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第3話 騎士団長と大賢者様 【ヒロイン登場】

 僕は門番の前に立つと、眼鏡を指で上げた。


「スキャン」


 人体のダメージを透過する医療魔法。

 

 門番の体で異常箇所を見つける。 


「あなたは腰が悪そうだ」


「何!? どうしてそれを!?」


 回復してやろう。


「ライフ!」


「え? まさか……そんな……」


 門番は腰を曲げて両手を地面に着いた。


「痛くない! 腰を曲げても痛くないぞ!!」


「どうです? 僕は役に立つでしょう?」


「うは! なんだ! 僧侶ならそう言えばいいのに!」


「いや、違う。設計士なんだ……」


 今の魔法だって、最小の魔力量でやったんだぞ。

 大事な部分はそこなんだ。


「今、団長が近くにおられるんだ。お前のことを聞いてやるから、ちょっと待ってろ」


 しばらくすると、門番は女の子を連れてきた。


 赤毛で肌の白い少女。


 華奢な体だが胸だけは大きい。


 ミニスカート姿の美しい、というか可愛い女だった。


「団長。こいつがですね。中々、腕の良い僧侶なんです!!」


「もしかしたら大賢者様かもしれないわ! あは!」


 この子が団長?

 とてもそうは見えんがな。


 彼女は僕をマジマジと見た。


 これは香水か、それとも石鹸?

 彼女は良い匂いがするな。


「……期待したけど、全然違うわね。大賢者様とは似ても似つかないわ」


 大賢者?

 なんの話だ?


「冴えない顔ねぇえ」


 団長は面倒臭そうに眉を上げた。


「ま、いいわ。その顔じゃ謀反なんて起こしそうにないしね。特別に入国を許可してあげる」


 うむ。よくわからないがなんとかなったな。


「仕事を手配して欲しいのだが?」


「ええ。いい病院を紹介してあげるわよ。丁度、僧侶が不足してんの」


「いや。僕は魔法の設計士なんだ」


「設計士? なにそれ?」


 騎士団長が設計士を知らないだと?

 この国はどうなっているんだ?


「魔法の研究所。王都にはないのか?」


「研究所ぉ? ああ! 花火設計士のことかしら?」


 は、花火設計士……。


 確かに、魔法の設計士の仕事は、祭りの時に打ち上げる花火魔法を設計するがな。


 そんなことは仕事の一環でしかないんだ。


 モンスターは年々進化して、近年魔法の需要が高まっている。


 この国が研究所を設立していない訳がないんだ。


 それでも、僕が以前いたロントモアーズの研究所。成立されたのが4年前だったからな。


 ここでも研究所の歴史は浅いのかもしれない。

 

「花火屋さんってどこにあったかしら?」


 税金で運用されている機関がこの程度だなんて、知名度は相当に低そうだ。


 彼女は地図で研究所の位置を調べていた。


 どうやら彼女が僕を案内してくれるらしい。


 知名度が低いとはいえ、研究所は公的機関なので、団長の責任が伴うのだ。


「私はジルベスタル第二騎士団長、カルナ・オルセット。歳は17よ。こう見えて一応団長だからね。甘く見ない方がいいわよ」


 そのようだな。

 剣の腕がなければ団長などにはなれないだろう。


「僕はアリアス・ユーリィ。 20歳だ」


「20歳……。じゃあ、大賢者様と同じ歳ね。でもぉ……。あんたじゃないわよね」


「さっきから、その大賢者様って、誰のことだい?」


「ふふん。これを作った人よ!」


 彼女は得意げにペンダントを見せた。


 そこには赤い宝石が付いている。


 おや、これって……。


「ちょっと、見せてもらってもいいかい?」


「ふふん。仕方ないわね。見せてあげるけど、慎重に扱いなさいよね。大事な物なんだから」


 これは魔宝石だ。


 中に炎魔法が閉じ込められている……。

 

 ファイヤーボールの永久機関。


 炎魔法を樹脂で固めてガラスでコーティングしたんだ。


「凄いでしょ? 10年も燃え続けているのよ。うふふ。花火師ならその価値がわかるんじゃない?」


 僕は設計士だがな。


「これをどこで?」


「もらったの! 大賢者様にね!」


 彼女は嬉しそうに空を見上げた。


「もう12年前になるかな。私が5歳の時だったわ。オーゴットの川辺に家族で旅行に行ったのよ。その時に出会っちゃったの! うふふ。運命の人にね!」


 オーゴットといえば僕の生まれ育った地域じゃないか。


「その人は色んな魔法が使えてね。凄いんだから! それでこの炎の魔宝石を私に作ってプレゼントしてくれたの!」


「ほぉ……その人の名前は聞いたのか?」


「名前は聞けなかったわ。だって……」


「?」


「心臓がドキドキして張り裂けそうだったんですものーーーー!!」


 恋心ってやつか。


「その人の顔は凄まじくカッコよくてね! あんたなんかとは月とスライムって感じよ! 博識でね。色んなことを知っているんだから!! 目はキリリとしててね。まつ毛なんて物凄く長いんだから! 声も透き通っていてね。ンキャーー! イケボイスってやつよ♡ 全身がキラキラ輝いて、天使みたいだったわ!」


「ほぉ……」


「私はね。彼に一目惚れしてしまったの! その日以来、大賢者様のことは忘れたことがないわ。きっと運命の人なのよ!」


「大賢者ねぇ……。10年も会ってないんだろ? その人の職業なんてわからないじゃないか?」


「あら、疑うの? こんなに凄い魔宝石を作っちゃうのよ! それに、たくさんの魔法が使えたしね! 今頃は大賢者になって大陸に名を馳せているに決まっているわよ!!」


「ふーーん」


「大賢者様だって戦争に巻き込まれれば国を失うわ。もしやと思って期待したけどね。あんたみたいに冴えない男だったとはねぇ……」


「それは悪かったな」


「じゃあ、宝石返して。大事な物なんだからね」


 10年も前となると思い出補正がかかるものなのだな。


 子供の頃はなんでも良く見える。


 あの頃、当時8歳の僕は実験が大好きだった。


 様々な魔法を習得して、アイテムに加工したりしたもんだ。


 みんなが喜ぶからと、そこら中にプレゼントしていたっけ。


 そういえば、あの頃はまだ視力が良かったからな。


 メガネをしていなかった。


 だから余計に印象が違うのかもしれん。


「じゃあ、王都を案内してあげるから着いてきなさいよ」


「ああ。頼むよ」


「さっき門番は、アリアスの魔法を絶賛してたけどさ。本当は大したことないんじゃないの? 腕のいい職人なら諸外国から引く手数多なんだからさ」


「ふふふ。まぁそうかもな」


「仕方ないわねぇ。うちの国で面倒みてあげるから感謝しなさいよ」


「うむ。助かる」


 あの魔宝石……。


 間違いない。




 10年前に僕が作った物だ。




 しかし、このことは黙っておくとしようか。


 彼女の大賢者様は大陸に名を馳せておられるからな。

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