お前は何者だ?
ちょっぴり胸糞展開有り。
「聞かれてしまっては仕方ない。おい!」
そう言った瞬間、俺達は囲まれていた。
「……そんな。」
「念の為、調べる必要がある。捕らえろ。」
「くっ。」
周りの連中は、一言も喋らず、命令に従って俺達を捕らえる為に動いた。
「風刃!」
「氷牙弾!」
「や! はあ!」
「ぐっ。数が多過ぎる。」
「きゃっ!」
「ヒナっ!」
「ヒナセーレ!」
「がっ!」
「さて。此方の言い分は分かるな?」
ヒナとシリンが捕まってしまった……
「くっ……」
「そうだ。大人しくする事だ。」
「レキ!」
「レキウス!」
「さて。お前らは誰だ?」
「Cランク冒険者だよ。他の2人もな。」
「そうか。で、本当は?」
「それ以上は無い。」
「分かった。おい!」
「ぎ、あああああーーー!」
「ヒナ!」
「ヒナセーレ!」
「お仲間の足が千切れる前に吐くんだな。」
「無いものは無い。」
「そうか。やれ。」
「が、ぎゃあああああーーー!」
「ヒナー!」
「ヒナセーレ! 貴様!」
「ほら。両足から血が流れているぞ。ほっとけば死ぬだろうなぁ。吐けば、せめてもの慈悲だ。楽に死なせてやるぞ。」
「無い!」
「……やれ。」
「あ……」
「女の腹に刺した。長めの詠唱1つも唱える間に死ぬだろうな。いや。両足から血が流れているからもっと早いかもなぁ。」
「き、貴様ーーー!」
その瞬間、俺の中の何かが壊れた。
そして、全てを思い出す。
「四神召喚!」
「は?」
「玄武はヒナとシリンに結界を。朱雀はヒナの治療を。
白虎は雑魚を全て殺せ。青龍は俺と来い。」
「分かったのじゃ。」
「任せな。」
「分かった。」
「了解した。」
敵は俺の四神召喚の余波で吹き飛んでいた。
そして、俺は敵のボスと思える2人の下へと向かった。
「き、貴様は何者だ!?」
「戦える召喚師だ。」
「デタラメだ! 男に召喚が出来るものかっ!」
「レキヤ。治療は済んだよ。」
「ありがとう、朱雀。悪いが逃げられない様にこの2人の両足を焼き切ってくれないか?」
「ああ、任せな。」
「「なっ!?」」
「華炎鳥。」
「「ぎゃあああーーー!」」
現れたのは、華の様な翼を持つ鳥4羽が朱雀から羽ばたき敵の2人の両足に抵抗なく通過する。
そして、注文通りに切断面を焼いた為に血が流れる事なく、両足が離れた途端に切り離された足が燃えて灰になった。
そこまでは言ってないけど、……まあ、良いか。
どちらかと言えば長身の朱雀が俺の胸辺りまで頭を下げているので、俺は朱雀の無言のおねだりを察して頭を撫でた。
「んふふふ。」
「わ、私のあ、足が。」
「お、オレの足が……」
「レキヤ、どうするのだ?」
「青龍。コイツら、会話の中に、『王族』や『暗殺者』と言う単語を言っていた。それなら、王都に連行するさ。」
「お前ら、覚悟は出来ているのだろうな? 貴き血を持つ我ら貴族に対してこんな事をしたのだからな。」
「爵位は?」
「い、良いだろう。教えてやろう。私は、この国、フォルビア国の伯爵位のルエーホ=ガーヌ=イーケマだ。」
「オレも、フォルビア国の子爵位のクーヤ=チーン=ギシコだ。」
「……!?」
「ふん。今更、自分が何をしたか悟った様だな。覚悟するんだな。楽に死ねると思うな。お前らだけじゃなく、家族親戚全てが我らの奴隷となって、生涯全てを持って罪深き愚行を後悔させてやる。」
「早速、アリウスから貰ったアレが役に立つな。」
「アリウスとは誰だ?」
「自分の頭を下げるべき国王陛下の子供の名前も覚えてないのか?」
「なっ!? アリウス殿下の事か!」
「正解。」
「お前は何者だ?」
「俺か。俺はドラゴンから学園を救った事でアリウス殿下とは縁が出来てな。」
「ま、まさか!? お前が、竜勇者か!」
「本当なの?」
「ああ、シリン。ごめんな。こんなガキで。」
「ううん。良いの……って、待って!」
「どうしたの、シリン。」
「ヒナセーレ。レキウスは確か、ドラゴンを討伐する事で学園を救った功績で、男爵位を叙爵されたのよね?」
「そうよ。」
「つまり、レキウスは……男爵位を持つ貴族様!」
「シリン。確かにそうだけど、冒険者でも有るんだ。気にしなくて良いよ。」
「シリン。レキもそう言っているから大丈夫よ。」
「そう。」
「それより、ヒナ。大丈夫か?」
「うん。大丈夫よ。それより何がどうなっているの?」
「後で話すよ。」
「分かったわ。」
「レキウス、私にもよ。」
「分かった。」
「お、お前が、あの竜勇者なのか?」
「ああ。そうだ。」
「し、信じられん。」
「別に信じなくて良いよ。」
「ふ、ふん。確かにお前はそれなりの功績を出したかもしれんが、所詮はガキであり、男爵程度だ。周りの者は男爵と伯爵の言葉のどちらを信じるだろうな?」
「ククク。確かにそうだな。」
「し、しまった……なんて言うと思ったか? コレは何だ?」
俺はマジックバッグから出す振りをして異空間からアリウスから貰った短剣を出す。
「それは何だ?」
「短剣のようだが?」
「この短剣はアリウス殿下から授かった短剣だよ。」
「ば、バカな! アリウス殿下から授かった短剣だと!?」
「ああ。そして、俺がこの短剣を出して行う全てがアリウス殿下の代行となる。つまり……」
「つまり何だ?」
「つまり、ガキで男爵の言葉ではなく、この短剣を出す事で、俺の言葉はアリウス殿下の言葉となる訳だ。
だから、アリウス殿下の言葉と伯爵の言葉のどちらを信じるだろうな?」
「くっ……」
「そんな……」
もう逃げれないと絶望する様を見ていると、俺は足元がふらついた。
「あ……」
「レキ!」
「レキウス!」
「ヒナ、シリン。大丈夫だ。」
「でも……」
急な目眩がしてよろけたみたいだ。
「レキヤ。最初の召喚で、我ら四神を召喚した反動だろう。」
「分かった。返還。」
俺は四神である青龍、朱雀、白虎、玄武を還した。
「大丈夫、レキ。」
「ああ。」
「レキウス、貴方は何者なの?」
「話しても良いが、契約魔法で縛らせて貰うが良いか?」
「……分かったわ。」
俺はシリンに契約魔法を掛けて、俺が日本からの転生者である事とその辺りを抜いた内容を話した。
勿論、召喚も馬鹿正直に話せないから、そこも誤魔化した。
後、序でに馬鹿貴族2人にも同じ契約魔法を掛けて気絶させた。
「……そうだったのね。」
「シリン、悪いが街に戻って、衛兵達を呼んで来てくれないか?」
「分かったわ。」
そう言ってシリンは街に衛兵達を呼びに戻った。
「レキ、貴方は何者なの?」
「勿論、ヒナには全て話すよ。信じられない事だろうけど……」
「何を言っているの! 私がレキを信じない訳ないじゃない!」
「……ありがとう、ヒナ。」
俺は、全てをヒナに話した。
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