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第六話 魔導義肢

最近更新してしばらくしてからも小説へのアクセスが何件かあり、とても嬉しく思っている鈴兎です。

現在累計PVが500に迫り、ユニークアクセスは100を超え、私のモチベは中々に高いです。

読者皆様、今後ともよろしくお願いします。

「さぁガリュオン、以前の私だと思って甘く見ていると、怪我しますよ?」

「(愚かなり。たった一月で何が出来ようというのか。だが、一年。それで貴様を我の足元にまで引き上げてやろう)」

「半年」

「(ほう?)」

「半年で魔獣を倒す。出来なければ殺されてでも殺すまで」


 これ以上はダメだ。半年あればおそらくマスターが本格的に動きを再開してしまう。

 今はまだ怪我のせいで体力が落ちているが、後半年もすればたとえ体力が戻らずともあのマスターならば無理を承知で魔獣討伐に向かってしまうだろう。

 逆に言えば半年なら騙し騙しで時間を稼げるはずなのだ。だから私は半年で魔獣とのケリを付けなければならないと考えていた。


「(……よかろう、しかし、それ故に我との戦いで死ぬ事になるやもしれんぞ?)」

「それはこれを見てから言ってもらいましょうか……」


 右足を地面に向かって勢い良く踏み込む。

 それと同時に新しく製作した右足の外側の付け根に嵌め込まれている炎の様に燃え盛る真っ赤な魔核に魔力を全力で注ぎ込んだ。

 すると魔核が赤く光り輝くと共に私の右足を光で包み込んでいく。


「(これは……なるほど、一月でここまで変わるとはやはり人間の技術とは恐ろしい物よ)」

「これが私の、私たちの力だ……『七変加速(セブンスアクセル)』!!!」


 私の声に呼応するかのように右足の輝きが霧散し、新たな右足の本来の姿が現れる。

 真っ赤な軽装甲を纏う右足、だがそれは纏っているのではなくその装甲そのものが自身の右足。

 真っ赤な装甲からはゆらゆらと揺れる様に朱色の魔力が漏れ出し、それはまるで炎を纏っているかのようだ。

 『七変加速』、それがこの右足、魔導人形用の魔核を材料とし、魔導義肢として新に作り替えた物の名前。この足の強さは名前の通り、速さに重きを置いている。

 あの日から私が考えていたのは目の前のエンペラーウルフ、ガリュオンの圧倒的なまでの速度に追いつく方法だった。そして考えた末に見出した答えが純魔核製、世界中を探しても恐らくはこの一本のみの高品質魔導義肢。

 その性能は魔力を注ぎ込み続けることによって徐々に速さを増していき、性能的に実現出来る最高速度ならば恐らくガリュオンを超えることも出来るほどだ。

 だが、この魔導義肢には秘密がある。それがこれだ。

 自己分析結果。


<個体名称>【ユーリ】

<主人>【メリエル・ファウル】

<貯蔵魔力>500/1000

<所有技能>50/100

『言語理解Ⅹ』『家事Ⅴ』『料理Ⅴ』『裁縫Ⅱ』『農業Ⅲ』

『魔導師Ⅵ』『魔導技師Ⅴ』『契約魔法Ⅲ』『封印魔法Ⅳ』『強化魔法Ⅳ』『近接戦闘Ⅲ』


<個体名称>【七変加速(セブンスアクセル)

<主人>【ユーリ】

<貯蔵魔力>500/7000

<所有技能>23/700

『魔導義肢Ⅹ』『魔導師Ⅴ』『火属性魔法Ⅳ』『雷属性魔法Ⅳ』


 『七変加速』は魔導義肢であり、魔導人形なのである。

 そしてこの素材となっているのは私と共にマスターの20年の研究を見続けてきた魔核達。

 彼らはそれぞれに独自の意思のようなものを持ち始めていた。まるで情報共有機能でたまに会話している者達の様に。

 私は右足を魔核で作る前に彼らと契約を交わした。


『もし私の魂に死が訪れた場合、この体を明け渡す。その代わり、この魂が死ぬその時まで私に力を貸してくれ』と。


 魔核達はその契約を呑んだ。

 そうして私は『七変加速』を作り上げた。そこまでは良かったのだが……あまりに強大過ぎた。

 魔核の数は総数35個。その35個全てのキャパシティーがこの『七変加速』には含まれている。それ故に貯蔵魔力と所有可能技能数が規格外になってしまった。

 因みにこの七変加速、前述の様に魔力量によって自動車やバイクのギアの様に加速していくのだが、一段階加速させるためには貯蔵魔力を1000まで溜めなければならない。更にその上となれば2000、3000と必要となる魔力量も増加し、消費がとても大きくなるために燃費が悪い。

 今は起動するために魔力を込めただけなので500しかないが、この状態はギアがニュートラルとなっており、魔導義肢の技能を使用出来る以外には右足の耐久性が上がった程度の違いしかない。

 最後になるが、これだけは言っておきたい。

 現状第一変速を使えば私は魔力切れで動けなくなる!


「どうだ!見たか!」

「(……我は貴様の心が読めるが、それを理解した上での事か?)」

「すみませんでしたっ!」


 開幕土下座とはまさにこのことなのだろう。

 今の私ならば土下座グランプリの上位に入れるのではないかと思うほどの素晴らしい土下座を披露した。

 だって仕方ないじゃないか。魔導人形に魔力を生成する器官はないのだから。

 そうそう、魔力の関係でもう一つ言わなければならない事があった。

 『七変加速』の技能の中に『雷属性魔法』があるだろう?何だかこの一ヶ月検証してみると習得出来たのだが、これを見たマスターはとても驚いていた。

 私としては魔法で火、それに次いで雷とはとてもポピュラーな属性だと思っていたので今まで属性魔法の話の中で雷が出て来ない事に疑問を感じていた。

 そしてその疑問を解消するべく私は雷を魔法で再現しようとした。

 雷が静電気が集まって出来ているとは現代日本に住んで義務教育中に行われる理科とかの授業で習っているだろう。私もその例に漏れず雷の原理は簡単に知っていたし、今は魔法が使える。

 最初に手元に擬似的な雲を水の魔法で生成、このままでは単なる水蒸気の塊なので水の温度を下げて氷の粒にし、風の魔法で雲を維持しつつ氷同士をぶつけ始めた。

 始めた時はマスターも何をやっているのか理解していなかったが、静電気が十分に溜まりバチバチと音を鳴らし始めたところで目を見開いていた。

 正直な所ここまでしか私は考えていなかった。

 雷、自然現象である落雷とは電荷の違いによって起こると聞いたことがある。

 確か帯電している雲の電荷と地上の電荷は異なり、磁石が引かれ合うそうにして雷は落ちるはずだ。

 故にこのままにしていると雷がどこかに行ってしまう可能性があるのだ。

 空気は電気を通さないとはいうがこのままにはしておけない。

 私がこの雲をどうしようかと悩んでいるまさにその時、『雷属性魔法』を手に入れた。『七変加速』が。

 何故私自身じゃないんだと不満を口にしたかったが、後々考えると私は魔力を『七変加速』に溜め込み、そこから魔力を使用していたためこれは必然だったのだなと納得した。

 考えてみれば私自身が戦闘中魔法を使う事は『七変加速』を使っている限り皆無である。

 そう思えばもう火や雷は『七変加速』に任せるべきだと判断して今に至る。

 そして取得した『雷属性魔法』により雷の制御と面倒な生成の過程を無視しての雷生成を出来るようになった。


「(で、何故今魔力が殆どないのだ?)」

「今日はマスターとの魔法の鍛練がありまして、マスターを相手にするとなると魔導義肢の貯蔵魔力も使わないと厳しかったのでつい……」

「(ふん、まぁ良い。今はその状態でどれ程出来るのか試してやろう。さぁ来い!)」


 戦闘の開始を意味するガリュオンの咆哮が森の中に響き渡る。

 そうだ、私は決して弱くなったわけではない。

 確かに『七変加速』の本領は速度だが、それ以外にも『強化魔法』による硬化や加速、火と雷の属性魔法、更に私自身の『近接戦闘』も合わせれば十分に戦える!

 私は『強化魔法』で右足の装甲を硬化させ、更に加速を用いて瞬発力を増加させる。そして火と雷の属性魔法を同時に発動して右足に纏う。

 準備万端の状態で右足に力を込めてガリュオンに向かって跳んだ。


「(中々に速い。だが直線的で到達地点が丸分かりだ)」

「ぐっ!」


 ガリュオンは言葉通り私の攻撃する位置を完全に読み切っており、私がガリュオンの首筋に到達する前に易々と前足で薙ぎ払われた。

 咄嗟に右足の装甲で防いだが装甲が壊れると思うほどの威力があり、ミシミシと装甲が悲鳴を上げながら私は遥か後方へと飛ばされ、木々に背中から激突しながら勢いが収まった。


「ははっ、桁違いですね……ホント……でもっ!」

「(む?)」


 腕の太さ程の雷をガリュオンに向かって放ち、それを追いかける様に自分自身も駆ける。

 自身より遥かに速い雷はガリュオンへの不意打ち兼牽制として役割を果たせれば僥倖と考えての事だったがそれはあえなく潰えた。

 ガリュオンは体表に魔力を纏うだけで私の雷を防ぎ、余裕をもって私の方を見やる。

 その視線と目が合い、言葉にされなくてもガリュオンの言わんとすることが分かった。


『その程度か?』


 んな訳ないじゃん……封印解除!

 事前にかけていた『封印魔法』の封印を解く。

 その途端『七変加速』から発生していた朱色の魔力が増幅する。


「(謀ったか!)」

「これも作戦の内ですよ!」


 誰がこんな化け物と戦うのに魔力枯渇状態で挑むというのか。冗談にしても笑えない。

 私は『封印魔法』を二つの理由の下取得した。一つは最後の第七変速の封印。もう一つは貯蔵魔力を封印するためだ。

 封印することにより魔力は擬似的に消えたことになり、貯蔵魔力が無くなる。その上で貯蔵魔力をマスターに回復してもらえば私は貯蔵魔力と封印分の魔力をいつでも使えることになった。

 流石に第一変速もまともに使えない何て馬鹿な改造はしてないさ。


「第一変速、『加速(アクセル)』!」


 ギアを一段階上げることによって『七変加速』の速度は約2倍ほどになる。それを第二、第三と上げれば2倍が相乗していき、第七まで行けば私は音を置き去りに出来る!

 封印していた魔力は7000。第三までなら上げれる。これでどれだけ戦えるのか、勝負だ!


「第二変速、『加速』!」

「(ふん、想像以上だと褒めてやろう……だが!)」

「第三変速、『加速』!」

「(何故その程度で足りると慢心した?)」

「えっ!?」


 第三までギアを上げ、既に通常時の8倍、私の通常時を時速30㎞が限界と仮定しても時速240㎞となるこの状況にも関わらず、ガリュオンは我関せずとでも言う様に私の背後にいつの間にか回り込んでいた。

 急ブレーキをするため右足で地面を抉りながら停止し、背後に振り向こうとするがその前に再びガリュオンの前足の餌食となった。

 今度は先程とは違い腹部にまともに受けてしまい一瞬呼吸が止まるような感覚を感じた。


「うっ!……ごはっ!」

「(やはり片足では速度はあっても不便であるな)」

「ほっと、いて……ぐっ」


 そう、『七変加速』の最大の弱点は走れない事。あまりの早さ故にギアを三以上上げると普通の左足では足の回転に耐えられず壊れてしまう。そのため今さっき私は右足のみで踏み込んで跳んだ。そして風を魔法で纏い、飛距離を伸ばすと共に体勢を整え、再び右足で踏み込むというサイクルで駆けていた。これにより先程の急ブレーキにも無駄が多く、その隙を見事に突かれて私は今木にもたれかかる様に倒れている。

 『強化魔法』によって左足を強化するというのも視野に入れていたがこれは実験段階で無理だと判明した。

 いくら魔法で強化しようと私の左足と『七変加速』では元の性能差が違いすぎるためちょっとした水増し程度の強化ではあってないようなものだったのだ。

 しかしこのままやられるのも腑に落ちない。私はまだこいつに触れる事すら出来ていないのだから。


「仕方ない……」

「(ほう、まだ何かあるのか)」

「秘義……三十六計逃げるに如かず!!!」

「(は?)」


 第三変速状態のまま私はガリュオンを正面に睨み付けながら一気に後退する。

 私は笑いながら後ろに後退していくのに対し、ガリュオンはそんな私を見て呆気に取られている。


「ふふふ、はははははっ!どうです驚きましたか!貴方みたいな規格外に勝てるわけないでしょうバーカ!もうちょっと鍛えてから出直して来てやります!首洗ってまってやがれ、です!」


 ガリュオンを視界で捉えることが出来なくなってから体の向きを反転させて『七変加速』を解除し、二本足で普通に走っていき村が見え始めた辺りで一旦止まり、その場にあった手ごろな切り株に腰を下ろした。


「……くそっ」


 魔導人形に感情は基本的にはない。

 私も内面では感情があるが外面ではそれを表し辛い。

 今、もし私が以前の様に生身の人間であったのならきっと表情が崩れ、地面を濡らしていただろう。

 そう、私は悲しかった。正確には、悔しかったのだ。


「強すぎる……」


 別にガリュオンを舐めていたわけじゃない。

 あいつはマスターを一瞬で戦闘不能にした正真正銘の化け物だ。

 だがそれでも私自身、あれから強くなった自覚があったのだ。

 一ヶ月、その短い期間に『魔導師Ⅰ』が『魔導師Ⅵ』にまでなったのだ。これにはマスターも驚いていたほどの成長速度なのだ。マスターによれば雷の属性を使えるようになったからではないかと言われた。

 それ以外にも『封印魔法』による魔力保存や『近接戦闘』の技能が得られるほどに実戦を想定しての鍛練を行ってきた。

 そして今さっき、『七変加速』の第三変速まで使って優に後ろに回り込まれた。

 恐らくあれでも相当手加減していたのだろう。

 私の考えではガリュオンの最高速度は音速だと予想している。故に『七変加速』で表すなら第六変速で漸く届くかどうか。そんな相手に第三変速なんて舐めプもいいとこだと非難されそうだが、本番でもないのにこれ以上の加速は他の部位、私の体に負担がかかり過ぎてしまい下手をすれば全身が崩壊する可能性だってあるのだ。

 一応『封印魔法』で第七変速だけは発動出来ないようにしているが、実際は第四変速以上から負荷が桁違いに上がっていく。

 自分自身でも何て諸刃の剣を作ってしまったものだと自嘲してしまうが、今回でハッキリとした。


「私は間違っていなかった」


 そう、何も間違っていなかった。

 エンペラーウルフ、ガリュオン。奴の領域にまで追いつくためにはこれぐらい無茶をしなければいけないのだと。


「いつか絶対に越えてやる……」


 それは今ではない。そして魔獣討伐を果たした後でもない。

 気が遠くなるほど先の話。

 どこの馬の骨とも知らない魔獣の討伐なんて何も誇らしくない。あいつに比べればそんな相手を倒す事なんて児戯に等しい所業だ。そんな奴を相手にしていては小さい、小さすぎる!

 折角の転生、折角の異世界、折角出会えた絶対強者という倒し甲斐のある相手!

 いつしか、私の人形生においての最大の目標があの絶対強者を越えてみたいというものになっていた。

『七変加速』何て言うチートっぽい物が出てきましたが、安心してください。

作者はユーリをチートにする気はありません。

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