仕方ねぇな。軽く力を貸してやるよ。
まだ主人公は「井戸の蛙、大海を知らず」でした。
あ~。
ワイバーンや地竜なら楽勝なんだけどなぁ。
ドラゴンが食事をしている間に、ヒナに洗浄を掛けておこう。
「洗浄。」
「レキ、何故……」
「悪い。流石に余裕は無いよ。」
ドラゴンに注意しつつ、俺達は中庭の隅に移動して、土魔法でヒナなら余裕で入る穴を開けて中を付与で硬化して、中に入って貰う。
そして、この穴を土魔法で囲み、硬化の付与を掛けて、俺が出来る最硬の結界を張る。
「ヒナ。俺が迎えに来るまで、そこで待ってて。」
「レキが迎えに来ないと、私は穴から出ないからね。」
「これは責任重大だな。必ず迎えに来るよ。」
「約束だよ、レキ。」
「ああ、約束だ。」
さて、まさか人生初の竜狩りが此処で達成するとはな。
悪いな、ダラン。
一緒に出来なくて。
こればかりは仕方ないと、諦めてくれ。
さて!
冒険者になった男の子なら、1度は夢見る竜狩りを叶えますか。
先ずは、ヒナの居る位置から充分に離れた後、ドラゴンの意識を俺に向けないとな。
「はっ!」
俺はドラゴンに殺気を放つ。
「GAAAAAAーーー!」
凄え威圧だ!
しかし、ダラン達に散々に、「化け物」とか「規格外」と、言われた俺の本気はドラゴンに何処まで通用するかな?
攻撃魔法は学園内では難しいから近接戦闘だ!
ギッ! ガッ! ガツ! ザシュ!
「GAAAAAAーーー!」
やっぱり、固そうな所に身体強化とか無しで、斬りにいっても駄目だったな。
だけど、前足の関節で刃が通ったな。
それから、身体強化を使いながら何分くらい戦ったのか分からないが、少しずつ戦い方が分かって来た所で、ドラゴンが羽ばたき始めた!
そうはいくか!
「烈風斬!」
「GAAAAAAーーー!」
ズゥン!
良し!
ドラゴンの左翼を風魔法で切り落とした!
これで簡単に飛べなくなったぞ。
ドラゴンが立ち上がり、背中を向けた?
竜尾撃だ!
「上に避けるしかない!」
ブォン! ブォン!
「なっ! がぁ……」
バキッ! ドコン!
「くっ……」
まさかの2連撃で、上に逃げた俺を2発目で叩き落とされるとは思わなかった。
ドラゴンが大きく頭を上げ仰け反った?
……ブレスだ!
ヤバい!
俺の後ろにヒナが避難している穴が……
やるしかない!
俺が出来る最大の身体強化に、魔法障壁を最硬に!
「GAAAAAAーーー!」
ゴゥ!
「があああああああああああ!」
……た、耐えたぞ。
え!
また、頭を上げて仰け反った!?
ブレスまで2連撃かよ!
「GAAAAAAーーー!」
ゴゥ!
「があああああああああああ……」
……だ、駄目、か……
(仕方ねぇな。軽く力を貸してやるよ。)
「え!?」
その瞬間、俺は透明な大きな膜の中に居た。
そして、ドラゴンのブレスに因る破壊と熱から俺、いや、俺達は守られていた。
俺を包む透明な膜は、ヒナの居る場所にも張られいた。
そして、ドラゴンも流石に余裕が無いのか、疲労から頭を下げている。
(今だ! 止めを刺しな。ありったけの魔力を刀に溜めて全力で振れ!)
俺は頭に直接響く声に従い、残った魔力を全て刀に込め上段から全力で振り下ろす。
ブゥン!
ザン!
「GAAAAAAーーー……」
見えない斬撃三連がドラゴンの額を深く斬った!
(まだまだだな。早く我等を喚べる様になれよ、レキヤ。)
お前は誰だ?
(まだ、お子様には教えねぇよ。じゃあな。)
待て……
俺の頭から居なくなったみたいだな。
何だったんだ?
それに、「レキヤ」とは誰だ?
俺の事なのか?
だが、俺の名は「レキ」か「レキウス」だ。
だから、「レキヤ」じゃない。
はっ!
そんな事よりヒナだ!
「ヒナ!」
俺は、慌ててヒナが居る穴に向かった。
「……良かった。結界は破壊されているけど……」
「もう、大丈夫?」
「ああ。もう大丈夫だよ、ヒナ。」
俺はヒナを穴から出すと、前方には巨大なドラゴンが横たわっていた。
「凄~い! レキが1人で倒したんだよね!」
「……ああ。」
「違うの?」
「違わないよ。俺自身も無我夢中だったからさ。」
「ふ~ん。そうだよね。でも、これでレキは、立派な『竜狩り』だね。」
「ああ!」
ドラゴンの血が勿体無いが、異空間収納が知られる訳にはいかないから放置する事にした。
この後が大変だった。
学園に通う成人もしていない子供が1人でドラゴン討伐を果たしたのだから、学園長を始め、主な先生方を集めての事情聴取が始まり、原因究明する事で、今回の騒動が人為的に起こされた事、その犯人が学園の生徒である事、その生徒がヘカートとあの先輩3人だと判明した。
そして、「王立」学園である為、ヘカートとあの3人は、死罪にはならなかったが、退学になり、除籍され平民になり、徴兵されて南の辺境の砦に飛ばされた。
一応、バードン子爵は頑張っていました、とザーナク伯父さんに手紙を送った。
そのお陰かは分からないけど、あの3人の家は爵位が下がったけど、バードン子爵はそのままだった。
そして、俺が倒したドラゴンは俺が貴族籍だけだったら、王家に全てを献上になるんだけど、冒険者でもあった為、上の牙2本と前足の爪4本に、翼の皮膜2人分に、竜鱗2人分に、血を8Lと、そして、「魔石」が俺の分として手元に残った。
後は、貴族の一員として王家に献上した。
……2人分?
勿論、ヒナの分ですが何か?
そして、あの日から10日経った今日、王城で報奨式が謁見の間で行われる。
「ザーナク伯父さん、緊張する。」
「大丈夫だよ。国王陛下はお優しい方だから。」
「そうかなぁ?」
「大丈夫大丈夫。」
そして、報奨式が始まり、俺とザーナク伯父さんは謁見の間に通された。
「これより、レキウス=フォン=レイロードの報奨式を執り行う。」
暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。




