前置き
光が。
闇が。
ヒラヒラと、ハラハラと舞う。
足元には、水。
一面の水。
白いローブの少女が一人たっていた。
『…は…………るの?』
「へ?」
『貴方は………るの?』
「よく聞こえない…。」
少女が何かを語り掛けているのに耳に重要な部分は入ってこない。
近付こうとすると遠ざかる。
少女は泣きそうな顔で僕を見つめる。
なんだか見覚えがあるような。
そんな気がして。
あぁ。言うなら既視感とか言う奴だろう。
ましてや僕は寝ているはずじゃないか。
確か昨日ゲームをしつつ話していたはずで。
ゲームの様な、ライトノベルの様な、そんなことは起こり得るはずがなくて。
「おっきろー!!!興樹!!迎えに来たぞー!」
七面倒臭い幼なじみが、僕に馬乗りになり身体を揺さぶる。
寝返りを打って彼女を落とす。
これも毎日の恒例となっている。
「興樹起きやがれ!ちくせう!」
女の子がそんな言葉を使うな。
まぁ悔しそうにしている彼女は可愛らしいとおもうのだけど。
『悪趣味だ』なんて良く言われる。
知ってる。
一番僕がタチ悪い。
だがしかし反省をしているわけもなく毎度同じ事を繰り返すわけなのだが。
「美那子ちゃん煩い。」
寝言の如くぶちかます一言。
これも毎日の恒例となっている。
「理不尽!!!!!!!!!!!!」
そういいつつ再び乗ってくるあたり彼女は僕に襲われたいのでしょうか。
割と真面目に。
それ相応に発育した胸に、肉体。
僕も健全たる男子なわけで。
当たれば誰だって反応しちゃうわけで。
ここ何年かこれをされるのが困るわけで。
なんていっぱいいっぱいになっていると不貞腐れている彼女が目の端に入った。
「あー…もぅ。わかったよ。わかりました。起きます。起きますよー。」
半ばヤケである。
僕としたら十分耐えたほうだと思う。
僕の名前は摺河興樹。
一応高校生、しかも受験生。
ついでに言うなら予備校にも通ってる。
そして今日はたまの休日なのだが。
この七面倒臭い幼なじみ…真堀美那子に誘われてこれから出かけようという訳である。
インドア最高!な僕からしたら外に出るなんて辛い作業なわけなのだが。
ただ単純に公園だったなら僕だって気分転換に行きたいところだ。
それこそ、「ロリ、ショタ、万歳!」と言う感じだ。
あそこは天国だ。間違いなく。
……だが言っておこう。
僕は変態じゃない。
ロリショタコンでもない。
ただ子供が好きなだけだ。
しかし今回行く場所は。
「……なんで美那子ちゃんと二人で。しかも、ただのイベントの為に僕が付き合ってプラネタリウム……」
幼女も、ショタも、ロリも、少女もいないじゃないかっ…!!
何度もいうが僕は変態じゃない。
ロリショタコンでも、なんでもない。
子供が好きなだけだ!
純粋に。
そんなわけでプラネタリウムへ向けて僕たちは出掛けた。
出掛けた…とはいえ。
道中はただの雑談だったわけだが。
「興樹。朝弱いのなんとかしなよ。私が起こすの日課になっちゃって、彼女できて私が起こしに来たら修羅場なんていやなんだから。」
「あれが無いと最近始まんないんだよ。朝が。」
「ったく。別にアンタの為に来てるんじゃなくて私の弄る相手が居ないからなんだからね!」
なんていうか微妙なツンデレありがとうございます。
そして弄ってるんじゃなく、弄られてるの間違いでしょ。とも正せずに黙って歩く。
そしてなんだかんだ進路の話になる。
最初に言った通り僕は受験生である。
そして彼女もまた、受験生である。
彼女の方は進路が専門学校らしい。
敢えて聞かなくても彼女の趣味は。
〈アニメ関係〉である。
いや、まぁ……所謂腐女子。
本人が公言しているのだからまぁバレた所で僕にとっては別に構わないわけだ。
アニメ関係の仕事…志望はイラストレーター、または声優だとか。
そういったものに就きたいと言う感じだそうだ。
僕はというと。
「……なんだかなぁ………。」
「ん?どうしたの?」
「…や。なんでもない。」
「なんだよー。言えよー。」
「あ。着いたぞ?」
話を逸らす。
深い意味はない。
着いたのに間違いはないのだから。
「あ。うん。」
嬉しそうにして彼女はなかにはいっていく。
僕はこの彼女の事が好きらしい。
自覚はしている。
言うつもりがないわけで。
彼女には彼氏がいるわけで。
本当だったら彼氏と行く予定だったらしいのだが無くなったらしく僕にその役目が回ってきただけなのだ。
告白しようとタイミングを見計らっていたら彼氏ができたらしい。
彼女が幸せなら。
なんて、思ってしまう。
プラネタリウムの中はしんと静まり返っていた。
客も疎ら。
女性が多いのはきっとイベントのためだろう。
御決まりの館内放送。
御決まり…とはいえ、今をときめく声優が
館内放送しているとなると話は別のようで。
『本日は御来館頂き誠にありがとうございます。』
とアナウンスが入るや否や女子特有の黄色い声。
これがちびっ子ならどれだけテンションが上がることか。
彼女はというと。
「あー……マジなっきーかっけー………」