最後まで言わなくても良いよ、レキ。
序盤終了まで、後、3話。
「アリウス殿下、この女性は?」
「ああ。彼女は、この洞窟の管理人だ。」
「管理人?」
「まあ、管理人というのは表向きで、実は彼女は『危険感知』というスキルを持っていて、洞窟に入った王族や洞窟に異変が有れば報せる役目を持っている。」
「アリウス殿下、良いのですか?」
「何が?」
「彼女のソレは、重要機密かと思いますが。」
「心配無い。彼女は現・騎士団長夫人で、前・宮廷魔術師長の娘だ。」
あ、はい。
血統も立場も実力もお墨付きですね。
「分かりました。」
「それでは、行こうか。」
入ってみての感想だけど、洞窟?
いや、ダンジョンだろう。
モンスターは出るし、倒すと魔石になるし。
しかも、知性有る者が命令を出している。
だって、隊列を無視して、先頭か最後尾を最初に狙うから。
そして、厄介な事に、アリウス殿下は、色々と大義名分を言って先頭に立つけど、本当は、単純にモンスターとの戦闘を楽しんでいる。
だって、ずっと笑顔だからな。
「ふははははは! 良いぞ! もっと来い!」
ほら、隠していない。
そうして、3階層の祭壇に到着したけど、何?
王都で流行っている若い人向けの喫茶店を連想するんだけど?
「やっと来たわね。」
俺達はアリウス殿下の前に出る。
「何者かな?」
「私? 私は、このダンジョンを支配するダンジョンマスターのアスカよ。」
「やっぱり、此処はダンジョンだったのか。」
「当たり前じゃない。出入口を封鎖されて、短くて数年、長くて10数年を生きている訳ないじゃない、幾らモンスターでも。それに、ちゃんとモンスターを倒すと魔石が出るでしょう。」
「それで、貴女の立場は?」
「簡単に言えば、このダンジョンを支配する代わりに、初代国王の血統を持つ8歳から14歳までの男子を来させる事。」
「……はぁ!?」
「時間が勿体無いから、王子は私とあっちでお茶しましょう。従者は隣でね。」
「どうぞ、こちらです。」
何時の間にか、現れた執事に見える人物が俺達を案内した。
アリウス殿下はダンジョンマスターのアスカとお茶をしながらお喋りをしている。
印象は、姉と弟が姉弟デートをしている様に見える。
「これから話す事は、王家の機密事項になります。此処だけの話としてください。」
「分かった。」
「はい。」
「分かりましたわ。」
話の内容は、この国の初代国王とダンジョンマスターのアスカは実は恋人同士で、結婚式まで3ヶ月という所で、強大なモンスターが現れ、王城の下にダンジョンを作ってしまった。
試行錯誤や内側でのゴタゴタと裏切りが原因で、国を、国王を救うには、アスカがダンジョンマスターになるしかなかった。
そして、ダンジョンマスターになったアスカには子を産む力を喪っていた。
それからは、初代国王はアスカへの愛を示す為に、今も続く、自身の血統を継ぐ者をアスカに会わせる様になった。
会いに行く年齢が決まっているのは、その頃が1番幸せだったから。
そして、王女が禁止なのは、やはり、愛する人の子を産めなかった哀しみと憎しみを刺激するから。
ヒナやフローラみたいな娘は良いのか、という質問は、アスカも不思議がっていたが平気らしい。
アリウス殿下に教えなくて良いのか、という質問は、王太子になる時に知るから良いらしい。
向こうでは、アリウス殿下とアスカが楽しそうに話している。
「そうなのか。」
「そうなのよ。」
ダンジョンマスターは、「不死身」や「不老不死」とも言われている。
あのアスカの姿は、結婚式直前の幸せが絶頂の時の姿なのだろう。
ん?
地震!
……まさか、ダンジョン内で地震!?
「……え!?」
「何だ?」
「まさか! 生きていたのアイツ!」
「アリウス殿下! 出入口へ!」
「……分かった!」
アリウス殿下は、俺の言いたい事を理解して、地上に上がる為の出入口に向かった。
そして、地の底から「何」かが、近付いている。
……来る!
「Gishaaaーーー!」
「土帝邪竜ドゴリアス!」
「……え!? このモンスターが!」
「そうよ! コイツの所為で……。だから、コイツは私が抑えている間に逃げなさい!」
「しかし……」
「良いから! 私の全ての力を使ってでも抑えてみせる!」
「それじゃあ……」
「アスカ様!」
「え!? ぎゃ……」
ドコッ! バキッ!
「う……」
「アスカ様!」
「アスカ!」
……やるしかないか。
「ヒナ。フローラ。悪いが……」
「最後まで言わなくても良いよ、レキ。」
「そういう事よ、レキウス。」
「……ありがとう。またダランには悪いが、3人で『竜狩り』になるか!」
「はい!」
「当然よ!」
「レキウス!」
「アリウス殿下、分かっていますね?」
「……く。分かって、いる。」
「それでは、アリウス殿下。竜狩りの証人をお願いしますね。」
「分かった。私に名誉ある歴史の証人にさせてくれ!」
「分かりました!」
「レキ。」
「レキウス。」
「行こう!」
暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。
この世界のダンジョンは2種類あります。
1つ目は、知性有る者が、支配するダンジョン
2つ目は、強大なモンスターが、支配するダンジョン




