何をしている?
ヒナに胃的な不幸が。
「こんな所に、土臭い平民が居ますわ。」
「全くですわね。」
「それに、そのドレス、品がありませんわ。」
「見苦しいですわね。」
この3人は貴族令嬢なんだろうけど、言っている意味を分かっているのだろうか?
「本当、不愉快ですわ。」
「その通りですわ。」
「私もそう思いますわ。」
「このパーティーは、私達の様な選ばれた者だけが出るべきですわ。」
「全く、そうですわ。」
「下賎な者が居るなんて嘆かわしいですわ。」
「あら、ごめんなさい。」
あ、わざと手に持つグラスを溢して、ヒナのドレスを汚したな!
「平民には過ぎたドレスだわ。」
「本当に、不釣り合いですわ。」
「全くですわね。」
……ちょっと、崖下に突き落とす準備をするか。
「それほどであるならば、さぞ、高貴な生まれなんでしょうね。」
「当然ですわ。」
掛かった!
「どれ程で?」
「私は、カレンデュラ伯爵家の二女サハレーヌよ。」
「私は、カルタム子爵家の三女ダリアーナですわ。」
「私は、ベイリス子爵家の二女ミモーラです。」
当主の爵位でいったら、全員が俺より下だな。
「そう言えば、まだ名乗っていませんでしたね。私は、レイロード辺境伯のレキウス=フォン=レイロードです。
そして、貴女方が不快に思われたこのドレスですが、ライロード公爵家のフローラ様が手掛けたオーダーメイドです。貴女方の言った言葉は包み隠さずに伝えておきます。」
「「「ひぃっ!」」」
「それに私と彼女はAクラスで、貴女方は学年が違うようですが、何クラスでしょうか?」
「くっ……」
こんな時に、来てはいけない人物が現れた。
「何をしている?」
「「「え?」」」
俺は直ぐに臣下の礼を取り、ヒナも慌てて俺に倣う。
「どうした? 答えよ。」
「えっと、その……」
「アリウス殿下。説明の許可を頂けないでしょうか?」
「許可する。」
「私達は、開始を待って此処に居たのですが、此方の3人が、今回のパーティーの意図を無視して、彼女に対して文句を言い始めた上に、ご覧の通り、彼女のドレスが汚されました。」
「うむ。今の言葉に異論は有るか?」
「このも……」
「分かっていると思うが、私は虚言を嫌う。それを理解して答えよ。」
「あ……」
「どうした?」
「アリウス殿下。 よろしいでしょうか?」
「うむ。許す。」
「答えられぬという事は、私が言った内容が事実だという事になります。」
「……そうか。」
「殿下、あの……」
「各家には通達を出しておく。この場から立ち去るがいい。」
「……は、はい。御前失礼します。」
「「御前失礼します。」」
3人の貴族令嬢は、青い顔のまま立ち去った。
俺は直ぐに、ヒナのドレスの汚れを消したかったが、アリウス殿下に確認をして頂いた。
「アリウス殿下、この様にドレスを汚されました。」
「うむ。確認した。それでどうする? 予備のドレスは有るのか?」
「アリウス殿下のご慈悲ありがとうございます。が、ご安心ください。洗浄。」
「おお。」
「この様に汚れは消えました。」
「うむ。名を聞こう。」
「はい。レイロード辺境伯のレキウス=フォン=レイロードです。」
ちょっと釘を刺しておくか。
「そして、まだ内々ではございますが、この女性ヒナセーレ=レイディアは私の婚約者です。」
「本当か? 返答を許可する。」
「アリウス殿下、ありがとうございます。私はレキウス=フォン=レイロードの婚約者ヒナセーレ=レイディアです。」
「うむ。そなたが、ヒナセーレ=レイディアか。」
「はい。」
「アリウス殿下、彼女をご存知で?」
「ああ。今年の入試で10位以内に入った平民が居ると聞いてな。」
「ライロード公爵家のフローラ様から多大なご恩により、末席を汚す事が許されました。」
「そうか。と、そろそろ時間が迫っている様だ。私はこれで失礼しよう。そなたらもダンスパーティーを楽しむが良い。」
「アリウス殿下、お言葉、ありがとうございます。」
俺は充分にアリウス殿下か離れたのを確認して、息を吐く。
「はぁ~。緊張したー。」
「私もだよ~。」
この後、特に何も無くダンスパーティーは終わった、とは言えないか。
ヒナの首飾りの「魅了耐性」が反応して、子爵家の1つが潰れたし、ヒナの指輪の「毒耐性」が反応して、男爵家の令息1人が牢屋に運ばれた。
……まあそこそこに有ったが、そんな事よりも重要な事が有った!
ダンスを踊るヒナがとても綺麗で可愛いくって輝いていた事だ!
3日後、屋敷にアリウス殿下からの手紙が届いた。
内容は、「王宮に2日後の午前9時に遊びに来い。」という事だった。
更に、ヒナの同行の指示も書いていた。
当日、王宮に着ていくドレスはフローラが用意した。
どうやら、フローラも呼ばれているらしい。
それで、フローラがもう着ないドレスを仕立て直してヒナ用にした。
そして、序でだからとフローラのドレスから更に5着を仕立て直してあげた。
ヒナは遠慮していたが、もう着る事が無いからと押し切って渡して、やっぱりヒナは嬉しそうだった。
さて。
王宮からの馬車が来ていて、馬車に入ると固まっているヒナが居た。
「ま、まさか、わ、私が、お、王宮の、ば、ば、馬車に、のる、乗るなんて、おも、おもわ、思わなかったよ。」
「緊張するなとは言わないけど、ヒナは俺が守るからな。」
「う、うん。」
そして、俺達は王宮に到着して、アリウス殿下と会う事になった。
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