1話:俺は……
「悪人!行くよ!」
「あぁ、はいはい。すぐ行くから!」
いい終わる前に花恋の姿はもう見えなくなっていた。
畜生!俺がどうしてこんなことに……学園管理部の部室で今、俺は一応相棒である花恋の野郎に呼ばれて俺たちの仕事道具である木材バットや特製水鉄砲などの準備をさせられていた。
俺が何故か花恋の道具の準備までしているのにあいつはさっきまで呑気に麦茶を飲んでいた。そのくせ早くこいなんてめちゃくちゃな事を言う。
花恋が急いでいるのはまた校内のどこかで暴行事件でも起きたのだろう。この学校では認めたくないが日常茶飯事だ。
これを日常から非日常へと変えるため俺と花恋は活動しているんだ、確か。
俺は最低限事件の対処に必要なものを両手でもち瓦礫が散乱した廊下へ飛び出し花恋を追いかけた。
全速力で人混みをかき分け走りながら俺は自分がこんな訳の分からない状況に置かれている訳について自問した。
理由は1つ、あの事件。それもこれも1ヶ月前のあの出来事まで遡る。
1ヶ月前、俺坂城悪人はこの学校にならどこにでもいるような不良の1人だった。俺は名前が悪人といういかにも縁起の悪い名前のせいか、黒髪には白髪がまじり逆立ち言葉使いや態度が悪くなってしまった。
その上常に睡眠不足で目付きが良くない、はっきり言って悪いので一般人には睨んでいる!と勘違いされ怯えられ、不良には絡まれ殴り殴られと大変な目にあってここまで育ってきた。幸か不幸かそのお陰で不良には負けないくらい強くなった。
だが強くなったせいで毎日毎日喧嘩や抗争に巻き込まれそんな日々に俺はうんざりしていた。
そんな時この学校に入学した。この学校に入れば何か変わると思った。不良を辞められると思った。自由な校風。個性豊かな人々。彼らが俺を変えてくれる。そう期待していたのに……この学校の生徒は俺の想像以上の奴らばかりだった。
気づくと俺はいつのまにか不良グループの仲間入れを果たしていた。まあ、仲間が出来たしいいかと楽観的に不良たちとがやがや過ごしていると入学して1週間もたたないうちに1学年上の先輩に呼び出された。俺の生い立ちとこの後に起こる事件が俺と花恋がコンビを組むことになった原因だ。