異能感染症
深夜テンションのノリと勢いで書きました
人間生きてると何が起こるか分からないもんなんだ。
流されるまま生きてきても劇的な場面に出会うこともある。
目の前には悪人面のヤバイ奴、背後には頭から血を流して気絶してる女の子、俺は立ち塞ぐように間に立っている。
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「おい、聞いたか!一組の前原が出たらしいぞ!」
「聞いた聞いた!"異能症"になったんでしょ」
"異能症"…
5年ほど前に発見された現象
発症したものはいわゆる超能力に目覚めるらしい。なんでも手の平から火を吹いたり、電気を発したりなるとかどうとか
「いいなー、私もなりたいなぁ」
「超能力とか目覚めて有名になりてぇよなぁ〜」
同時多発的に全世界に起きてるソレは感染症とされてるが、発生原因は一切不明だとか。超能力に目覚めてテロリストを鎮圧するなんて夢を叶えてみたいと俺も思う。
「前原君に会いに行ってみる?」
「もう大行列出来てるよ、みんな握手とか求めてるらしいぜ」
顔も知らないが前原君は大変だな
朝の教室はそんな話題でいっぱいだった
︙
今日は半日で授業も終わり
つまらん時間も終わり、楽しみの時間だ
今日の昼飯は何を食べようか…!
半日授業のときの日課である。
新たなる味覚との出合いを楽しむため、気分のままにアチラコチラに散歩する
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はて、小一時間ほど歩いたがいい店が見つからん。
見たことの商店街に来たものの、見事にシャッターだらけだ
こっち方面は駄目だったか…
逆の方面行ってみるかぁ
一歩歩みだした瞬間、目の前で破裂音が起こる
「う…ぐぁ…」
そこには苦しそうな声を漏らす女の子が倒れていた。
「え…あ…?」
そんな音が口から漏れてしまう
何が起きたか理解するまでに1、2秒かかってしまった
「おい、大丈夫か!?」
女の子の意識はない、救急車を呼ばなくては…
スマフォを取り出し119を掛けよう
その時二度目だった
背後から先程と同じような破裂音がした
「あ?何だお前?」
見るからにチンピラな奴が立っていた
こっちにメンチを利かしてる
怖い、怖い、怖い、そんな感情が一瞬で全身を埋め尽くす。コイツは間違いなく"異能症"だ。本能が危険を告げている
「どけ雑魚、俺はその女に用があるんだよ」
チンピラの威圧に一歩身を引いてしまった。その拍子に足がもつれて尻餅をついてしまう
「鈍臭え野郎だな」
「ま、関係ねぇ雑魚に何もしねぇよ」
安堵してしまった。
心に余裕が出来たその時だった。
ふと女の子の顔を見た。頭から血が一筋に流れてる。可愛い顔だと思った。どうにも凝視してしまう
「ソイツいい顔してんだろ?」
下卑な顔で男は嗤う、チンピラはこの子を襲う気なんだ。
でも仕方ない、コイツは"異能症"を発症していて、この子は運が悪くコイツに目を付けられてしまった
俺には関係ない
「あ?お前何してんの?」
気がつくと俺は目の前の悪人面に立ち塞がっていた
理不尽過ぎてムカつく、運が悪いだけで人生が壊されるなんてあってたまるか
それが俺に関係なくても視界に入るだけで虫唾が走る
だから思ったことを声に出して言ってやった
「お前、顔キモいよ」
「ぶっ殺す」
形容し難い顔になってるチンピラは右手を空に掲げた
「格好付けやがって死ねや」
右手には光る玉が浮かび上がる
やべぇ、全力で逃げよう
チンピラから離れるように全力で走り出した!
「逃げんな雑魚ぉぉぉ」
光弾をこちらに投げつけて来た
あ、ドッチボールだこれ
避けれそう
横飛びして光弾を避ける
危なかったわ、怖かったわ
後ろから怒号が響く
ふと目を移すとシャッターがベコリと凹んでいた
いややっぱ怖えええええ
当たったら骨折れそうだし…
「けっ、当たらなかったか」
そう言いながら次弾を作り始めているチンピラ
冷静になろう
心を落ち着かせて再度チンピラを見る
良い体格ではない、むしろ筋肉は無い方だ
恐怖で見えてなかったが、よく見るとそんなに強くなさそう。
ドッチボール並みの速度の光弾がアイツの武器だ
こっちは現状カバンだけ…
周りを軽く見渡す
植木鉢、角材、ビール瓶とそのケース
武器になりそうなのはそれぐらい
気づくと次弾が飛んできたがそれも避ける
チンピラが避けたことに対してなんか言ってるが気にしたら負けだ
また次弾の準備をし始めるチンピラ
俺はスキを見て角材とビール瓶を持つ
ビール瓶をキャッチアンドスローする
「あぶねぇなぁ」
避ける動作に合わせて距離を詰める
ふと気づく、あいつの用意してた次弾が消えた。
動くと消えるのか、集中力を要するのか分からんが中断させることが可能ぽいな
「逃げたと思ったらまた来んのかよ」
「木の棒なんて持ちやがって、殴り合いなら勝てると思ったのかよッッ!」
足元に転がってるビール瓶をチンピラが思いっきり踏んづける
ガラスが割れる音が周囲に響く…
あれ、ビール瓶って踏んづけて割れるような強度だっけ?てかアイツの踏んだところコンクリートにヒビ入ってね?
「肉体強化って知ってるか?クソ雑魚」
ウッソだろ、反則やんそんなん
三下みたいな言動でヒョロガリの癖に遠距離から近距
離まで対応かよ
「ビビっても遅えぞ、震えてんじゃねぇか」
「ボコボコにしてやんよ」
ニヤけながらこっちにジリジリと近寄ってくるチンピラ
手が震える、ヴァイブレーションしてる
もちろん演技だ
こちらが格下なのは百も承知してる
だからこそ格下を演じる、油断を誘いそこを指す
いくら肉体を強化しようが人体の急所は変わらない
中学校の時に剣道してて良かった
剣道の防具ってのは人体の急所も守ってる
だから守ってた場所を突けばいい、それだけで人は怯むのだから
今すべき事は弱者を演じきる事
避けれる速度で角材を大振りにしてチンピラに殴りかかる
「危ねえなあ」
避けかたで確信した、コイツは格闘経験も無ければ喧嘩慣れもしてない大振りな避け方
俺は震えて後退りする
奴にとって圧倒的強者による弱者の蹂躪を演出する
想定通りにソレを見てチンピラは気分良くコチラに近づいてくる
角材が掴まれた、正確には掴ませてやった。
武器なんて無力化するに限る、掴めるように仕向けてやれば素人なら掴んでくれる
チンピラの大振りな殴り動作に合わせて角材を押して引く
筋力が上がっていたとしても体重が変わるわけではない、そして武器を動かせないように強く掴んでいる、だからこそがヒョロガリなコイツの簡単に重心をずらせる
バランスを崩したチンピラの喉を拳で思い切り突いた
するとチンピラは強く咳き込み、角材から手を離した
そうなるのも知ってる
部活でふざけて突きの練習しても、防具越しで咳き込むんだ
拳でもモロに喉で受けたら数秒は動けなくなる
腰を低くし、息苦しそうにしてるチンピラ
こめかみに思い切り蹴りを入れてやった
チンピラは倒れ込み、咽ながらこめかみを抑えてうずくまる
うわ、痛そう
やった自分で思うのもあれだか、痛そう
これ以上やると死にかねないので放っといてやろう
ていうか弱かったなコイツ
おっと、119と110を掛けねば
︙
通報後、女の子の様子を見る
頭を強く打ったぽいから下手に動かせない
救急隊が来るまで動かさないほうが良さそうだ
ふと思考にふけっていると後ろから微かな物音がした
そこには先程のドッチボールとは比較にならない大きさの光弾があった
チンピラはもうマトモに立ててすらいない
ただ目には明確な殺意があった
俺は今日二度目の恐怖が全身を包んでいた
あの光弾を受けたら死ぬそれだけは本能で理解した
ただ先程とは違う、頭は冴えている。
避ければいいだけなのだ
避ける体制に移行したときある事に気付く
俺が避ける光弾の射線には女の子がいる。そして彼女は意識が無く、避けることなど到底出来ない
気付くと俺は光弾をに向けて走り出していた。
何でそうしたか自分でも理解できない、思考が巡った時にはすでに視界は真っ白だった。
人間生きてると何が起こるか分からないもんなんだ。
今俺は死に向かって走り出している
一発ネタなのですが、続編希望がある場合は書きます