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月を殺した日
光を通さない暗い草むらの中をひた走る人影とそれに忍び寄る白蛇が一匹。
白蛇はその鋭い眼光を標的に定め、必死に走る標的がこちらを振り向いたタイミングでがぶりと皮膚を抉った。
一撃で心臓を抉られた標的は目を見開き少しの痙攣の後やがて息絶えた。
そのことを確認し、己の牙を抜いた白蛇は倒れた物言わぬ死体を何の感情も映さない瞳で一瞥すると、こびりついた血を振り払いながら己の牙をしまい、その場から静かに踵を返した。
白蛇に食べられず残された死体は血の臭いを嗅いで来た野良犬に貪り食われ、見るも無惨な姿になっていた。
やがて夜が明ける。新月の夜だった。