待っていたわよ、レキ。いえ、四方院歴弥。
転生を担当する神が、人格者とは限らないよな。
俺は、ヒナには全てを話した。
日本からの転生者で、転生する時に女神に会い、色々と融通して貰った事。
その結果、武力も魔法も桁違いになり、更に、この世界では不可能な筈の召喚師になった事、日本では召喚師の家系であった事、全てを話した。
「そうなんだ。」
「ヒナ……」
『レキが歴弥だったんだね。』
「え? 日本語!?」
『私もね、あの女性に治療して貰った時に、死に間際だった所為か前世を思い出したの。転生して尚、忘れなかった大切な男性を。』
『ヒナ、どういう事だ?』
『私は、日向よ。西条日向よ、歴弥。』
『……日向。西条日向!』
『そうよ。私は西条日向。四方院歴弥の幼馴染みで許嫁の日向よ。』
『あんな別れで、俺はどれ程に後悔したか。』
『良いのよ。あれは仕方ないわ。それにこうして出逢えたのだから。』
『ああ、そうだな。日向、改めて言うよ。俺、四方院歴弥は西条日向を愛しています。だから、日向と生涯を共に歩みたい。』
『私もよ歴弥。私、西条日向は、四方院歴弥を愛しています。だから、結婚して、私を妻にしてください。』
『……日向。』
『……歴弥。』
俺は、あり得ない奇跡で日向と邂逅した事を女神に感謝して日向とキスをした。
「だけど、歴弥。いえ、レキ。今は新しい自分になっているから、今の私達の名前で新しい人生を歩みましょう。」
「そうだな、ヒナ。」
「それにしても、ふふ。」
「どうした、ヒナ。」
「新しい人生の筈なのに、名前が前世と殆ど同じだなって思ってね。」
「そうだな。きっと、この世界の神様が気を使ってくれたんだよ。」
「そうね。」
こうして、俺達は昔話ならぬ前世話で花を咲かせていると、シリンと街の衛兵達がやって来た。
その後は、街に戻り領主も巻き込んで事後処理をして、俺は王都に戻らなくてはならず、シリンとの約束を守る事が出来ない為に、国家反逆者候補になった馬鹿貴族2人と白虎が皆殺しにした連中から、金になる物全てを換金して全額シリンに渡した。
まあ、白金貨3枚になったけど、本気で嫌がるシリンに無理矢理渡した。
だから、俺が竜勇者である事と貴族である事を秘密にして貰う為の口止め料込みだと言うと、本当に渋々受け取った。
そして、秘密の共有になった事で、シリンは俺達を「レキ」や「ヒナ」と呼ぶ様になった。
「レキ、ヒナ。この街に来たら必ず私に会いに来なさいよ。」
「ああ。またな、シリン。」
「また会いましょう、シリン。」
「待っているからね。」
そして、馬鹿貴族2人を放り込んだ護送用馬車と領主が出した馬車に乗って領主が用意した護衛に守られながら王都を目指した。
王都に着いた後の事はあまり思い出したくない。
簡単に言えば、面倒臭い手続きを様々な部署で1日中やらされ、2週間後にやっと終わったと思ったら、それから5日後にまた謁見の間に喚ばれ、俺は子爵位を賜った。
子爵になった事で領地を貰ったが、元国用地で隣がフローラの実家があるライロード公爵領だ。
まだ俺が成人前という事で、国から代官を派遣されている。
子爵の叙爵は異例だが、まあ、クーデターを考えている連中を捕まえ、アリウス殿下の代行としてやった事で王家の株を上げた事が要因らしいな。
更に、話を聞いたフローラからは祝福されたが、根掘り葉掘り聞かれ、俺達がまだキスしかしてない事をからかわれた。
キス以上出来るか!
流石に「最後まで」は無理だ。
せめて、ヒナが15歳以上になるまでは我慢だ。
この世界で生きる貴族的にも、前世の倫理観的にも無理!
それに信頼出来るフローラでも、俺が転生者で召喚が出来る事は秘密にした。
まあ、召喚についてはいつか、話しても良いかな。
これについてはヒナも良いと言ってくれた。
最後に、事務処理を含む労働の対価は、先程も言った通りに子爵位に叙爵した事と、クーデターを未然に防いだ等の諸々込みで白金貨300枚を頂いた。
そんな中、数日経ってやっと落ち着いた頃に、ヒナの方から奴隷を買おうと言い出した。
理由を聞くと、冒険者として一緒に行けて、俺達の秘密を守れる事。
そして、俺の全てを知るヒナには俺の暴走を止める為にはヒナ1人では無理とぶち吐かれ、俺は奴隷を買う事になった。
まあ、前世はヤンチャだったからなぁ。
折よく、15日後に王都でオークションが開かれる。
コレに参加する事にした。
オークションが開かれるまでは、ヒナと一緒に冒険者稼業に精を出していた。
因みに、ヒナも前世を思い出した為に、新武器「薙刀」を装備して無双していた。
まあ、他にも色々あったが割愛する。
その結果、あまり心配事がなくなったかな。
そんなある日に、ヒナが午後から用事が有る為に暇になった俺は、元凶に文句とヒナに出逢えた感謝を言う為に神殿に行った。
「ようこそ、神殿に。今日は何をしに?」
「今までの事に感謝を告げる為に来ました。」
「それは良い事です。」
俺は神官に金貨1枚を寄付して個室で祈った。
「待っていたわよ、レキ。いえ、四方院歴弥。」
「こんの駄女神! よくも覚醒をあんな風にしやがったな。」
「普通に、出産後や5才や10歳じゃあ、芸が無いと思ってな。感情の激しい爆発で覚醒する様にした。だから、『劇的』だっただろう?」
「あの時の黒い笑顔に気付いていれば……」
「まあまあ。」
「この元凶が!」
「あはははは。」
「まあ、日向に逢わせてくれた事には、感謝しているよ。」
「良かったな。」
「駄女神。いや、女神リアーシア様。」
「ん。」
「ありがとう。」
「四方院歴弥。いや、レキ。君には仰々しい使命は無い。新しい人生を楽しく過ごしなさい。」
「分かったよ、女神リアーシア様。それじゃ。」
「ああ。そうだ。言い忘れたが、使命は無いが、人生は波乱万丈だ。頑張れよ。」
「やっぱり、駄女神だ!」
「あははははは。」
退場直前で、ぶっ込まれた!
屋敷への帰り道で、転生する為の女神リアーシアとのやり取りを思い出していた。
「あれは、ちょっぴり酷かったな。」
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