6話:登場、花恋
それから、二週間相変わらずの日々が続いていた。だがそんな日々もある日突然終わりを告げた。あの女が現れたのだ。
「あー……疲れた。」俺はヤンキー部に連日喧嘩を売られ憔悴していた。今は襲いかかってきた三人組をかわしてなんとか屋上に逃げ込んだところだ。ここには誰もいなくて助かった。
屋上はスペースがかなり広く子どものサッカーの試合ぐらいなら出来そうなほどだ。また鉄格子の柵で囲まれていてそう簡単には落ちないようにされている。
山田先輩に会うことは未だに出来ていない。学校にも来ていないのかもしれない。個人情報保護とかで先生は教えてくれなかった。
山田先輩に会って情報共有することもままならない状況なのに最近クラスメイトからの俺の評価が劇的に下がっていると友達から告げられた。俺のせいでヤンキー部が凶悪化しているというデマが学校で流布されているらしい。誰が流したのかわからないがどうにかしないと……。
ふらふらしながら屋上の端へと座り込む。
最近考えることが多すぎて夜もろくに眠れていなかった。不良どもがくるまで少し眠ろうと考え目を瞑った瞬間、俺の足下に棒状に圧縮された水が俺に向かってきて地面とぶつかった途端弾けた。バチンと水が当たったとは思えない音がした。
なんなんだ?と思いながら目を開けるとそこには一人の少女が立っていた。
俺より十cm小さい身長。金髪のショートボブに自信ありげな紅い瞳。顔には少し怒りを滲ませている。だが俺も少し怒っている。せっかくの睡眠タイムを邪魔されたのだから。
「誰だ?お前は。人が寝ようとしてる時にいきなり攻撃してくるなんて、ヤンキー部かなにかか?」と俺が挑発するとその少女は
「誰がヤンキー部活よ!あんな野蛮な奴らと一緒にしないで!私は如月花恋!学園管理部の部長で学校を正す正義のヒーローよ!それよりあんたね、最近の治安悪化の原因でありヤンキーの部長、坂城悪人!御用よ!」と明らかに怒りながら自己紹介をした。
ながったらしい花恋とかいう少女の自己紹介は俺の耳には一ミリも入って来てはいなかった。俺がヤンキー部の凶悪化の原因というところ以外は。
「は?俺がヤンキー部の部長?しかも治安悪化の原因が俺だと?意味がわからんぞ。」
俺の頭には永遠にハテナが浮かんできていた。
「んん?そのままの意味よ。ちょうど二週間前にヤンキー部の連中が署名をあつめて申請書を持ってきたのよ。」
「は?」
ヤンキー部が、署名を俺を部長に無理やり仕立て上げたのか。恐らく山田先輩主導だ。俺が断り続けたから強行手段をとったのだろう。てか俺が居なくてもそんなことが承認されたのか……。なんてことを……。
「持ってきた日からこの学校は荒れだした。アンタが部長に就任したその日からね!もう証拠は上がってる。観念して大人しくボコボコにされるか話し合うか選びなさい!」