2話-先輩何か用ですか?
薄暗く、誰も人が来ないような寂れた体育倉庫裏に俺は呼び出された。見たところ先輩は三人のようだ。
「すいません。何の用ですか。」
「あぁん!?おめぇよぉ、最近調子のってんじゃねぇのか?あ?どうなんだ?」
リーダー格のガタイがいいスキンヘッドの先輩が俺の顔に息がかかるほどに近づいてきて捲し立てる。それを見て取り巻きはゲラゲラと笑っている。
「いえ、そんなことは……」
あぁ……まただ。また不良に絡まれて普通でなくなってしまう。
逃げよう。
「先輩、俺は用があるのでこれで。」
そう言って足早に立ち去ろうとしたときドン!と近くにあった錆びたロッカーをスキンヘッドがロッカーが、
へこむほどの力で殴った。
「ああ?待てよ。俺たちの話はまだ終わってねーぞ?俺たちは可愛い後輩のお前と話したいだけなんだよ。なぁ?」
話を振られた取り巻き二人のチビの方が
「あぁ、そうだよ!俺たち流のお話、しようぜ?」
と言ってニヤニヤしながら三人がかりで俺を囲った。
「……何をするつもりですか?」
今から起こることを薄々察しながらも尋ねる。その問いで帰ってきた解は拳だった。三人組のチビの先輩が俺のみぞおちにパンチをいれる。涎を垂らしながらも歯を食い縛りなんとか耐えるがリーダーと背の高いヤンキーがこちらの顔面を殴ったり脛を蹴ったりしてきた。思わぬ連撃に少しふらつき倒れこむ。
「ゲホッ、ゲホッ。」
「ん?まだ俺のお話は終わってないぞー?」
スキンヘッドは倒れている俺の腹に蹴りをいれる踏みつけるなどの暴行を続ける。
「大体お前よ?なんか生意気だし調子のってるよな?どうにかならないのかよ?どうせ友達もいないんだろ?可哀想だな。」
ギャハハハと下卑た笑いが辺りに響きわたる。
「……」
手をださない、手をださない。俺は黙ってなんとかこの場を何事もなく納めようとする。ここで手をだしたら俺は……
「お前どこに居ても浮いてんぞ?はは、普通じゃねーな。」
とどめの一撃といわんばかりに大声で俺の尊厳を踏みにじるようにスキンヘッドは笑い取り巻きもつられて笑った。
普通じゃない。普通じゃない……?。どんな悪口も暴力も痛みも俺には届かない。だがその一言、その一言だけ許せない。
「俺は……」
「あ、なんだって?もっと大声で言えや。タコ。」
「あぁ!?俺は異常者なんかじゃない!普通だっつってんだよ、この雑魚どもが!」