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転生先は魔導人形~地獄の借金100年ローン~  作者: 鈴兎
第二章 借金の始まり
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第八話 到着

祝!10万文字突破&累計ユニーク1000突破!!!

やりました!やりましたよ!遂に10万文字の大台に乗りました!

思い付きからちょっと話を考え、衝動的に始めたこの物語ですが、まさかここまで自分のモチベーションが続くとは思いもしませんでした。

これも全て読んでくださる皆様がいてくれるお陰。

どうか今後も温かく見守ってやってください。

「あれが交易都市アレイスか……大きい」


 馬車に揺られながら約半日、小高い丘になっている場所から大きな外壁に囲まれた街を見下ろしながら呟いた。

 交易都市というのだから交易が盛んで大きい都市だというのは予想が付いていたが、実物を見ると予想を上回る大都市であった。

 奥行きがどれだけあるのかここからでは分からない。左右も頭を振る事で漸く端が見える程で、ここまでの大きさの都市を作り出すのにどれ程の年月を費やしたのか想像も付かなかった。

 そんな大都市を見下ろしながら私はテンションを上げるが今日はもう夕暮れ、城門の前まで行けば既に日は落ちきり、こんな身元不明の野良魔導人形など簡単には入れてもらえないだろう。なのでここは一晩野宿し、そして明朝出発すれば良いだろう。

 幸い馬車があるため寝床には困らないし、食料も積んであった。

 両方私には本来不要なものだが、やはり野晒しで寝転がるのは嫌だし、食事は味を感じる事が出来るし魔力回復にも用いれる。

 ならばここは今まで野宿せずに歩いていた分、野宿を満喫するべきだろう。


 私は封印していた調理用の魔導器具をいろいろと取り出して夕飯の用意を始める。

 水が無かったがそれは魔法でちょこっと出してあげれば万事解決。何と万能なのか。

 馬車には待ち伏せ用の食料として積んでいたためか、保存性の高い干し肉などが多かったが問題はない。

 家から持ち出した調味料で味付けしながらじっくりとスープを作っていく。

 干し肉が良い感じに柔らかくほぐれてきたら即席干し肉スープの完成!


「では、いただきます」


 手を合わせてから出来立てのスープを口に含む。


「あちち……ふー、あったまるー」


 いや、生身じゃないから熱くても問題ないし、あったまっても特に意味はないんだけど。まぁこういうのは気分だよね。

 干し肉の塩気が良い塩梅だなぁ……この出汁で雑炊とか作ったら美味しいかも……。


「そう言えば米の栽培とかしてるのでしょうか……異世界人がいるならきっと米の良さを知る人が頑張って品種改良とかしていそうですが」


 だが無いのなら無いで困りはしない。

 現代っ子は米への執着心が薄いのだ。ソースは私。

 実際前世での食生活は朝がトーストにコーヒーとヨーグルト、昼はスティック系のタンパク質が多く入っている栄養補助食品、夜はバイト先の賄いだったり親の料理だったりで結構雑であり、米要素は夜だけであった。

 しかし米が無いと少し残念というのもある。何故なら――


「日本酒が恋しい……」


――私は日本酒が大好きなのである。


 二十歳となって一番喜んだのは自分で好きな酒を買って飲めるようになった事であった。

 チューハイやビールに始まり日本酒、焼酎、シャンパン、ワイン、ウイスキーなどなど近所の酒屋で一発当てた時なんかによく買いに行った。

 そんな中で私が気に入ったのはビールと日本酒。ウイスキーも良かったがこの二つには一歩及ばなかった。

 友人達はビールは苦いやら日本酒は辛いやら言っていたが私はそれが逆に良かったらしい。

 飲みに行くとなればまず最初に生中を頼み、肴をある程度味わって空きっ腹がマシになったあたりから日本酒をチビチビやる。なんて素晴らしい。


「思い出してたら飲みたくなって来ました……交易都市なんだからそれくらい……」


 微かな希望を胸に私は思い出に浸りながらゆっくりと目を閉じて朝を待った。


――――


 翌朝、私はアレイスに向かって出発した。

 早朝という事でやや涼しかったがアレイスの外壁前にまで辿り着く事には日は昇り切り、ぽかぽかと日の温かさを感じられた。


「そこの馬車、止まれ」


 まぁ当然の様に外壁の門に控えていた兵隊さんに止められた。

 見た目少女の私が一人で馬車に乗ってやって来た。これだけでも十分怪しいというのに私の胸元には無色の魔核が埋め込まれている。それだけで私が野良の魔導人形だと分かるのだから。


「貴様、野良の魔導人形だな?何用でこのアレイスに来た」

「ある方の紹介で冒険者になりに」

「冒険者だと?」

「はい、私でも冒険者になれるように便宜を図ってくれるそうで。これがその紹介状です」

「ふむ……っな!?」


 セフィーナさんから貰った紹介状を兵隊さんに手渡すと、兵隊さんはその裏面に書かれているセフィーナさんの名前を見るや否や驚愕した。

 やっぱりセフィーナさんって凄いんだなぁ。

 いろいろと片付いた後に例の情報共有機能で他の人たちにセフィーナさんについて聞いてみると、皆一様に「魔導人形の神様」だとか「大いなる母」など、何というべた褒め具合だと辟易したものだ。

 実物を実際に見てみたら絶対意見は変わるだろう。いや、技術の云々は置いといてね?

 しかし兵隊さんが我に返った瞬間いきなり私の紹介状を持って門付近に設置されている小屋の中へと入っていってしまって暇だ。多分あそこは詰所のようなものだろう。


「どうしたものか……ん?」


 あれが無くては私はこの街中で過ごすことが困難になってしまう。というか冒険者にさえなれなくなってしまう。

 そんな風にどうしようかと困っているとふと一人の少年が視界に入ってきた。そして外れた。

 何だろうと思ってその少年を次はしっかりと視界に入れるとどうやら走っているらしい。

 見た目は私の外見と変わらない10を過ぎたくらいだろう。長めの赤髪を後ろで縛りポニーテールのようにしていた。

 ふむふむ、さながら朝のランニングといった所か、精が出るな少年よ。

 前世の私も走るのは好きだった。体育などで好きなスポーツと聞かれたら長距離走と迷わず答えてるほどには。

 理由としては簡単で、私は球技があまり得意ではなかったし武道関連も苦手であったのだ。細かいルールやチームプレイ、対峙する相手がいる状況、その全てが邪魔にしか思えないという何とも捻くれた性格だったのだ。

 しかし陸上は違う。その中でも走るだけの競技。短距離は瞬発力が足りずにあまりいいタイムではなかった私だが、長距離のような持久力が求められるものでは体育会系の人と渡り合えるくらいには速かった。

 高校を卒業後に運動のためにと自主的にランニングをしつつ、何度かマラソン大会などにも出場したことがある。思えばちょっとした目標だった四時間切りは果たせずに終わってしまったなぁ。

 と、昔の事を懐かしんでいるといつの間にか少年の姿は既になかった。

 もしかしてあの少年はこの壁の周りを走っているのだろうか?そうだとしたら幼いながらにとても優秀な子供だ。

 この街の外壁の円周は分からないが、下手をすれば一周で何十キロもあるのではと思う程の長さがある。そんな長さをもし日常的に走っているのだとしたらあの子は化け物だろうか……?


「おい人形、許可が出た、入っていいぞ」


 先程の兵隊さんがいつの間にか戻ってきていたらしく、私に紹介状を返してくれた。

 思っていたより早くに許可が出たな……やっぱセフィーナさんの名前の影響力すげえ。


「あ、ありがとうございます」


 紹介状を受け取ってお礼を言うと兵隊さんは怪訝な表情で私の馬車を睨み付ける。


「因みに聞くが、その馬車はどうした?」


 ……どうしたものか。そう言えばこれの言い訳を考えていなかった。

 野良の魔導人形が何故馬車を持っているんだとそりゃ疑問に思いますよね。最悪のケースだと魔導人形が暴走して主人を殺し、後になって冷静さを取り戻した魔導人形がケロッとした顔で街にやって来た何てのも考えられるからな。

 まぁここは無難に行こう。ついでにこいつの売り場所も聞いておくか。


「前に住んでいた村の方から貰いました。もう移動する必要はないので街のどこかで売ろうと思うんですけど、どこか良いところ知りませんか?」

「……なら貸し馬車の厩舎に行くといいだろう」


 少し変な間があったが、恐らく私を未だに警戒しての事だろう。

 この外壁の門を守っているのだ。警戒し過ぎて悪い事など何もない。

 聞いたことには答えてくれている分この人は良心的とも言える。


「ありがとうございます。……後、少し聞きたいんですがここら辺を走っている赤髪の少年って誰です?」

「ん?あぁ、レイウェンの事か。毎日外壁周りを一周、朝になると走っているんだ」

「毎日……」


 ヤバい、化け物だった。

 いや、もしかしたらそれが普通なのかもしれない。この世界の人は体力が凄まじくて毎日10kmや20kmなんて平気で走れたりするんだろう。うん、そうに違いない。


「凄いだろう?だが才能が無い事を悩んでいるんだ。兄が優秀で、騎士学校を卒業後に王都警備隊の小隊を一つ任されているらしいが、そのせいで比べられ肩身の狭い思いをしているそうだ」

「お詳しいですね」

「外壁の警備してる連中なら誰でも知ってる話だ。俺らはあいつの努力がいつか報われてほしいと陰ながら応援しているのさ」

「兵隊さん、良い人ですね」


 この兵隊さん、そのレイウェンとか言う少年に関する話題になった途端饒舌になり始めた。

 しかしこの人結構良い人だ。最初の印象こそあまり良くなかったものの、今ならば私はこの人を気に入ることが出来るかもしれない。

 私が素直に褒めてやると兵隊さんは私から顔を逸らしながら私を手で払う様にしてあっち行けと言わんばかりだ。


「やめろ恥ずかしい。さぁほら、早く行け」

「はーい」


 私は馬を再び操り、馬車ごと門をゆっくりと潜っていき、交易都市アレイスに入った。

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