5話:影での暗躍
あの時騒がしい教室の隅で二人の不良が今校内を悪い意味で騒がしている悪人の噂話をしていた。
「なぁ、なんなんだ?アイツ。悪人とかいったっけか?アイツに付きっきりでリーダーは俺らに命令もしてこないし、喧嘩もないし最近つまらねえよな。」
「それな。あいつ喧嘩でリーダーに勝ったなんて噂されてるけど絶対嘘だよな。」
どうやら彼らは悪人と彼らのリーダーである山田が悪人にしか構わない状況に対して不満が溜まっているようだった。彼らの悪口は勢いをまし段々熱を帯びてきて騒がしい教室でも耳をすませば聞こえるほどの声量になっていた。
「悪人も卑怯なやつだぜ。多分リーダーは金かなんかで買収されたんだろうな!」
「うわ、まじかよ……あの人金で釣られるなんてな。」
「リーダーも大したことないよな!俺なら金だったら断るのによ。」
「そうだな。」
と悪口をひとしきり言い終わったあとギャハハと笑った。
「なあ、もうこれから俺たちで好き勝手やっちまわねーか?リーダーには止められてたけどよ……。今のリーダーは頼りになんねーし悪人も大して強そうな奴だとは思えねーし。俺たちの天下きただろ。」
「あぁ、そうだな。もうあんな人にはついていけねーわ。もう好き勝手やろうぜ。」
「おい、二人とも。少しいいか。」
二人が悪どい案を考えていたところ先程まで黙っていた一人の男が会話に割り込んだ。
「なんだよ、ロイ。何か言いたいことでもあんのか?」
「ああ、俺に考えがある。」
ロイ、と呼ばれた鼻にピアスをつけた男はヤンキー部特有のニヤニヤ顔を貼り付けたまま二人に耳打ちし、考えを伝えた。
二人はロイが考えた作戦に「おぉ」と感嘆の声を漏らしていた。
ロイは「まあ、任せておけよ。いい作戦があるんだ。」と言った後今までと違ったクククという不気味な笑いをして他の二人を連れて教室を去った。
俺は食堂の端に座りカレーを食べながら考えていた。最近なんだか学校が荒れてきている気がする、と。今までよりずっと。というのも最近自販機が破壊されたり部活動で使う道具が破壊されたり隠されたり食券を強奪したりともはや犯罪と言えるような行為が横行しているのだ。今までのしょうもない列の横入り等の悪戯とは違い許されない行為が増えている。
それにリーゼント部や俺の監視に来ていたヤンキー部の数が極端に減りそれは喜ばしいのだが彼らはこれらの犯罪に加担しているらしい。教師もなんとか対応しているようだが不良の数が多すぎて収拾がつかないらしいのだ。この状況を打破できるのは山田先輩ぐらいじゃないのか?山田先輩は何をやってるんだ?山田先輩もヤンキー部が暴力的になりだしてから俺の前に姿を表していない。ヤンキー部の奴らに下克上されてなければいいんだが。
食事をすませ俺の楽園、食堂が荒らされなければいいなと思いながら食堂を出ると、いきなり二人の不良に殴りかかられた。
「腹減った!食券よこせ!」
ぼす。
「ん?」
敵意に無意識に手が出ていて二人の不良が地面に倒れていた。
まただ。最近やたらとヤンキー部の奴らに絡まれる。無視したいのだが話す暇もなく殴りかかってくるので気絶させて大人しくするしかない。ヤンキー部は頭がいい奴が多い訳ではなかったがこんなに好戦的で話が通じない奴らばかりではなかった筈なのだが……。ヤンキー部に何があったんだろうか。山田先輩に一度会って話を聞きたい。
気絶させた不良たちをいつも通り保健室送りにしてとりあえず山田先輩に会いに行くことにした。はぁ……誰にも殴りかかられることのない普通の日々が戻るのはいつになるやら。