魔王様が教えてくれたこと
初めて会った時は、あまり余裕がなく――ただ、それでも綺麗だと思う顔だった。
そして、今。食事をしていた恵の隣の席に腰掛け、運ばれてきたお茶を飲んでいるノヴァは、リュカオン達より二、三歳年上に見えた。女性と間違えることはないが、男性なのに『イケメン』ではなく、やはり『綺麗』だと思うのだ。
(魔族は……魔王は、人間と同じように年を取るのかしら?)
そこまで考えたところで、ノヴァの紫の瞳がこちらに向けられたことに気づく。ジロジロ見過ぎたかと思い、恵は素直に謝った。
「す、すみません……見た目通りの年齢かどうか、気になって」
「ソコかよ? イケメンとか、そういうのはねーの?」
「あ、それは初めて会った時に思っ……失礼しました!」
「アハ! 正直な奴! ちなみに二十年くらいは人間より寿命が長くてガキの頃は早く、年寄りになったらゆるやかに成長すっけど、今は見た目通りの年齢だから」
「は、はい」
「ちなみに、魔族まではいたけど魔王の転生者は俺が初めて。んじゃ、魔王様が世界の真実? 教えてやるなー」
つい口が滑ったのに焦ったが、ノヴァは笑って答えてくれた。それにお礼を言った恵に、お茶を飲み干したカップを置いてノヴァは話し始めた。
「魔王が現れる頃、世界に瘴気が溢れるって聞いただろ? アレ、嘘だから」
「えっ!?」
「人間のヤな感情が淀んで凝って、瘴気になんの。そりゃあ、魔王が現れることで不安が増すのかもしれねーけど……そのせいで魔物、あ、俺らみたいに生まれながらの魔族と違って、瘴気のせいで暴走した獣が増えたり、病人が増えたりする訳」
「……そうだったんですね」
「だから、聖女が召喚されること自体はこっちも助かるんだよな……ただコッチを悪者にして、皇国がデカい面してくんのはムカつくけど」
「ごめんなさい」
両方の話を聞き、恵は謝罪の言葉を口にして頭を下げた。
それぞれの言い分を聞いた訳だが、それこそ魔王の出現が理由なら良い悪いはともかく、そもそもが滅ぼす発想になる筈なのだ。それをせず、ただ聖女を召喚しているところを見ると、ノヴァの説明の方が筋が通っている。
けれど謝った恵に、ノヴァはつ、と形の良い眉を顰めて言った。
「自分のことじゃないのに、謝るなよ。馬鹿? お人好し?」
「いえ……今、教えて貰うまで知りませんでしたから」
低くなった声に内心、滂沱の涙を流しながら青ざめていると、ふ、と向けられた圧が弱まった気がした。
それにおずおずと堪えきれず潤んだ目を上げると、ノヴァが何故だか面白そうに目を細めて口を開いた。
「知るのに体、張っただろ? それでも悪く思うんなら……協力して、貰おうか」




