第四話 遺書
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セフィーナさんが去った後、私は直ぐに行動を開始した。
まず初めに村長さんの家に赴いて無事元通りになった事、暫くしたらこの村を出て行く事を伝えた。
すると村長さんはその事を聞いてまず私が直った事を喜び、そして村から出て行かずにこの村で今まで通り過ごさないかと提案してくれたが、私にはセフィーナさんへの借金があるし何よりこの世界というものを満喫してみたいと考えていた。
それを伝えると村長さんは少し寂しそうにしながらも私の好きなようにしなさいと言ってくれた。そして最後に「いつでも戻って来なさい」と言われた時、私は嬉しさのあまり村長さんを直視出来なくなりその場から慌ただしく去っていってしまった。
あの時のことはまたこの村を去る時にお礼を言うとしよう。
その後、私はメリエルさんの墓へと向かった。
この世界の墓参りの形式など私が知るはずもないので、前世で祖父母の墓参りをしていた時の事を思い出しながらそれに倣った。
メリエルさんの墓標はとても立派な石造りの物で、ここまでの物となると恐らくセフィーナさん自身が技能によって作り出したのだろうと予想が付く。
三ヶ月の間で雨風に晒されていたせいか少し汚れていたが、他の墓標と比べると随分綺麗な事からここにもセフィーナさんの無駄に高度な術式が刻まれていたりするのだろうか。こんな物にまで感心させられるとは流石と言うべきか、返って呆れるべきか。
私は少々の汚れを水をかけてから布で拭き取って綺麗にすると、墓標の前にお供え物としてディーンさんの所のパン、メリエルさんの好きだった前世でのスクリュードライバーのような味のするアルコール度数が高めのお酒、そして――
「一度くらい、お世辞でも美味しいって言ってもらいたかったです」
――出汁巻き卵を置いた。
「これ、私の大好物だったんです、前世の話ですけど。いつか作ってあげたかったんですけど、どうにもいい出汁が作れなくて……これも、まだ……満足いってなくて……それで、それで……討伐が終わったら一度、食べてみて……欲しかったのにっ」
ここ最近、涙をこんなにも流したいと思う事はなかった。
前世では泣くなんて恥ずかしい、男は泣いてはいけないだなんて事を考えていたが、こうして泣きたい時に泣けないというのはとても辛かった。
――――
メリエルさんの墓参りの日は精神的に他の事をする気になれず、そのまま家に帰って眠りについた。
正確に言えば寝た振りであるが、元々人間である私にとってベッドに横たわるという行為は肉体よりも精神の疲れを癒すのには丁度良いのだ。
翌朝、私は家の掃除を始めた。
三ヶ月分の汚れを取るためであったが、セフィーナさんが定期的に掃除をしていてくれたのか大した手間は掛からずに殆どの部屋が終わり、私は最後にメリエルさんの研究室へと足を踏み入れた。
「ここに来ると、いろいろと思い出してしまいますね」
研究室にはメリエルさんの生きた証が数多く存在している。いや、この研究室自体がメリエルさんの証と言った方が正確だろう。
乱雑に積まれた資料や道具を丁寧に片付けていく。
あの半年だけではここにある資料の極僅かしか自分の知識として吸収出来ず、それ以外は未だよく分からないものばかりだ。
恐らくこの資料一つ一つはとても価値のあるもので、これを売り払えば私の借金の足しになる事は確かであるが、そんな事を出来るわけもなく私は頭を振って考えを消し去る。
「あれ、こんな物あったっけ?」
頭を振った時に比較的新しい紙で作られたであろう封筒が資料の山に隠れるようにして置いてあった。
それを手に取り裏を見てみると、そこにはメリエルさんの筆跡で「ユーリへ」と書かれていた。
私はそれを見た途端慌てて封筒の口を破り捨て、中に入っていた一枚の手紙を穴が開きそうな程凝視しつつ内容を読んでいく。
『ユーリ、あんたがこの手紙を……まぁ別に分かってるだろうしまどろっこしいのは無しにしよう。私は死んだ、覚悟も出来てた。唯一心残りなのは私がいなくなった後のあんたの事だ。一応右足の事もあり、あんたを作ったセフィーナを呼んでおいたからきっとなんとかしてくれるだろうけどね。さて、現時点できっとあんたは自由の身だろう。もしかすれば借金をセフィーナに作っているかもしれないが安心しな。この部屋にある物を全て売り払ってしまえば国が傾くくらいの金は手に入る筈さ。これからあんたはいろんな所に行き、いろんな事を知り、いろんなものを楽しんで生きていきな。魔導人形だろうと、あんたには魂が宿っている。気の向くままに生きていけばいいさ』
メリエルさん、きっと分かってて書いたんでしょうけど、私が貴方の遺品を売れる程薄情者とでも思っているんですか?無理に決まってるでしょう。
いつも通りの調子で書かれた悲しみの含まれていない遺書を読み進めていたせいで特に感情に変化は訪れなかったが、その後の一文だけは少し変わった。
『では最期に、親愛なる我が孫娘よ、常世の生を謳歌した後、天上にて再び会える事を願い、永きの別れとさせて頂く』
これは確かこの世界での遺書などで使われる定型文の一種だったか。
これに含まれる意味は手紙を送った者の事を最期まで愛しており、その者が死者を追う事がないように、再会は遠くの未来である事を願う。そういうものだったと思う。
基本的には肉親、特に子息などに送られるこの一文が書かれている事に私は思わず手紙を持つ力を強めてしまい、手紙が少しクシャクシャになってしまった。
それを慌てて広げ、出来てしまった多くの折れ目を丁寧に伸ばしていると手紙の一番下に追伸が書かれていたのに気付いた。
私はそれを見て思わず笑みが溢れてしまった。
『追伸、あんたの料理、そこそこ美味かったよ。まだまだだけどね』
その文を書いていた時のメリエルさんを想像してみると、とても嫌味ったらしい笑顔で書いている姿が思い描かれた。




