邪魔する気は無かったんだ。
ラブコメの、家での両親の覗きは常識ですよね。
フローラは、用事が有るとかで迎えが来たから馬車で帰っていった。
まあ、フローラは公爵家だからなぁ。
「忙しいんだね。」
「そうだな。それじゃあ、俺達も帰ろうか。」
「うん。」
「序でに、今日のヒナの反省会をしよう。」
「分かった。」
実は、ヒナが暮らしている商会の裏には庭が有って、そこを使わせて貰っている。
「お帰りー。ヒナにレキウス君。」
「庭をお借りしても良いですか?」
「どうぞ。」
ヒナは一旦部屋に行き、不要な物を置いて庭に来た。
「それじゃあ、反省会だ。」
「うん。」
ヒナは、素早さを生かした短剣二刀流だ。
一撃の強さや重さでは無く、数多くの攻撃を繰り返す中で、弱点に一撃を入れる戦い方だ。
近接型と思わせて、実はヒナは魔法も得意だ。
特に、氷属性と闇属性の魔法が得意で、氷魔法で攻撃をしながら氷に因る体温低下も狙い、動きが鈍った所を接近しての攻撃や、闇魔法で視界を塞ぎ、相手が動けない様にして、が、ヒナの攻撃方法だ。
……と、言ってもまだヒナが使える魔法が、氷魔法だと、「氷牙弾」と、闇魔法の「暗幕煙」だけしか使えないけどな。
しかし、その2つの使用の際の魔力の無駄が無い事と制御の精緻さが凄い。
だから、学園入試でAクラス入りを果たしたのだ。
さて、ヒナの反省すべき点だが、技術的・知識的な部分は問題じゃない。
そんなのは、これから幾らでも良くなるからだ。
問題なのは、精神的な部分で、ホーンラビットに止めを刺す時に、一瞬の迷いが有るんだよな。
まだ、ホーンラビットだから大丈夫だったけど、この迷いが残ったままだと、これから危ない場面が増えてくると思う。
と、ヒナに伝えると……
「うん。やっぱりまだちょっと怖いんだ。」
「大丈夫だよ、これだって一歩ずつ進めば良いんだ。俺も一緒に隣で歩くから。」
「ありがとう、レキ。」
「……ヒナ。」
ガタッ!
「あっ!」
そこには、庭への出入口で転けているヒナのお父さんのレキナが居た。
「ごめん、ヒナ。邪魔する気は無かったんだ。」
「お父さん……」
「待て! その浮いている氷の塊5つは何だ、ヒナ!」
「さあ、何でしょうね?」
暫くお待ちください。
レキナおじさんとヒナが、親子で追い駆けっこをしています。
そして、そこにヒナのお母さんであるリースが追い駆けっこを止めました。
レキナおじさんは助かったと思い笑顔になっているけど、違うみたいだ。
「娘の邪魔をするなんて、……お仕置きね。」
「ひぃーーー! レキ君、助けてー!」
俺は笑顔で、「さよなら」の意味で手を振った。
「……そんな。」
でも、ヒナと追い駆けっこをしている間は、ソレに繋がる事を言っていないのに知っている。
つまり、リースおばさんも覗いていたという訳だな。
まあ、俺も死にたくないから黙ってよ。
この後、周りに誰か居たら砂糖を吐かせる展開が暫く続いた後、俺は屋敷に帰った。
屋敷に帰ると、従姉妹のリシュアが居た。
正式名称は、「リシュア=イゴル=ランスロット」で、お祖父様の次女が、嫁いだ先がランスロット侯爵家で、リシュアはその間に生まれた三女で、年が俺の1つ下だ。
「待っていたわよ。」
「リシュア、久し振りだね。今日はどうしたの?」
「少し遅くなったけど、一応はお祝いの言葉を送ろうと思ったからよ。」
「リシュア、ありがとう。」
「……う。にゅ、入試では、首席らしいじゃない。」
「まあね。」
「でも、満点である100点に届かなかったらしいじゃない?」
「そうなんだよな。」
「見ていないさいよ。私はあんたなんかと違って満点を取るんだから!」
「リシュア、応援しているよ。」
「……う。き、今日はそれだけよ。」
「リシュア。」
「何よ?」
「折角来たんだ。少し遊んでいかないか?」
「え!?」
「それに、夕食もどうかな?」
「……じょ、冗談じゃないわ! あんたなんかと2人っきりでの夕食なんてお断りよ!」
そう言って、リシュアは屋敷を出て行った。
……寂しいな。
最初の頃は、「レキウスお兄ちゃん。」と、言って懐いてくれていたのになぁ。
周りを見ると、アンナを始め、全員が残念そうな顔をして俺を見ていた。
皆も、リシュアと一緒に居たかったんだろうな。
アンナが……
「……はぁ。」
と、溜め息を漏らしていた。
どういう意味だ?
「あはははは。嫌われたね。」
「ザーナク伯父さん。帰っていたの?」
「ああ。時間が出来たからね。」
この人は屋敷の主で、「ザーナク=フォン=レイロード」で、お祖父様の弟で先代の国王の妹君と結婚して侯爵になった人だ。
結婚した元王女のシンフォニア様は、屋敷に居てもザーナク伯父さんが居ない為、王宮にザーナク伯父さんと暮らす夫婦の部屋を貰い、そこで暮らしている。
だから、まだ1回しか会っていない。
それで、仕事は宰相を頂点とする行政機関の事務次官で、それなりに偉い人だけど、温和で優しい人だ。
だけど、仕事が忙しく滅多に屋敷に居ないから、リシュアの2人っきりも、まあ、嘘にならない。
……あれ?
ザーナク伯父さんが居るのはリシュアも知っていた筈なのに、何故「2人っきり」になるんだ?
「……! ああ、予定が変わってね。少し早いが夕食にするかい?」
「はい。」
夕食にて。
「レキウス、学園はどうかな?」
「はい。仲間達と楽しく過ごしています。」
「そうかい。それと兄さんから聞いたけど、本当に冒険者になるのかい?」
「はい。夢ですから。」
「そうか。しかし、貴族のままで居れば、そんな危険な事をしないで済むよ?」
「ありがとうございます。ですが、夢を実現したいです。」
「……分かった。それで、レキウスはリシュアの事をどう思っているんだい?」
「リシュアですか? 可愛い従姉妹です。」
「……リシュアも前途多難だな。」
「?」
「まあ、最悪と言う言い方もおかしいが、あそこは子沢山だから大丈夫か。」
「何がですか?」
「いや、何でも無いよ。」
「そうですか。」
こうして、久し振りのザーナク伯父さんとの会話が続いた。
そして、次の日に、信じられない事が起きた!
暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。
ザーナクとリシュアの父親は、同じ職場で、良くリシュアの父親から愚痴を聞かされて、その中にはリシュアの淡い恋心についても聞いていました。




