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10.繋ぐ真実と過去!?

 同じ頃、寝室から出てきたカルは部屋でまだ二人が言い争いを続けていたことに溜め息をついた。


 ただし、二人とも声が弱々しい。

 片方は目の下にクマが出来ている。もう片方は羽が萎れたようになっていたが、それでもまだ言い合っていた。

 あほ、だとか、唐揚げ、だとかを背後に聞きながら、カルは寝起きのままの姿で窓から王宮を望む。

「今頃、大騒ぎかな?」


 その声でニコとザーンがカルに気付く。

「おっす、カル」

「おはよう、カル」

「おはよう、二人とも」

 ニコが聞く。

「何を見てるんだ?」

「ん、王宮! 今頃、きっと大騒ぎ」

 ケラケラと笑ってカルは王宮を指差した。それを見て、ザーンがオロオロとする。

「どうするんだ!? 絶対、バレている」

「心配ないわ」

 カルは寝室にとって返すと昨日の服から例の小瓶を取り出し、とって返す。

「コレ。特殊な幻覚剤よ。見た人が最初に思い込んだ相手の顔に見せる、本当に特殊なもの」

「それを?」

「そっ! あなたの顔型に振りかけておいたの! だから大丈夫。今頃はきっとあんたが死んだと思われているんじゃない? だから大丈夫――心配ないわ」


「おいっ!」

 ザーンは顔だけを出して、カルを睨んだ。

「なんで私がこんな汚い部屋に入らなければいけないんだ」

 汚いという単語に少しだけ腹がたったが、時間がない。仕方がないから飲み込んだ。

 金庫から額飾りを取り出す。薄暗い部屋のなかで、それは明るい輝きを放つ。

「今からこれの依頼人が来るんだから、そこでおとなしくしてて! 何も触るな、見るな、聞くな、音を立てるな、息もするな」

「息もか……」

「なあ、こんな奴、追い出しちまえよう」

 定位置のニコが、欠伸を噛み殺しながら呟いた。

 呟きが聞こえたらしいザーンが、端正な顔を歪ませて意地悪く笑う。

「……烏の焼き鳥って淡白で旨いらしいね」

「カル、俺、喰われちまうよう」

 部屋から出てきたザーンがジリジリとニコに近寄る。

 そんな一人と一匹の様子を見て、溜め息を付き、声を張り上げた。

「だから早く入れ! ニコも、いつも通り隠れてて」

「わかってるよう。おりゃ、いつも通りの衝立の影。そこの邪魔物も早く消えろよな」

 しぶしぶだがザーンも奥の部屋に入り、ニコも視界から消える。


 あの日から一日たった。ザーンとニコは悪友と化し、カルは逆に頭を痛めていたが、今から依頼人がやってくる。

 鏡を覗き込むと、年齢は二十歳前後に見える女がいた。やや跳ねてしまった毛先を整え、カルは呟く。

「……そろそろかな」

 同時に扉がノックされ、声が向こうから響く。

「ダダイです。入りますよ」

 声は仲介屋だった。時計を確認すれば、まさに時間通りだ。

「どうぞ。依頼人は?」

「一緒にいます」

 扉はぎいっと錆びた音をたてて開いた。

 手前にダダイ、いつもの仲介屋だ。その後ろに依頼人。

「こんばんは、どうぞ椅子にお座りになって。目隠しは外していただいて結構です」

 この場所を知られない為に、依頼人が来る時は目隠しをしてもらっている。今回に限っては、一度ここへ出入りしている相手なので必要ないかもしれないが。 依頼人はゆっくりと目隠しを外した。黒い瞳が凄烈な光を宿していた。

 依頼人は促された通り長椅子に座った。それを確認してカルも正面に座る。

「……依頼したものは?」

「――ここに」

 カシャンと繊細な音をたてて、額飾りは間のテーブルに置かれた。依頼人はすかさず手を伸ばす。

 しかしカルは素早くそれを引っ込めた。

「お渡しする前によろしいですか。私には不に落ちないことがあります。聞いても?」

 そこで入ってから気配を消していたダダイが慌てた。

「カルさん! 詮索はいけません。仲介時に申し上げたでしょうっ!」

 依頼人はそれを手だけで制す。

「何だね?」


 本当に聞きたいことは声にならない。

 ――ここでは、ダダイのいる前では聞けないわ……。

 それに聞きたいことはひとつのではなかった。

 カルは一瞬、考え込む。

 効果的な質問が必要だ。確実に答えてもらうために。

「……《月の塔》はどう考えても、この額飾りを置くのに適当な場所とは思えません。何故あの場所を指定されたんですか?」

 ザーンが頂上階にいた理由。

 隠し階段の存在を知っていなければ開くことは出来ないだろう。

 いくらザーンが王族だからと言っても《月の塔》はそもそも高貴な人物や闇から闇に葬るべき人物を幽閉するための優美だが堅固な牢だ。そこに閉じ込められた本人が、いくら鍵がかかっていたとしても隠し階段を知っていたとは思えない。

 だが、依頼人は口を開かない。眉間に皺を寄せて考え込んでしまった。

「お答えいただけませんか?」

 再び同じ質問に依頼人はカルを見た。

「それは――」


「私の為だろう?」

 奥の扉が開いた。ザーンの姿を認め、男の飄々とした気配が一瞬乱れる。

「あんた何で出てきてるの!? 戻って!」

「カルさんこの方誰ですかっ!?」

 カルとダダイは同時に叫ぶ。さして広くもない室内に共鳴し、その為カルがダダイの言葉を理解出来たのは数瞬後のこと。

 そんな二人をちらっと横目で見て、ザーンは依頼人をじっと見つめた。

 その口が紡いだ言葉は、カルを驚愕させるには十分だった。

「こんな所で何してるんだ――兄上」


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