頑張りますわ~。
冒険者資格を持つ貴族が言えない事。
「解体は出来ません。」は、言えない。
言えば、「だったら、冒険者を辞めたら。」になる。
あれから3週間経過した。
フローラは、空き時間全てを冒険者業に使い、Eランクになった。
冒険者のランクの認識だけど、Gランクは初心者で、Fランクは見習いで、Eランクは半人前で、Dランクが一人前で、Cランクが三流で、Bランクが二流で、Aランクが一流で、Sランクが規格外、となる。
だから、冒険者になった者は、先ずはDランクを目指す。
そして、Cランクは、同じ冒険者から見れば三流だが、冒険者ギルド的にはCランクから外的に宣伝をしているので、依頼はCランクが1番多い。
だから、Cランクからが、「冒険者で食っている。」と言える。
ヒナは、商会の仕事のお手伝いが忙しいみたいだけど、合間に頑張ってEランクになった。
そして、今、王都を出て、森の中に居る。
一緒に居るのは、俺、ヒナ、フローラ。
何時ものメンバーだな。
同じクラスの生徒もそう認識している様だ。
それで、何故、王都を出て森の中に居るかというと、学園から出された課題で、モンスターを討伐するという郊外研修だ。
「レキ、そっちに行ったよ。」
「分かった。」
「フローラ、頑張れ。」
「分かっていますわ!」
フローラの前に、レアなネイルラビットが飛び出した。
このネイルラビットは、後ろ足の爪がホーンラビットより5cm長い。
これで蹴られると意外とバカに出来ない。
「今だ!」
「はいですわ。」
「ピギョ!」
「やりましたわ。」
フローラは持っていた槍で、見事にネイルラビットの首に槍を刺した。
この槍は、フローラが冒険者として稼いだお金で初めて買った槍で、フローラの1日は、日課の槍磨きで終わる。
防具等は学園からの貸し出しだ。
「じゃあ、解体な。」
「……はいですわ。」
「フローラ、頑張れ。」
「頑張りますわ~。」
フローラは青い顔をしながら教わった通りにネイルラビットを解体した。
「終わりましたわ~。」
「頑張ったね、フローラ。」
「お疲れ様だな、フローラ。」
「これで、私の分の課題は終わったので、私達は帰れますわね。」
「ああ。」
「しかし、やってみて分かった事ですが、レキウス。」
「何?」
「ズルいですわ。」
「ズルい、と言われてもな。やっぱり、使う時間分配の差だとしか言えないな。」
「そうですけど……」
「俺は、辺境伯領に居た時に、充分にやっていたからな。先生も良かったしな。」
「本当に贅沢ですわ! それに『魔力察知』もですわ。」
「確かに、この『魔力察知』が使える様になったら楽になったな。」
「羨ましいですわ。」
「ちょっと教えようか?」
「本当ですの?」
「ああ。」
「是非、お願いしますわ。」
「コツはな、静な湖を想像して、その湖の中心に小石を投下する。すると、波紋が拡がるだろう。そのイメージで自分の魔力を薄くして拡げるんだ。」
「そうなんだ。」
「感謝しますわ。」
俺が言った助言から、ヒナとフローラは試しに実行しているみたいだな。
ヒナもフローラも、目を閉じているから、気配を消して、音を立てずに移動する。
「「あ!」」
「レキ、動いた?」
「レキウス、移動しましたの?」
「正解。2人共、凄いな。」
「やった。」
「やりましたわ。」
「じゃあ、今度はもっと拡げてみようか。」
「うん。」
「はいですわ。」
2人とも真剣にやっている。
「「え!」」
「レキ!」
「レキウス!」
「ああ、そうだな。帰る方向を塞ぐ様に俺達に向かって来ているな。」
「どうする、レキ。」
「どうしますの、レキウス。」
「まあ。折角、向こうから来ているんだから迎撃だな。」
「レキ、大丈夫?」
「レキウス、大丈夫ですの?」
「ああ、問題ない。」
そんな事を話している間に、ソレらは俺達の前に現れた。
「そんな!」
「アレはオークですわ!」
「レキウス、まだ間に合いますわ。逃げる算段を……」
「フローラ、落ち着け!」
「レキウス……」
「大丈夫だ。」
「レキ、本当に?」
「ああ。そんな心配する事は無いよ。もう終わったし。」
「「へ!?」」
俺がそう言った瞬間、オーク3匹は倒れた。
「攻撃魔法で討伐した。」
「レキウス、詠唱は? まさか、無詠唱ですの!」
「レキ、どうやって討伐したの?」
「雷属性魔法の『雷撃針』を無詠唱で、オーク3匹の眉間に撃ち込んだ。」
「……そう、なんだ~。」
「レキウス。貴方っていう人は!」
「あれ? どうした、フローラ。」
「そんなに簡単に倒せるなら先に言いなさい!」
「言おうとしたら、フローラが……」
「言い訳しない!」
「はい!」
「クスクス。」
「……ヒナ?」
「2人共、仲良くなったね。」
「そうか。」
「ヒナ、違いますからね! 勘違いですからね!」
何か、ヒナとフローラが仲良く話している間に解体は終わった。
オークのとある場所の三点セットは、ヒナとフローラが見えない様にマジックバッグに仕舞う。
複雑な気分だが、高く売れるのが悪い!
オークは1人1匹ずつだ、と言ったら遠慮するヒナとフローラだが、ダラン達から教わったと言ったら納得した。
森の外に出ると、先生が居たから討伐した獲物を見せて合格を貰い、冒険者ギルドに行って、ネイルラビット1匹とホーンラビット8匹を売った。
オークは売らない。
人気のある食用肉だし、売っても学園の授業の一環でギルドの貢献値に入らないからだ。
しかし、俺にはアレを売らなければならないから、ヒナとフローラには先に解体場から出て貰った。
「おっちゃん。コレも。」
「……そうか。だから、先に嬢ちゃん達を行かせたのか。」
「ああ。」
「……査定が終わったぞ。受付嬢には話を通しておく。
上手く誤魔化せよ。」
「たすかったよ、おっちゃん。」
「おう。」
受付にて。
「……以上になります。後、レキウス様。前回の未払いがございます。査定が遅くなり申し訳ありませんでした。」
「いえ、大丈夫です。」
「こちらが未払い金です。」
「はい。」
「未払い金なんて有るのね。」
「ああ。解体場が忙しいとそういう事が有るんだ。」
「そうなんだー。」
「そうなのね。」
いずれはやらないといけなくなるだろうけど、精神的にもっと成長してからだな。
暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。




