苦しめられて来ました。

 そして、一緒に頑張っていたのですが限界だったので、これで良かったと思います。」


 なるほどな。

 あのオーク侯爵が持っていた金は、このゾフィーネさんを始め領地に住む全員で支えていたんだ。


「そして、もし許されるのなら、このまま居させて頂けないでしょうか。既に(つい)の家は、私の実家から出して貰ったお金で購入しています。どうか最後まで、この領地の民達の為に働かせてください。」

「分かりました。これまでと同様にお願いします。」

「……え!?」


 王家も馬鹿じゃない。

 きちんと調べて、ゾフィーネさん達は無罪になっている。

 まあ、最後の判断は俺に押し付けられたけどな。


「王家の(ほう)で調べは済んでいます。皆さんの潔白は証明され、有能性を示しています。これからも、この領地に生きる民達の為に頑張ってください。」

「ありがとうございます。」

「それに、ゾフィーネさん達が頑張ってくれれば、俺達の冒険者としての時間は取れるしね。」

「それはどういう事でしょうか?」

「俺としては貴族になるつもりは無かったから、契約縁組にしたのに、ちょっと目立つ事をしたら国王陛下に捕まって貴族にさせられてしまったんですよ。」

「え! 契約縁組だったのですか?」

「継承縁組にして無駄な争いを生む必要は無いし、冒険者になるのが夢だったのでね。」

「そうでしたか。因みにランクは?」

「Cランク。」

「……その若さでCランク。それなら、新領主(・・・)にお願いがあります。領地内の森で最近モンスターが多いみたいで、困っていました。どうか、お願いします。」

「分かった。領地を安全にするのは領主(・・)の仕事だからね。」

「ありがとうございます。」

「それでどんなモンスターが?」


 話を聞くと、大体1ヶ月前辺りから奥の方に居る筈のモンスターやオーク(本物)が森の浅い所で見掛けていて、民からの不安が集い、最近は陳情も来ていたらしい。

 だけど、オーク侯爵の搾取で余分な金が無かった為に困っていた所に俺達が来たという訳だ。

 因みにモンスターは(おも)にオーク(本物)らしい。

 ちょうど良いから、売名行為に利用しよう。


 早速、俺達は問題の森に行き、次々にオーク(本物)を狩っていき、原因究明に森の奥に行くと、分かっていたから良いけど、木の影からいきなり出て、短剣を喉元に突き付けられた。


「レキウス様!」

「知られてしまったからには死んで貰う!」

「ランガに、スーガ!」

「何故、オレ達の名を! ……って、リン様!」

「リン様!?」

「その首の紋様は奴隷紋! よくもリン様を!」

「殺す!」

「2人共待って……」


 バキッ! グシャ!


「ぐはっ!」

「がっ!」


 俺は、黒髪、黒耳、黒尻尾の黒猫人族(・・・・)の2人を一発入れて眠らせた。


「遅かった……」

「リン、この2人の頭が冷えるまで、拘束するから手伝ってくれ。」

「はい、レキウス様。」



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