態度で示してみた
どうやら、異世界から召喚されるともれなく浄化の力を持つらしい。それ故、皇国が再び聖女を召喚したのは納得は出来ないが理解は出来る。
いつもは百年に一度だが、お披露目前だったことで神官達と魔法使い達が必死になって召喚したのだろう。あと当人達しか知らないが、二人とも現状から逃れたかったので成功率が上がったと思われる。
「……すみません。私、役に立てませんでした……」
しかし理解は出来るが、やはり恵としては納得出来なかった。
せっかく良くしてくれたノヴァ達に、聖女である自分が魔国にいることで、役に立てると思ったのだが――聖女として優菜が召喚され、しかも先に聖女としてお披露目されたせいでそれも叶わなくなった。
玉座の間で映像を見て、落ち込みつつも謝った恵にノヴァはつ、と眉を上げて言った。
「自分のことじゃないのに、謝るなって」
「……今回は、違います。優菜ちゃんが来たからもう、私には何も出来ません……せっかく、連れて来て貰ったのに」
両親が死んでから、ずっとそうだった。
異世界に来たら変わると思い、聖女としてだが必要とされ――皇国では隠し事をされたが、魔国では教えて貰うことも、大切にして貰うことも出来た。だから、恵の出来ることは何でもしようと思った。
けれど今は、優菜がいる。しかもすでに、聖女として公表されている。それこそ恵のように、優菜を魔国に連れてくればノヴァが示そうとした「聖女が特定の国にいる必要はない」ことを証明出来る。
再び、己の存在価値が無くなることに俯いた恵だったが、不意に玉座に座るノヴァの前から、魔法なのか強制的に彼の膝の上に移動したことに青ざめ、慌てて離れようとした。
「えっ……えぇえーっ!?」
「こらー、暴れるなー」
「あば……って、暴れますよ重いでしょう!?」
「全然? むしろ前、魔国に連れてくる時、軽くてビビったしー。まだまだ食って、太れなー? ってかそもそも重いと思ったら、膝に乗せたりしないって」
そう言いつつノヴァは恵に腕を回し、更に肩に額を乗せて恵が逃げるのも離れるのも封じた――と言うか結果的に抱擁されてしまい、耳元で良い声で囁かれたのにたまらず恵は真っ赤になって固まった。
そんな恵には構わず、ノヴァが口を開く。
「ってか何で、俺があんな頭弱そうな女、連れてくると思ってる訳ー?」
「えっ? 聖女ですよ……?」
「どうせ皇国で、お前みたいにないことないこと言われてるだろー? 面倒臭ぇ」
「そ、れは……でも、ノヴァ君イケメンだから。優菜ちゃん、喜んでくると思い」
「まあ、それはなー」
「…………(否定とか謙遜しないんだ)」
遮られて肯定されたのに、恵は黙った。しかし考えたことが伝わったのか、ノヴァは恵の耳元で笑って話の先を続ける。
「ただ、お前と同じことはやらねーだろ? それにお前は、俺がイケメンだからって体張った訳じゃねーよな?」
「あ、はい」
「早ぇな。でも、そうだろー? お前を連れてきたのは、役に立つからじゃない。お前が体を張って、魔王の俺を信じたことを証明した馬鹿だからだ」
「え、悪口ですか?」
「いーや、褒めてる……前世も含めて、俺を怖がったり媚びへつらうんじゃなく信じる奴なんて、滅多にいねーんだよ。ここだと、ガキの頃からの付き合いのゲラダくらいか? だからあんな短時間で、俺のことを信じた奴なんて初めてだ」
さらりと重いことを言われて、恵はノヴァの顔を見ようと思ったが――腕の力を緩めては貰えなかったので、少し悩んだ末にノヴァのように恵も相手の肩口に頭を埋めた。さっきは過剰なスキンシップに照れてしまったが、彼を信じているのは本当だし、この方法だと自分の顔は見えないので示すことに抵抗はない。
さっきは青くなったり赤くなったりして離れようとしたくせに、今は慰めようとくっついた恵の頭を優しく撫でると、ノヴァは歌うように挑むように言った。
「今まで、濡れ衣着せられても面倒で放っておいたけど……次は、俺の番だなー」




